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瞑想をスタートするために必要なすべての知識をまとめてみたぞ

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瞑想を始めてからだいぶ過ぎまして、近ごろは毎日のように自分の脳波を計って楽しんでいたところ、「瞑想ってどうやるんですか?」みたいな質問を受けることが増えてきましたので、わたしなりのガイドラインをまとめておきます。




そもそもなんで瞑想をするのか
瞑想の利点については、「あらためて『マインドフルネス』の科学的なメリットをならべてみる」にならべましたが、代表的なところとしては、


  • とにかくストレスが減る:瞑想中はリラックスをもたらす副交感神経が起動しやすくなるんで(1)、日常で嫌なことがあっても復帰が早まる感じ。「リラックスならマッサージとかでいいよ!」みたいな意見もありましょうが、自律神経が整いまくった状態のリラクゼーション反応には、よりズシーンとした重みと気持ちよさがありまして、この感覚を味わうためだけに瞑想にトライするのもアリでしょう。
  • 脳の機能があがる…かも:瞑想で脳の血流がよくなったり灰白質が増えるのは間違いないところ(2)。実際、瞑想で学生の成績が11%あがったなんてデータ(3)もあったりします。ただし、このあたりはまだ研究が初歩の段階なんで、今後の調査に期待ってことで。
  • 睡眠の質があがる:昔から瞑想歴が長い人は睡眠時間が少なくなるって話はあったんですが、近年のデータ(4)でも、それが事実っぽいことがわかってきております。確かに、わたしもここ数年は意識せずに早寝早起きになり、平均睡眠時間が6時間ぐらいになって驚いております。たんに老けたせいかもしれませんけどね!
  • ネガティブな思考に強くなる:脳の灰白質は感情のコントロール機能にも関係してるんで、ネガティブな思考や感情に強くなります。ただし、決して怒りやイライラが消えるってわけじゃないのがポイント。あくまで、負の感情に巻き込まれにくくなるって話であります。怒りの解消を目指して瞑想をしてもまず期待はずれに終わるはず。というか、かのダライ・ラマ14世ですら「いまだにイライラはするよ」と言ってますしね。
  • 苦からの完全解放:って、いきなり仏教の話になっちゃってすみません。でも、もともとの瞑想は、世の無常を見つめて人生の苦から抜けすための手段としてデザインされてまして、上にならべたメリットはあくまでオプションであります。もちろん「瞑想で集中力があがった!ワーイ!」ってのもアリなんですが、そもそもの目的を少し意識しとくとよさげ。まぁ、かくいうわたしが無常の感覚をまったく実感できてないんですけど。

といったところ。このなかでは、もっとも「リラクゼーション反応」が体感しやすいはずなんで、金がかからないストレス対策として使うのがわかりやすいのかも。あと言わずもがなですけど、瞑想で願いが何でもかなったり、超能力が身についたりとかは絶対にありませんので、そこだけはご注意ください。


瞑想が続かない人の黄金パターン
瞑想にはいろんな種類があるんですけど、ここでは呼吸に集中する瞑想だけをあつかいます。なんだかんだで最古の歴史をほこるテクニックですし、自分の経験からいっても呼吸を使うのがもっとも長続きしやすかったもんで。


で、瞑想の基礎は超シンプルでして、


  1. 呼吸に意識を向ける
  2. 呼吸から意識がそれたらもどす
  3. 時間までくり返す

だけ。あまりに単純なんで、瞑想中はつねに「本当にこんなんでいいのか?正しくできてるのか?」って疑問に悩むことになるはず。


その結果として、


  1. いろんな瞑想法に手を出す
  2. でも疑問が消えない
  3. わけがわからなくなる
  4. 瞑想を止めちゃう

ってのが、瞑想が続かない人の黄金パターンかと思います。


ただ、呼吸に意識をもどすたびに脳の筋肉は確実に発達してまして、いずれ必ずブレイクスルーの日がやってくるはず。それまでの対策としては、疑問そのものを瞑想の対象にしてみるのがいいかもしれません。具体的には、


  1. 「これでいいのか?」って疑問がわく
  2. 「疑問がわいた」って事実に意識を向ける
  3. やがて疑問がフェイドアウトしていく
  4. 呼吸に意識をもどす

