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ネットのサプリレビューを信じるな!という研究

Review

 

 ネットレビューの信頼性を調べた

ネットのサプリレビューってヒドくね?」 っていう面白い論文(1)が出ておりました。

 

 

これはアバディーン大学の研究で、サプリに関するネットレビューの信頼性をチェックしたもの。どうやって調べたかというと、

 

  1. Amazon.comから1,600件のレビューを採集
  2. レビューのなかから具体的な数値が出ているものをまとめる(体重が3kg減った!とか)
  3. 厳密な環境で行われた臨床試験のデータとレビューの数値をくらべる

 

みたいな感じです。なかなかイジワルでいいですねー(笑)

  



 

臨床データとネットレビューを比較

で、この研究でチェックした商品は、

 

  • ベネコール:コレステロール値を適正に維持する機能を持ったお菓子。FDA認可済み
  • ゼニカル脂肪の吸収をブロックするダイエット薬。日本では未承認
  • コレストオフ:ネイチャーメイドのハーブ系サプリ。コレステロール値を下げる効果がある

 

の3つ。いずれもちゃんとした実験データがあるんで、効果を比較しやすいんですな。

 

 

ネットレビューは6倍も効果が誇張されていた

それで何がわかったかと言いますと、

 

  • コレステロール系のサプリは、実際よりも平均で3倍ほど効果が誇張されていた
  • ダイエット系の場合は、実際よりも平均で2倍ほど効果が誇張されていた

 

みたいな感じ。実際の効果とレビューには、最大で6倍もの開きがあったそうな。「やっぱりか!」みたいな感じっすね。

 

 

さらに、この論文では、各レビュアーの信頼性までチェックしているのがおもしろいところ。そこでわかったのは、

 

  • 業者が書き込んだとおぼしきニセレビューは意外なほど少ない。というかほぼゼロに近かった
  • およそ9割のレビュアーは、他人をダマそうという気はなく、善意で書き込んでいる可能性が高い

 

といったところ。基本的にはどのレビュアーも、善意から他人に商品をオススメしてるらしい。やっぱネットにはそんなに悪い人はいないわけですな。

 

 

ネットレビューは効果が上振れしやすい

研究者いわく、

 

そもそも、特定のサプリや薬で治療を試みたうえに、そこからレビューを書こうと思う人の数はとても少ない。そして、そういった人たちの部分集合は、「サプリで良い結果が出た人」ばかりになりがちだ。

 

ここで問題なのが、サプリで何も変化が起きなかったり、逆に症状が悪化した場合に、わざわざ自分の体験をシェアしようと思う人が少ない点だ。そのせいで、サプリのレビューには、ポジティブな意見が多くなってしまう。

 

とのこと。良い結果が出た人ほどレビューを書き込みやすいので、自然と総合点が上振れしていくんだ、と。逆に言えば、それでも悪いレビューばっかの商品は、よほど質が低いってことになりますかね(笑)

 

 

ここから実践的な教訓を引き出すのは難しいですが、結局は「レビューは無視して質の高いデータのほうを信じよう」って話にしかならないでしょうねぇ。このあたりは個人的にも意識してまして、効果がなかったサプリのレビューも書きつつ質が高いデータを併記するようにはしております。

 

 

 まー、このへんはネットレビューだけでなく学術論文の世界でもよくあるんで、なかなか難しいもんですな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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