なぜ自信が無いほうが人生は上手くいくのか?
「自信(Confidence)」って本を読みました。
タイトルを見ると「また自信があれば人生は上手くいくみたいな本か…」とか思っちゃいますが、内容はまったくの真逆。著者はロンドン大学の世界的な心理学者で、科学的データをもとに「自信なんて必要ない!」と言い放つ一冊であります。日ごろから「自己肯定感が人生のカギ」みたいな物言いに疑問を持っていたわたしには、実にうってつけでした。
本書の根本的な主張をざっくり引用しますと、
誰でも冷たいコカ・コーラを飲みたくなったことがあるだろう。しかし、コーラは、生物学的には飲む必要がない飲み物だ。同じように、世界の大多数の人たちは、実際は必要がないにも関わらず自信を欲しがっている。
「自信を持とう!」と言われると短期的に気分がよくなり、コーラに似た中毒性を生み出すんだ、と。成功者たちに自信家が多い理由についても、
並外れた成功者たちが自信を持っているのは、彼らが並外れて有能だったからだ。重要なことは、高い自信を持つことではない。高い能力を持つことだ
いやー、笑っちゃうぐらい正論ですねぇ。
もちろん論拠もしっかりしてまして、例えば、自己肯定感と能力の関係を調べた研究によれば、能力と自信の相関は0.30で、ほとんど無関係と言っていいレベルだったとか。(1)
また、「自分の顔に自信がある」と答えた男性たちを調べたところ、実際に彼らが周囲からイケメンだと思われている確率はたった5割だっらしい。(2) この傾向は、知能や性格でも同じ結果が出るそうで、つまり自分に自信がある人の大半は、たんに都合よく現実をねじ曲げているだけだってことですね。
もう一つおもしろいのが1995年の研究で、18才の学生に「自分に自信があるかどうか」を尋ね、その5年後に追跡調査をしたんですね。(3) すると、「自信がある」と答えた学生たちは、おしなべてウソつきで、信頼がおけず、ずるい人間だと思われている確率が高かったというんですな。著者いわく、
一般的な考え方とは異なり、高い自信は低い自信よりも悪影響が大きい。肥大した自己像にダマされているだけでなく、コミュニケーションの場面でも不利なのだ。
とのこと。これに対し、逆に低い自信にはメリットがあるそうで、
低い自信は、自分の限界や能力不足を示すシグナルの働きをする。そのおかげで、自信が低い人は、感情的には好ましくないだろうが、現実の正しい見方を保つことができるのだ。
ヘタに自信を持って現実が見えなくなるよりも、低い自信を改善のエネルギーに使うほうが大事なんだ、と。これはよくわかるなぁ。実際、いくつかの研究では、自信が低い人ほど他人の批判を受け入れる傾向があり、自信が高い人よりも能力のつくスピードが速いことが示されているそうな。
で、以上の話を4つにまとめたのが以下の「自信-能力グリッド」です。このあと本書は、この図を使った能力アップの方法の解説に進むんですが、長くなったので次回に続きます。ひとまず本日の結論としては、「最終的には自信が低いほうが有利なんだから、ムダにヘコまなくてもOK」ってことで。
追記:「自信-能力グリッド」の解説を以下に書いてみました。
「自分の自信と能力のバランスを把握するための『自信-能力グリッド』」