って感じ。それでも疑問が去らないときは、さらに「それでも疑問が去らない」って事実に意識を向けるとよいかと思います。ちょっと禅問答みたいになってきましたけども、とにかくすべての問題をいったんカッコに入れたうえで、呼吸に戻っていくのがポイント。わたしも当初は同じ問題に悩んだもんですが、いまとなっては「結局はシンプルな方法が正しかったんだなー」と感じております。


瞑想に必要なもの
何もなくても瞑想はできますが、とりあえず以下の2つがあると便利。


  • 何か座れるもの:わたしは瞑想用の座布団(座布)を使ってますが、別に普通の座布団を折りたたんで使っても、マクラを代用してもOK。というか、地べたに座るのが嫌なら普通のイスでも問題なし。とにかく自分が慣れたスタイルでリラックスして座れるのが大事なんで。足にケガがあったり、背中の痛みがヒドい方なども、イスを使うのが無難でしょう。
    ただし、慣れてきたらやっぱり座布があったほうが便利。もともと瞑想中の眠気をふせぐために使われてきたアイテムなので、とくに注意力が低下しがちな夜半の瞑想には向いております。

  • タイマー:時間さえ測れれればいいのでキッチンタイマーでもOKですが、いまはスマホのアプリを使ったほうが便利。無料アプリで有名なのは「瞑想タイマー: サティ」とか「Insight Timer」とか。有料でもよければ「Meditate」とか「Samsara」あたりがいい感じ。


 瞑想の座り方
 座り方にも「これが絶対!」ってのはないので、以下に基本的な注意点だけ。


  • とにかく背筋は伸ばす:座布にすわる場合は、おヘソを前に突き出すぐらいのイメージで、背中を伸ばすのが大事。とにかく背筋が伸びてないと気が散りやすいし、どんどん眠くなっちゃうので。とくにリラクゼーション反応が深まると、体がグネグネして姿勢がゆがみがちなんで、そのつど修正していく。 
  • 目は閉じても閉じなくてもいい序盤における瞑想の目的は「集中力の筋肉を鍛える」ことなんで、そこから外れなければ目は閉じても閉じなくてもOK。目を閉じたほうが呼吸に意識を向けやすいなら閉じればいいし、逆に目を閉じると眠気に襲われちゃう方は、うっすらと目をあけたほうがいいでしょう。わたしは閉じる派です。
  • 手の位置もどこでもいい:禅の瞑想だとおヘソの前で手を組んだりしますけども、これまた自分がリラックスしやすいポーズを取るのが大事。わたしの場合は、手のひらを上に向けた状態でヒザに置いております。
  • 足は好きなように組む:瞑想といえば、両足首を太ももの上に乗せる「結跏趺坐」が有名で、この姿勢をとると確かに集中力は安定しやすくなります。が、かなり体がやわらかくないと苦しいんで、足が曲がらなければあぐらでも十分です。というか、結跏趺坐にこだわって集中が乱れちゃうと本末転倒なんで。
  • 視線は前方2メートルの床に落とす:目を閉じた状態も開いた状態でも、視線は前方2メートルの床に落とすぐらいがもっとも安定しやすいです。


