「もう限界…」なときに試したい、燃え尽き症候群からのリカバリー戦略
やる気が出ない、気力が湧かない、職場ではニコニコしてても心の中では「しんどいなぁ」と思っている……みたいな問題はよく聞く話ですが、こうした状態が長引くと、いわゆる「バーンアウト(燃え尽き症候群)」に陥っちゃうんですよね。
とくに「感情労働」が求められる仕事(看護、教育、接客、福祉など)では、自分の本心を押し殺し、「笑顔でいること」や「優しく対応すること」が業務の一部になりますんで、他の仕事よりもバーンアウトの発生率が高いと言われてるんですよね。
ということで、新しいデータ(R)では、そんな“感情の消耗戦”に日々さらされている人たちに向けた、燃え尽きを防ぐための「内なる資源」に関する研究をしてくれて有用でした。
で、まず前提として押さえておきたいのが、「表面演技(Surface Acting)」という概念です。これは、自分が感じていない感情を演じることで、職業的な役割を果たそうとする行為のことであります。
たとえば、どんなに疲れていても、患者や生徒には怒りや悲しみを見せず、常に穏やかな対応を求められるような状態ってあるじゃないですか。こうした感情の“押し殺し”が、ジワジワと精神的リソースを削っていくわけですな。
でもって、この「感情を偽る」負担の蓄積こそが、燃え尽き症候群の主な引き金になっているのだ!──ってのが、多くの心理学者の見解なわけです。
そこで、この新たな研究では、感情労働が多い仕事に就く220名(平均38歳)を対象に、2カ月にわたって3回の調査を実施。対象者は、教師、看護師、心理士、社会福祉士、医師など、いわゆる「人と接する仕事」のプロたちだけを選んだそうな。
この研究のポイントは、「どんな内的リソースが燃え尽きを防ぐのか?」を実証的に探ったところです。研究で特に注目されたのが、以下の2つのリソースでして、
- 職務の自律性:自分のやり方で仕事を進める裁量があるか?という要素。たとえば、「この場面では自分の判断で対応できる」という余白があると、感情労働の負荷が軽減されるとされる。
- 対人距離の確保:「仕事上の人間関係に自分の心を侵食されすぎない」ための距離感のこと。相手を“顧客”として捉えることで、あくまで専門職として関わりすぎずにすみ、これが心理的な防波堤になる。
調査期間は2カ月で、どんな結果が明らかになったかと言いますと、
- 職務の自律性の高い人は、表面演技が減少し、それに伴い感情的疲労も低下していた。つまり、「仕事を自分でコントロールできる」という感覚があると、人は感情を偽らずに済みやすく、結果として疲れにくくなる。
- 対人距離の確保は、即効性こそないものの、6週間後の段階では感情的疲労を減らす効果が見られた。これは、一定の期間をかけて、“他人の感情に飲まれすぎないスキル”が蓄積されていくのだと考えられる。
ということで、どちらの対策も感情労働がもたらすバーンアウトの確率を減らしてくれたみたいっすね。研究チームは、これを心理学で言う「リソース保存理論」にもとづいて解釈しておられます。
では、「自律性」と「対人距離」を、現実の仕事でどう実践するのか? このデータを見る限り、実生活で使えるヒントは以下のようになるんじゃないでしょうか。
- 自律性を上げる方法
- 「やらされてる」ではなく「選んでやってる」と捉える → 同じ仕事でも「自分なりに工夫してやってる」と思えるだけで、心理的な主導権が生まれる。
- できる範囲で「自分流」を見つける → 手順や対応方法など、小さな選択肢に自分の判断を反映させる(服装、声かけ、タイミングなど)。
- 対人距離を取る方法
- 感情的な境界線を引く → 相手の不機嫌=自分の責任、という思い込みを手放してみる。
- 役割として関わる → 「私はいま、“支援者の役”を演じているだけ」とメタ的に捉えてみて、負担を軽くしてみる。
- 小休止の導入
- データでは「感情を偽る時間をいったんやめる」ミニブレイクの活用が意外と重要だとされている。1日の中でほんの5分でいいので、完全に仮面を外す時間を作ってみると良い。スマホも会話もナシで、無言でコーヒーを飲むだけでもOK。これが、感情エネルギーの“省エネ運転”に貢献してくれる。
ということで、今回の研究は「感情労働」といういかにも現代的なストレスに対して、具体的かつ実践的な対策を提示してくれて良い感じですね。ざっくりまとめると、
- 「やらされてる感」を減らす工夫をする
- 他人の感情に引っ張られすぎない距離感を持つ
- 仮面を外す時間を意識的につくる
ってのを心がけると、バーンアウトを防ぎやすくなりそうっすね。もちろん、100%ナチュラルで働ける職場なんて理想論にすぎず、どんな優良企業でもある程度の“演技”は避けられないもんですが、「自分を偽ってる時間」があまりに長くなると、心は確実に摩耗していきますので、そこは注意したいっすね。
とりあえず、「いかにしてリソースを守るか?」を意識してみるだけでも、疲労感を減らすことができるんじゃないかと思った次第です。どうぞよしなに。