ディーキン大学流「メンタルの改善にガッツリ効く8つのライフスタイル改善と、実践のポイント」#2食事、ストレス、睡眠、孤独
「メンタルの改善にガッツリ効く8つのライフスタイル改善」の続きでーす。
このシリーズでは、ディーキン大学の先生方が行ったレビューをもとに、「うつの改善に本当に効くライフスタイルの改善法とは?」ってのをまとめております。数千件のデータをレビューして得られた結論なので、メンタル改善法としては、かなり信頼できるものがそろってるんじゃないでしょうか。
まぁ全体的に見ると、運動や食事といったド定番の介入でも、まだまだ証拠の量は少ないって感じでして、あらためてメンタル改善の難しさを知るところでもありますが。
ライフスタイル改善4. 食事の改善(低い)
意外なことに、世の中のイメージほど、食事の改善で臨床的なうつ病をやわらげるというエビデンスは、そこまで質が高くない。おそらく食事そのものがうつ病をやわらげるというよりは、禁煙と同じように、栄養の改善が身体の健康レベルを改善し、それが間接的にメンタルヘルスを改善するのかもしれない(例えば、自己効力感を高める、運動を可能にする、など)。もちろん、食生活の改善は炎症やストレスの軽減効果もあるので、それがうつ病を緩和してくれる可能性も大きい。
研究チームは、食事について、以下のポイントを守るようにおすすめしております。
- 地中海食のような、栄養が豊富で加工を最小限に抑えた食事パターンを守り、果物、野菜、豆類、全粒穀物、ナッツ類、種子類、ハーブ、スパイスの摂取を可能な限り増やす。
- 可能であれば、マインドフル・イーティングを取り入れる。
- 事前に食事の計画を立て、まとめて調理して冷凍保存し、冷凍野菜、缶詰や乾燥豆類、魚の缶詰を購入すると、安価で栄養価が高い食事になる。
- オメガ3系脂肪酸と食物繊維が多い食品を積極的に摂る。
- 超加工食品を、最小限の加工しかしていない栄養価が高い食品に置き換える。
- 牛と豚の肉は少なめにし、加工肉や脂肪の多くない肉を選ぶ。
- エクストラバージンオリーブオイルを調理や添加油の主な供給源とする。
- 1日の推奨水分摂取量を守る
- 過度のアルコール摂取を避ける。
ライフスタイル改善5. マインドフルネスによるストレス管理(限定的)
マインドフルネスをベースにした認知行動療法(MB-CBT)や、マインドフルネスをベースにしたストレス軽減法(MBSR)などのアプローチも、抑うつの症状には役立つ。同じように、呼吸法や漸進的筋弛緩法といったリラクセーション法も、抑うつ症状を軽減する可能性がある。
簡単なテクニックとしては、ボックスブリージング(4秒間息を吸い、4秒間止め、4秒間かけて息を吐き、4秒間止める)、漸進的筋弛緩法、基本的なマインドフルネスエクササイズなどを行うのがよい。
また、自分がどれだけストレスに強くなったかをチェックするために、定期的に以下の6問に答えて、点数の変動を調べておきたい(以下の質問に「完全に当てはまる」なら5点〜「まったく当てはまらない」なら1点をつける)。
- 私はつらいことがあっても、すぐに立ち直れない傾向がある。
- 私はストレスの多いストレスの多い出来事を乗り切るのが苦手だ。
- ストレスの多い出来事から立ち直るのに時間がかかる。
- 嫌なことが起きると、なかなか立ち直れない。
- 私はいつも困難な時期をを乗り越えるのに失敗してきた。
- 私は人生の挫折を乗り越えるのに時間がかかる傾向がある。
ライフスタイル改善6. 睡眠の改善(限定的)
睡眠の改善とうつ病の軽減には、わりと強い関連がある。不眠はうつ病の中核症状だし、睡眠不足はベースラインの気分やイライラを悪化させる。睡眠を改善する際は、アーカンソー大学などが開発した「睡眠衛生インデックス」が優秀なので、こちらを自分の睡眠を改善する際の「やってはいけないことチェックリスト」として使ってみるといいかも。
- 昼間に2時間以上昼寝をする。
- 寝る時間が日によって違う。
- 日によってベッドから起きる時間が異なる。
- 最低7時間の睡眠が取れない。
- 眠気がないのにベッドに入る。
