瞑想は人生を10%だけ幸せにする | ダン・ハリス「10% Happier」
「10% Happier」って本を読みました。
著者はABCニュースの有名キャスターだったんですが、ある日、番組の途中でパニック障害を発症。その瞬間が、世界中に放送されてしまったんですね。以下が実際の映像でして、50秒あたりから急に言葉に詰まるハリスさんの姿が記録されております。
本書は、そんなハリスさんが、瞑想でパニック障害を克服するまでをつづったものでして、そのプロセスが非常におもしろい。
問題を解決すべく、まず彼が調べたのがスピリチュアル界の大御所たち。エックハルト・トールやディーパック・チョプラなど、日本でも有名なグルたちに直接インタビューしたうえで、「ダメだこりゃ!」とバッサリ切り捨てていくんですな。
ハリスさんいわく、エックハルト・トールは「抽象的で現実性がないことをダラダラ言う人」で、ディーパック・チョプラはただの俗物とのこと。「いまを生きれば悩みは消える!」と主張するチョプラ博士が、カメラマンに「もっと痩せて見える角度で撮ってよ!」とイライラしたり、新刊のプロモーションで「僕のツイッターをフォローしてね」とお願いしまくる姿には、思わず笑ってしまいました。
他にも、「引き寄せの法則」の第一人者として有名なジェームズ・アーサー・レイが、セミナー中に受講生を死亡させて逮捕されていたなんてショッキングな話もありまして、わたしのスピリチュアル嫌いは加速するばかりです。
一方で、彼らにくらべて感心させられたのがダライ・ラマのインタビューでした。「仏教は慈愛が大事とか言うけど、それって偽善じゃない?」との質問には「いや、結局は自分が幸せになるためにやるんだから、利己的な行為なんだよ」と返し、「悩みは消えたんですか?」と問えば「いやー、いまだにイライラするよ」と人間的な回答。さらに「科学が仏教の教えを否定したらどうするの?」と尋ねれば、「考えを変えますよ」とアッサリ答えたのにはビックリしました。地に足が着いてますねぇ。
で、そんなプロセスを経て、最終的にハリスさんがたどりつく解決策が瞑想なんですね。当初は「あんなのヒッピーのお遊びでしょ?」と疑ってたハリスさんですが、「ブッダのサイコセラピー」のマーク・エプスタイン教授から瞑想の科学的根拠をレクチャーされて考えをあらためるあたりは、数年前の自分を見る思いです(笑)。
かくして数年の瞑想トレーニングを経て、無事にパニック障害を克服したハリスさん。その結果、「瞑想前よりも10%だけ幸せになった」そうで、実に控えめな意見に好感が持てます。わたしも実感するところですが、別に瞑想をしてもイライラが消えるわけじゃなく、ネガティブな感情とちょっとだけ距離が取れるようになるのと、どうあがいても悩みは消えないことを痛感できるのが大きいんですよね。
そんなわけで、あらためてスピリチュアル界のダメさと、瞑想のプラクティカルさを実感する楽しい一冊。具体的な瞑想法の記述も参考になるので、実践家にもオススメです。