 具体的な瞑想の方法
自分にとって最適な座り方を見つけたら、あとは実践あるのみ。具体的な瞑想のステップは以下のようになります。


  1. リラックスして座る:できるだけ静かな部屋を選び、照明はやや暗めに。タイマーアプリを起動したら、背筋を伸ばして着席。
  2. タイマーをスタートさせる
  3. 深呼吸を3回:まずは鼻で深呼吸を3回して、もっとも呼吸の感覚が目立つエリアを探します。たいていの場合、息を吸うときは鼻の穴の中ほどぐらいが、息を吐くときは鼻孔の縁あたりが、もっとも空気の動きを感じやすいのではないかと。そこが、瞑想で意識を集中させるポイントになります。
  4. 呼吸に意識を向ける:上で探したエリアに意識を向け続けます。といっても「集中するぞ!」と力むのではなく、ぼーっと呼吸を見つめるようなイメージ。ここが瞑想の最重要パートであり、最高に難しいところであります。
  5. 頭では考えない:呼吸に意識を向けるときは、頭で「息を吸ったぞ!」とか「吐いたぞ!」とか言葉にせず、ひたすら息の出入りを見つめるのが大事。普段から考え事に慣れちゃってると、この感覚をつかむまでが大変なんですけども、ぜひめげずに頑張りたいところ。
  6. 気がそれたらゆっくり戻す:瞑想中に仕事のことを考えたり、過去の記憶がわきあがったりしたら、そのたびにゆっくり呼吸に意識をもどしましょう。ここで大事のは、「また気がそれた!ダメだ!」とか思わないこと。わたしも500時間は瞑想してますが、いまだに集中力はそれまくってます。意識は絶対にさまようものなんで、集中力の100本ノックだと思って、気にせずに呼吸に注意をもどしましょう。
  7. 気がそれたらゆっくり戻す:って、くり返しになりますけど、大事なことなので2回書いてみました。何かを考えたらゆっくり呼吸に意識をもどし、怒りや悲しい感情がわいたらゆっくり呼吸に意識をもどし、「瞑想って退屈だなー」と思ってもやっぱりゆっくりと呼吸に意識をもどします。あとはタイマーが鳴るまで、この作業のくり返し。


瞑想のTIPS
かように瞑想はシンプルなトレーニング法ですが、いくつかのコツも存在しております。


  • まずは1日5分から:ハーバード大の実験とかだと、1日27分の瞑想を2週間ほどつづけただけでも良い効果は出てくるみたい。ただし、週1で1時間の瞑想をするよりは、1日5分の瞑想を毎日やったほうがいいのは間違いないので、まずは1日5分から始めてみればいいかと。ちなみに、5分の瞑想でも十分なリラクゼーション効果が得られることがわかってるんですが、10〜15分を過ぎたあたりから「アクティベーション反応」ってのが起きて、逆にエネルギーがわいてくることも知られております。なので、最初は5分から始めたとしても、いずれは15分以上の瞑想も試してほしいところ。
  • 吐く息に注意する:一般に、息を吸うときよりも吐くときのほうが気が散りやすいです。吐く息のほうが鼻孔の感覚が薄いので、どうしても意識が向けにくいんですね。
  • 集中の持続よりも「注意がそれた事実」に気づくほうが大事:そりゃあ何も考えずに集中が続くのが一番ですけども、ヒトである以上はほぼ不可能な話なんで、「どれだけ呼吸に意識をもどせたか?」を重要視したほうが生産的。
  • どうしても集中力が続かないときは呼吸を数える:どうしても心がさまよってどうにもならないときは、呼吸を数えてみるといいかも。息を吸いながらゆっくり「イ〜チ」と数え、息を吐きながら「ニィ〜」と数えればOK。10まで進んだら、また1にもどって数え直します。ただし、これはあくまで瞑想の補助輪なので、意識が落ち着いてきたらやめたほうがいいでしょうね。
  • さらに集中力が続かないときは呼吸を言葉にする:それでも心が落ち着かないなら、呼吸を頭のなかで言葉にするのも効きます。息を吸いながらゆっくり「吸っている、吸っている」と頭のなかでくり返し、息を吐きながら「吐いている、吐いている」とくり返すイメージ。もちろん、これも瞑想の補助輪でしかないので、慣れたら何も考えずに呼吸に意識を向けましょう。
  • あくまでゲーム感覚で行う:瞑想が続かない人の大半は、ギチギチに頑張りすぎて燃え尽きちゃうケースが多め。気を張りすぎると集中力が下がって逆効果なんで、あくまで「呼吸に意識をもどすゲーム」ぐらいの感覚で挑むのがオススメであります。まぁ「そんな退屈なゲームやりたくないよ!」って意見もありましょうが、その場合は「退屈を瞑想の対象にするゲーム」と捉えてみるのもアリかも。
    とにかく、やがて「自分の中にわく雑念を他人事のように見てるのがなんか楽しい」って感覚が必ず出てきますんで、そうなったらしめたもんだと思います。


 まとめ
そんなわけで、はなはだ簡単ではありますが、わたしの経験をもとにした瞑想スタートのガイドラインでした。瞑想は実にシンプルなトレーニング法でして、それだけに小難しく考えがちになっちゃうのが一番の問題かなーと思っております。なんぞ他にご質問などあれば、「お問い合わせ」のページからお寄せいただけると幸いです。


 credit: AlicePopkorn via FindCC
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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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