- 寝る1時間以内に息が切れるほどの運動をしている。
- 週に2、3回、必要以上に長くベッドにいる。
- 就寝前の4時間以内にアルコール、タバコ、カフェインを摂取する。
- 寝る前に覚醒度が高い行動をする(例:テレビゲーム、インターネット、掃除)。
- ストレス、怒り、動揺、緊張を感じて寝る。
- 就寝前のスクリーンタイムや明るい照明、人工的な照明を減らす。
- 睡眠とセックス以外のことにベッドを使う(例:テレビを見る、読書、食事、掃除など)。
- 寝心地の悪いベッドで寝ている(毛布が多すぎる、または足りない)。
- 寝心地の悪い寝室で寝ている(例:明るすぎる、息苦しい、暑すぎる、寒すぎる、うるさい。)
- 就寝前に重要な仕事をする(例:支払い、予定、勉強)。
- ベッドの中で考え事をしたり、計画を立てたり、心配事をしたりする。
- 就寝前にリラックスできる活動を取り入れていない(例:マインドフルネス瞑想など)。
- 寝る場所はリラックスでき、暗く、快適な温度にしていない。
ライフスタイル改善7. 孤独の改善(低)
メンタルが低下すると自尊心が低下しやすく、そのせいで孤独感をこじらせやすい。いまのところ、孤独の解消がどこまでメンタルを改善するかはしっかり検証されていない。
しかし、孤独がメンタルに悪いことは、ある程度まで実証されているので、社会的つながりを増やすのは有効だと思われる。その際は、UCLAのチームが開発した「孤独感スケール」を使い、自分の孤独度を採点してみるとよい。以下の文章を読み、「まったくそのように感じない」なら1点で、「いつもそのように感じる」なら4点をつける。
1. 一人で多くのことをするのは不幸だ。
2. 話し相手がいない。
3. 一人でいることに耐えられない。
4. 交友関係がない。
5. 誰も私を理解してくれないような気がする。
6. 電話や手紙を待っている自分がいる。
7. 頼れる人がいない。
8. 私はもう誰とも親しくない。
9. 自分の興味や考えが、周りの人たちと共有されていない。
10. 取り残されていると感じる。
11. 完全に孤独だと感じる。
12. 周りの人と連絡を取ったり、コミュニケーションを取ることができない。
13. 私の社会的関係は表面的である。
14. 付き合いに飢えている。
15. 誰も私のことをよく知らない。
16. 他人から孤立していると感じる。
17. 引っ込み思案で不幸だ。
18. 友達を作るのが難しい。
19. 他人から閉め出され、排除されていると感じる。
20. 人は私の周りにいるが、一緒にいない。
ライフスタイル改善8. 緑地への介入(低)
自然療法、ガーデニング、都市の緑地で過ごすなど、日々の暮らしに「自然」を取り入れる手法は、実質的な因果関係を示した証拠が少ない。大半の研究は「自然」の種類が重要かどうかを詳しく調べていないし、自然のなかでは自然と身体活動の量が増えるため、緑地そのものの効果を切り分けるのも難しい。
ただし、現時点での証拠は、少量の緑地でもメンタルが改善する可能性を示しており、試しておいて損はない。その際は、以下のポイントが推奨される。
- 自分が楽しいと感じ、リラックスできるような形で緑地に触れるように意識する。
- ウォーキング・グループ、ガーデン・ツアー、野外でのマインドフルネスやエクササイズ・プログラムなど、実践法がきっちり決まったプログラムがある場合はそれを利用する。
- 友人や家族との交流など、他者との触れ合いを、自然との触れ合いに組み込む。
ってことで、いろいろ書いてきましたが、効果的にライフスタイルを変えるには、自分の環境をふまえて「いまの自分には何が最も効果的か?」を考え続けるしかない感じですかねー。研究チームいわく、
現時点では、運動、仕事の環境改善、マインドフルネスによるストレス管理、睡眠の改善という4つが、入手可能なエビデンスが最も優れている。しかし、現状の証拠を考えると、オープンで実験的なアプローチが最良の結果をもたらす可能性が高い。
ってことなんで、今回のレビューをガイドラインに使いつつ、いろいろとお試しください。