石器時代の脳と現代のスクリーン:現代人の脳疲労を減らすための科学的アプローチはこれだ!って本を読んだ話
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『デジタル時代における石器時代の脳(Your Stone–Age Brain in the Screen Age)』って本を読みました。著者のリチャード・サイトウィック博士は神経内科医で、共感覚研究の先駆者として有名な先生ですね。日本では「脳のなかの万華鏡---「共感覚」のめくるめく世界」って本が翻訳されてますな。
タイトルの通り、本書は「現代の環境で私たちの脳がどれだけヤバいことになっているか?」に焦点を当てたもので、現代は便利なデジタルデバイスに囲まれて、常に他者と繋がっている状態が当たり前になっているのに、多くの人が「疲労」や「集中力の低下」を感じているのはなんで?みたいな観点ですな。
その理由として、サイトウィック先生は、私たちの脳が持つ「エネルギーの限界」を軸に話を展開してまして、デジタルデバイスが私たちの脳にどのように負担をかけているか、そしてその影響にどう立ち向かうべきかを教えてくれてためになりました。ということで、いつもどおり本書から勉強になったポイントを見てみましょうー。
- 現代人の脳は、数万年前の祖先とほとんど変わっていない。つまり、私たちの頭は「石器時代の脳」で動いている。一方で、テクノロジーは日進月歩で進化を続け、脳にかかる情報の負荷はどんどん増加している。このような不釣り合いが、私たちの集中力を削ぎ、疲労感を生んでいる。
- 特に問題なのは、「注意のシフト」である。通知音が鳴るたびに脳は別のタスクに切り替えようとするが、これは脳にとって最もエネルギーを消費する行動の一つである。脳は1日に必要なカロリーの20%を消費するが、それにもかかわらず体重のわずか2%のしか占めていないことを考えると、エネルギーの無駄遣いがいかに大きな影響を与えるかが理解できる。つまり、私たちは脳のエネルギーをいかに効率的に使うかを考える必要がある。
- しかし、ダイエットや運動、数独パズルをいくらやっても、使えるエネルギーを増やすことはできない。 意志の力やコーヒーも同様に役に立たない。 脳の持つエネルギーの限界を克服できないのであれば、今あるものでうまくやりくりしていくしかない。
- 脳のエネルギーをうまく使うには、心に取り入れる情報に気をつけるのが最初の一歩となる。たいていの人は、オーガニックや無添加、グルテンフリーなど、口にするものには敏感にこだわるわりに、脳に取り入れるものには急に無頓着になってしまう。しかし、デジタルデバイスを通じて取り込む「心のゴミ」は、時には体に悪いジャンクフード以上に有害である可能性がある。
- 私たちの脳は、絶え間ない刺激を求めるように進化してきたわけではない。脳が求めるのはスマホやタブレットから得られる刺激ではないため、SNSやニュース、動画に時間を費やす代わりに、自分の生活を豊かにするコンテンツだけを選んで消費することで、脳のエネルギーを節約することができる。そのためには、無意識にスクロールを続けるのではなく、意識的に使う情報を選び取る必要がある。
- 「自分の生活を豊かにするコンテンツ」とは、第一に対面での社会的なコミュニケーションである。何千もの「いいね!」やフォロー、オンライン上の知り合いなどは、直に顔を合わせて人との親密なつながりを作ることと比べれば、ほぼ意味はないに等しい。
- 長時間にわたるスマホやタブレットの使用は、特に子供たちの社会性や言語発達に悪影響を及ぼす可能性がある。これは「バーチャル自閉症」と呼ばれ、通常の発達をしている子供が、デジタルメディアに長時間さらされることで、自閉症スペクトラム障害に似た行動を示すようになる現象を意味する(目を合わせない、社会から引きこもる、言語の遅れなど)。ただし、こうした子供たちは、通常はスクリーンタイムを大幅に減らすか、なくせば回復する。
- 幼児期の脳は非常に柔軟で、環境に合わせて成長する。特に初めの2年間は、視覚や言語、社会的認知を育むための重要な時期だが、ここで瞬時に切り替わる視覚刺激の連続を与えると、これが社会的な知性や共感力、想像力を培う機会を奪ってしまう可能性がある。
- タバコの煙を避けるために「禁煙エリア」を設けるように、現在を生きる私たちも、同様に「スクリーンフリーゾーン」を設けるべきかもしれない。デジタルデバイスが絶えず私たちの注意を引き、集中力を奪う現状は「受動喫煙」に近い。
現代では、空港のラウンジや電車の中、いたるところで広告やニュースが流れており、かつて街中がどれだけ静かな空間だったかすら忘れている。これらは無意識に私たちの注意を引き、脳のエネルギーを消耗させていくため、私たちはまず、デジタルデバイスに接する時間や場所を意識的に制限し、「スクリーンフリー」の空間や時間を作ることから始めるべきである。
- 乳児は、親や他の大人の顔を見つめ、それに反応することで社会的なスキルを学んでいく。それなのに、育児でタブレットを与えすぎると、「対話」ではなく一方的に「話しかける」だけの刺激しか得られない。これでは、親や祖父母とのリアルなやりとりが持つ感情的なつながりを提供することはできないため、特に視覚や言語の発達が進む最初の2年間は、デジタルデバイスに頼りすぎず、実際の対話の時間を大切にすることが求められる。