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象を飼い慣らすための指針


ここ数年、脳に関する本で使われまくっているのが「象と象使い」の例え。わたしが読んだなかでは「しあわせ仮説」「スイッチ!」「Foodist」(どれも良書)などに、この例えがキーポイントに使われておりました。

 



 


これは人間の脳の働きを象に例えたもので、図解するとこんな感じ。


象は原始的な脳の例えで、単純だけどパワーは最強。一方で、象使いは脳の新しい部分を表していて、知的だけど象をコントロールする力はなし。現在の神経科学によれば、このイメージが人間の脳の仕組みにピッタリとフィットするらしい。


元ネタは「法句経」でして、

 

この心は、以前には、望むがままに、欲するがままに、快きがままに、さすらっていた。今やわたくしはその心をすっかり抑制しよう、――象使いが鉤をもって、発情期に狂う象を全くおさえつけるように。


っていうブッダの言葉がベースになっております。続いて「しあわせ仮説」から引用しますと、

 

人間は、象の背中に乗る象使いだ。手綱を引くことで、象に指示を出すことはできる。しかし、それはあくまで象が素直に従ってくれたときだけ。象が他の欲望を持っていたら、象使いになすすべはない。


とのこと。無意識が穏やかじゃないと、ヒトの意識はどうにもできないんだ、と。お腹が空くと良い判断ができなくなるのも、象が暴れて手に負えなくなってるからなんだ、と。どれだけ考えぬいたタスク管理や時間管理テクニックでも失敗することがあるのは、結局、それが象使いのためのツールでしかないからなんでしょうな。


そんなわけで、ヒトは基本的に象に勝てないんですが、「しあわせ仮説」や「スイッチ!」を読むと、それでも以下の3つのポイントを心がければ、ある程度は象を飼い慣らせるようになるらしい。

 

  • 象を刺激しない:最初から象が暴れそうな場所に近づかないように気をつける。「ダイエットしたければ、冷蔵庫に炭水化物を入れておかない」「無駄使いをしたくないなら、ショッピングサイトをブロックしておく」などなど、とにかく象が暴れない環境を心がける。「君子危うきに近寄らず」ですね。

 

  •  象使いをトレーニングする:象使いが疲れると、一気に象が暴れ出そうとするので、できるだけストレスや睡眠不足を避ける。また、瞑想を行うと意思力が高まるので、少しでも象使いのパワーを高めることができる。

 

  •  象を調教する:象は習慣に従って行動するので、悪い習慣を意識して変えれば、自然と象のパワーを良い方向へ使えるようになる。もちろん、そのためには象使いが根気よく指示を出し続ける必要があるわけですが。


こうして見ると、「象を刺激しない」は仏教でいう「戒律」そのものだし、「象使いをトレーニングする」には「瞑想」が役立つし、「象を調教する」も仏教の「慈悲」の概念に近い感じ。あらためて、ブッダさんが編み出したテクニックは、いまの神経科学から見ても当を得たものなんだなぁ、とか思いました。


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