「カロリーの質」にこだわれば、ダイエットのメリットは数倍にはね上がる
どれぐらいカロリーの質を上げるべきか?
パレオダイエットでは「食事は量より質で選ぼう!」って話をしております。せっかくカロリーを摂るなら、栄養価が高いものを食べようぜ!っていうシンプルな話ですね。
ただ、ここで判断が難しいのが、「どれだけ質をあげたら、どれぐらいの効果が得られるの?」ってところです。食事の質を上げるのが体にいいのは間違いないんだけど、やりすぎると金がかかって仕方ないのも事実。食生活改善のメリットを得るためには、どれぐらいやればいいのかを知っておくと便利でしょう。
ってことで近ごろおもしろかったのが、イランで行われた実験(1)であります。
いつもの食事のカロリーの質を少しだけ上げる
これは肥満ぎみな女性60名を対象にした実験で、PCOSを患った人だけを選んだ模様。PCOSは排卵が起こりにくくなる現象で、肥満のせいでインスリン抵抗性が悪化したときに発生しやすい症状であります。なので、ダイエットによる恩恵を受けやすいんですね。
実験では全員を2つのグループにわけまして、
- 一般的なイランの食事
- 一般的なイランの食事に、カロリーの質が高い食品をちょい足し&カロリーの質が低い食品をちょい減らし
みたいな感じ。具体的にどれぐらい食生活を変えたかと言うと、以下のようになっております。1カップは約250mlで計算してくださいませ。
一般的なイランの食事 | カロリーの質改善グループ | |
パン・米 |
パンは9スライス。米は4.5カップ |
全粒粉パンは7スライス。米は3.5カップ |
砂糖・果糖 | 32gまで | 16gまで |
野菜 | 4カップ | 5カップ |
フルーツ | 4カップ | 6カップ |
乳製品 | 2カップ | ヨーグルトやチーズなどの発酵食品を3カップ |
肉類 | 240g | 240g |
ナッツ類 | 28g | 56g |
油 | 42g | オリーブオイルを中心に42g |
というわけで、野菜とフルーツをちょっと増やしたり、砂糖類を少し減らしたりしただけで、全体的にはそこまで極端に暮らしを変えたわけじゃないですね。
カロリーの質を上げても体重は減りやすくならないが…
さらに全員のカロリーと3大栄養素のバランスも調整されてまして、
- 1日1800 kcalまで
- 炭水化物:52-55%、タンパク質:16-18%、脂肪:30%
のようになっております。摂取カロリーなどは同じにしたうえで、カロリーの質だけを変えてどんな違いが出るかをチェックしたわけですな。
実験期間は12週間で、まずは体型の変化はこんな感じ。
- BMIの減り方はどっちのグループも同じぐらい(-1.6±0.5 vs. -1.2±0.7 kg/m2)
- 体重の変化も特に差はみられなかった
とのことで、特に体脂肪の減り方には違いが出なかったみたい。まぁ摂取カロリーが同じなんで、そりゃそうですよねーといったところでしょう。
ホルモンや体内の老化レベルは数倍も改善する
が、いっぽうでホルモンバランスや体内の老化度には大きな差が出まして、
- カロリーの質を改善したグループは、
- AMHが13%減!(=PCOSが改善した)
- インスリン分泌量が31%減!(一般食は3%減)
- インスリン抵抗性が30%改善!(一般食は4%の改善)
- 血流をアップさせる一酸化窒素の量が19%増加!(一般食は2%の増加)
- 体内の炎症を示すMDAが19%減!(一般食は8%減)
といった感じ。要するに、どっちのグループも体重の減り方は同じなのに、PCOSや糖の代謝、血管や心臓の健康、体内の老化などは格段に改善したわけですな。ちょっと食生活を改善しただけで、ここまで体内のシステムに違いが出るもんなんですねぇ。
もちろん、この実験はPCOSの女性が対象なので、普通体型の人でも同じレベルの改善は見込めないはず。とはいえ、野菜やフルーツを数カップ増やして、単糖類を16gほど減らしただけでも、十分なメリットが得られるのは間違いなさそうであります。
そんなわけで、皆さまにおかれましては、ぜひとも「カロリーの質が高い食品のちょい足し」と「カロリーの質が低い食品のちょい減らし」を意識していただければと思います。どうぞよしなに。