ハーバードの社会学者「アラフィフは『結晶性知能』を活かして幸福度を高めるしかないでしょう!」
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「強さから強さへ(From Strength to Strength)」って本を読みました。著者のアーサー・C・ブルックス博士は、ハーバード・ケネディスクールの社会学者で、個人的にはアトランティック誌のコラムを昔から読んでいて、「おもしろいなー」と思っていた先生です。原著をキンドルで買って読まずにいたら、そのうち「人生後半の戦略書」ってタイトルで邦訳書が出てしまいましたが、せっかく読んだのでポイントをまとめておきます。
で、本書はだいたい50歳を過ぎた人に向けて書かれた本で、テーマをひとことでまとめると、
- 人生の後半が幸せな人と、そうでない人はなにが違うのか?
って感じになります。博士の調査では、全人口の半分は、65歳か70歳を過ぎたあたりからどんどん幸せになっていくのに対して、残りの半分は、なぜか幸福度が下がっていくことが明らかになっているんだそうな。そのような違いはどこから生まれるのかを調べてくれてるわけですね。
そこで、博士がどんな結論を出しているのかと言いますと、
- 人生前半と人生後半では知性の種類が変わる!
って感じです。人間ってのは、若年期と高齢期では脳の働きが変わるんで、これに対応して人生を考え直さないとダメだよーってのが、大きな結論になります。だから原題が「強さから強さへ」になってるわけです。私も人生の後半に入ってますんで、めっちゃ参考になりました。
ってことで、本書から勉強になったポイントを、いくつかまとめてみましょうー。
- 世の中には、年齢を重ねるにつれて不幸になりやすい人がおり、そのような人々は、人生の初期に多くの成功を経験している傾向がある。これは、自分の前半で多くのことを成し遂げてしまったため、何もない後半とのコントラストが目立ってしまうからだと考えられる。
また、高齢期に不幸になる人には、これまで一生懸命働いてきた人たちも多い。こちらも、人生の前半で目指してきた目標を達成したり、逆に目標を達成できないことに気づいたせいで、人生の後半になって失望感が増すからだと思われる。
- 博士の調査データを見ると、人生やキャリアの前半で幸福感を得るための方程式と、後半に幸福を得るための方程式は違うことがわかる。これは、人生の前半と後半では、私たちがメインで使う知能が異なるからだと考えられる。
一般に、人生の前半は「流動性知能」が働きやすく、問題を解決する能力、事件を解明する能力、イノベーションを素早く起こす能力、集中力を高める能力が高くなる。この知能は20代から30代にかけて増加するが、40代から低下をはじめ、その代わりに「結晶性知能」が働きはじめる。
「結晶性知能」は40代から50代にかけて増加し、60代、70代以降も高いまま維持される。この知能は、知恵や知識にまつわる脳の使い方え、人生でたくわえてきた情報をうまく使う方向に働く。
- つまり、あなたのキャリアが流動的知能だけに依存している場合、人生はかなり早い時期にピークを迎えて衰退してしまう。しかし、あなたのキャリアが結晶化知能を必要とする場合、あるいは、結晶化知能を活用できるように仕事人生をリフォームできた場合、人生のピークは延々と続くことになる。言い換えれば、人生の後半をうまく過ごすには、イノベーターからインストラクターに変わるのが重要だとも言える。
- 結晶性知能を活かすために意識すべきは、人生から不要なものを引くように心がけることである。幸せな高齢者の大半は、人生になにかを足すよりも、人生から何かを引くことを重視していた。人生の前半は、真っ白いキャンパスに絵の具を重ねていくような生き方が重要だが、後半では、塗りつぶされたキャンバスから色を引いていかねば、自分が本当に求めるものがわからなくなってしまう。
そのため、人生の後半では、自分が本当に求めていないもの(所有物、執着、信念、意見など)を削ぎ落とす必要がある。年齢を重ねても幸せでいるためには、ただバケットリストを持つのではなく、誕生日を迎えるたびに「自分が捨てたいもの」を5つ〜10つぐらいピックアップした、逆バケットリストを作っておくとよい。人生の後半を幸福にするには、生活に必要な要素をどんどん増やすのではなく、なぜそれがうまくいかないのかを理解し、取り除いていく必要がある。
- 人生の後半に不幸な人は、一貫して「他人と比べて自分はどうか?」というポイントに最も注意を払っていた。しかし、「他人から羨ましがらたぞ!」ということから得られる喜びは、次の瞬間には、自分よりも財産を持った人の出現より不幸に変わってしまう。しかし、他人より金やモノを持ちたいという衝動は、私たちを執拗に引っ張り続け、人生の後半をみじめなものにしていく。
- 人生から不要なものを削ぎ落とすには、「死について考える」のも有効である。人生は永遠に続くものではないということを思い出せば、不要なものが浮き彫りになり、今日をより楽しむことができる。そのためには、自分の死を熟考し、死について瞑想してみたほうがよい。
- 神経科学や社会科学の研究では、人生の後半に幸福でい続ける人たちは、ほぼ必ずロマンチックなパートナーシップと親密な友情を築いていることがわかている。人間関係は幸せの燃料であり、これがなければ年を取っても幸せになることはできない。
信頼できる友人との接触は、我が子との接触よりも幸福と強い相関がある。本当の友人の数は、ゼロ以上であり、配偶者以上である必要がある。
それもそのはずで、結晶化知能を働かせるには、人間の相互のつながりが絶対に必要となるからである。良い人間関係がなければ、私たちの知恵に出口がなくなってしまう。
- 実際のデータでも、仕事以外のコミュニケーションを管理する方法を知らない人は、定年退職後にあまねく孤独に落ち込んでいるとの結果が出ている。いかに努力家で成功者だろうが、人間関係で孤独を感じていたら意味がない。