ブッダの教えとは「異性と目も合わせないニートになれ!」だった | 仏教思想のゼロポイント
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「仏教思想のゼロポイント」って本を読んだら、めちゃめちゃ面白くてまいりました。「ブッダさんが言う『悟り』ってなに?」ってテーマに直球で取り組んだ一冊で、目からウロコといっしょに眼球まで落ちていきそうな勢い。
個人的に本書で勉強になったのは、
- そもそもブッダさんの教えはアナーキーである:仏教というと「心が穏やかな人格に」とか「健やかな精神を」みたいなことを言いがちだけど、ブッダさんはそんなところ目指してない。ハッキリと「欲望を絶つために労働も性行為もするな!」と言い切っていて、社会性はほどんどゼロ。著者いわく、ブッダさんは「異性と目も合わせないニートになれと求めた」そうで、つまりは人間の自然な流れに逆らって「解脱」を目指すのが仏教。うーん、アナーキーですねぇ。
- 一般人に対する教えと出家者に対するガチの教えは違う:しかし、ガチで全員に解脱を進めると生活ができないので、一般人には「善いことをしましょうね」と普通の話を説いた。このあたりは、以前から「ブッダさんは『無我』とかいうわりには、『奥さんに送りものをしろ』とか『貯金は収入の3分の1で』みたいなことも言っててワケわからんな」と思ってたので、激しく納得がいったところでした。もともと一般人と出家者で教えの内容をわけてたんすね。
- 「無我」といっても「自己」を否定したわけではない:仏教でありがちな疑問に「無我とかいうけど、じゃあ悟る自分は誰なの?」ってのがありますが、経典にはちゃんと「自らをよりどころにしろ」って書いてあるし、ブッダさんも自分すら存在しないと言いたいわけじゃない。ブッダさんが否定したのはあくまで「変化しない絶対的な自己」で、そこに執着心を持つことを問題にしたんだ、と。
- ブッダさんの目標はとてもシンプル:ブッダさんが目指す「解脱」は、人間の自然な欲望から抜け出すこと。当然ながら人間には、美味いものを食いまくったり、ネットのポルノにはまったり、ビジネスで当てたくなったりと、ついつい欲望を追い続けてしまうシステムが備わってるわけですが、その流れをただ観察して「結局はすべて無常だな〜」と思い知り、結果として欲望の対象から完全に離れられればゲームクリア。
- 教えがシンプルだからといって「解脱」が簡単なわけではない:「欲望を離れろ!」と言うのは簡単でありますが、これは人類が数百万年をかけて進化させてきた生存のためのシステム。そのルールは遺伝子にガッチリと書き込まれているので、いくら「目の前の美女は肉の固まりだ!」と自分に言い聞かせたところでムダ。普通に考えたら無理ゲーもいいところですが、そこで「本能をハックする方法はある!」と言い切り、実際にそのロードマップを示してみせたのが仏教のおもしろさ。うーん、ブッダ▲。
- なにせ欲望を離れないと「苦」が続くばかり:そこまでブッダさんが解脱にこだわったのは、人生が「苦」だから。仏教でいう「苦」は、正確には「不満」ぐらいの意味に近くて、もっと日常的なもの。美味いものを食えばもっと食いたくなり、よい車を買えば傷や汚れにおびえ、東大に入ったかと思えば周囲の天才に嫉妬が生まれたりと、刺激の奴隷になってるうちは本当の満足は得られないんだ、と。
- 人生には意味も無意味もない:「人生は苦だ!」というと、つい「仏教って暗い!」や「ニヒリズムだ!」といった印象がわきますけども、そもそもブッダさんの視線は「意味」や「無意味」といった物語から抜け出すところにあるので、そんなことを言ってもそれこそ意味がない。
- 本能ハックの手段としての「瞑想」:ヒトの本能をハックするには、「見方を変える」とか「発想を変える」レベルではなく、脳の配線レベルで世界に対する認知を変えなきゃならない。それはあくまで個人の経験なので文字にはできないが、実際に世界中の瞑想家たちが「可能だ」と報告していることは事実。具体的には、まずは瞑想で極度の集中力をきたえ、その集中力を使って、すべての現象をひたすら観察していく。あとは実践あるのみ。
といったところ。本書では、このあとに「悟りを開いた人が、どのような心持ちで生きているのか」といった話まで書いてあって、これまた読みごたえ十分でありました。にしても、こうして見ると、ブッダさんこそが真の意味でのライフハッカーっすね(笑)
いろいろ書いてきましたが、とにかく「人格を高めることが悟りではない!」とハッキリと言い切り、本来は言葉にはできない「解脱」の内容をここまで噛みくだいてくれた本は他になかったように思います。いやー、この説明力はうらやましい。「仏教ってなに?」といった方はもちろん、昨今のマインドフルネスブームに物足りない方や、人生指南みたいな仏教書に納得できないような方にも激しくオススメ。