前の夜に見た夢を「採点」するだけでも創造性はアップするかもだ
夢を採点すると創造性が上がる
夢ってのはおもしろいもんでして、「テスト前に悪夢を見ると成績が上がる」とか「明晰夢を見ると頭が良くなる」なんて話があったりするわけです。その機能はいまだ謎ですけど、とりあえず寝てるあいだに記憶の整理とかストレス処理をしてるんだろうなーって説が有力な感じ。
で、最近の論文(1)だと「夢の採点で創造性が上がるよ!」って結論になってて、これまたおもしろいのでした。
TTCTで学生の創造性をチェックした
これはコロンビア大学の実験でして、87人の学生が対象。まずは「トーランス式創造性思考テスト」(TTCT)ってのをやってもらって、全員の創造性をチェックしたんですね。
これは、抽象的な図形に適当な線をつけたして好きなイラストに描きかえる、というもの。一例としてはこんな感じです。
(credits: http://www.thedailybeast.com/newsweek/galleries/2010/07/10/creativity-test.html#slide1)
当然、もとの抽象図形から離れて突飛なイラストを仕上げた人ほど創造性が高いと判断されるわけですな。具体的な採点基準はいろいろあるんですけど、基本的には「感情表現」「ユーモア」「空想度」「現実からの遠さ」みたいなものが重視されております。
昨晩の夢を思い出して点数をつける
実験期間は27日間で、学生たちを2つのグループにわけたんだそうな。
- 毎朝「昨晩見た夢をできるだけクリアに思い出してください」というリマインダーが届く
- 毎朝「昨日の出来事をできるだけクリアに思い出してください」というリマインダーが届く
毎晩の夢に注意を払うことで、どんな違いが出るかを調べたわけっすね。ただ、この実験では別に「夢日記」をつけさせたわけじゃなくて、「自分がどれだけ細かく夢を思い出せたか」を点数で採点させたらしい。これは手軽でいいですねー。
その結果は予想どおり「夢を思い出す」グループの圧勝です。再び行ったTTCTの成績が20%ほど上がっていて、たんに前日のできごとを思い出したグループより、突飛な発想ができるようになり、アイデアを出す量も増えてたんですな。
夢を思い出すと現実的な思考との交配が起きる
なんで夢を思い出すと創造性が高まるのかというと、
夢を思い出す作業により、自分が見た夢への知覚が高まる。そのため、「通常」の精神状態と「夢」の精神状態のあいだで交配が起きるのだろう。
この交配により、私たちが持つステレオタイプなイメージがゆるみ、通常の精神状態がすぐに飛びつきがちな「当たり前の発想」から抜け出すことが可能となる。
とのこと。夢を思い出すことでシュールなイメージやアイデアが現実の意識を侵食し、結果として新しいアイデアに結びつくのではないか、と。デビッド・リンチ と似たようなことを言ってますね。
マインドフルネスは創造性を下げる?
ちなみに、この実験では「マインドフルネスな状態が創造性の低下と結びついていた」って結果も出てるのも興味深いところ。言われてみれば当然の話で、マインドフルな集中状態とクリエイティブって食い合せが悪いんですよね。
ヒラメキを生むには脳をリラックスさせる必要があるんですけど、マインドフルネスだとつねに何かに意識を向け続けなきゃなんないので、自然とアイデア脳がブロックされちゃうんですな。ただ、これはあくまでサマタ系の集中するタイプの瞑想の話なんで、ヴィパッサナー瞑想みたいなオープンモニタリング系だとまた違うのかもですな。
まぁメンデレーエフが夢のなかで元素の周期表を思いついたりとか、夢と創造性の関係を示す逸話には事欠きませんし、とりあえず「前夜の夢を思い出してみる」ぐらいは習慣にしといて損はなさそうっすね。