「音楽を学ぶと語学や数学の成績まで良くなるんじゃないの?」という観察研究の話
https://yuchrszk.blogspot.com/2019/08/blog-post_71.html?m=0
音楽がメンタルにいいのは間違いないところ。音楽セラピーの効果はかなり広く認められてるんで、ストレス解消の基本としてお使いいただきたいところです。
で、さらに昔からよく言われるのが、「音楽を学ぶと頭がよくなるんじゃないの?」ってポイントです。言うまでもなく、音楽は脳を酷使する作業なんで、そのぶん頭が良くなってもおかしくない気がするわけです。
そこで新しく出た論文(R)は「音楽と知性」の問題を調べてくれてて有用でした。
これはブリティッシュコロンビア大学の研究で、どんな調査だったかと言いますと、
- 高校を卒業したばかりの学生112,916人に協力を依頼し、過去3年間の成績データを集める
- 全員の人種、収入状態、家庭環境などを調べ、さらに今まで音楽を学んだことがあるかもチェック
- 全てのデータをまとめて大きな結論を出す
といったデザインの観察研究になってます。その結果、どんな傾向が見られたかと言いますと、
幼少期から楽器を初めて高校まで進んだ者は、たんに語学、数学、科学の成績が良かっただけでない。音楽を学ばなかった学生に比べて、
およそ
1年ほど学習の習得度が先んじていた
。
だったそうです。これはちょっと驚く違いじゃないでしょうか。
今回の大規模調査は、音楽の学習と学校の成績にポジティブな相関を見つけた。複数年にわたって音楽を学ぶと、学問の成功に良い影響を及ぼすのかもしれない。これは、特に楽器を学んだ者に顕著な現象だ。
もちろんこの傾向は、学生の収入や家庭環境などを調整しても確認されたとのこと。今回の研究はサンプル数が過去最大クラスでして、それなりに信頼できそうな気がしております。
こうなると「なんで音楽をやると成績が上がるのか?」ってとこが気になりますが、研究チームいわく、
楽器を学ぶのはとても大変な作業だ。学習者はまず楽譜の読み方を学び、視覚情報を脳が解釈して手の動きに変換するまで訓練を積まねばならない。さらには、注意深く音を聞き取る能力も必要だし、アンサンブルにおいては他人との協調性も求められる。
これらの条件が重なり、学習者の認知キャパシティは広がり、実行機能が改善し、学習のモチベーションも高まるのかもしれない。
とのこと。要するに、音楽は良い脳トレになってるんじゃないの?ってことですね。
もっとも、音楽と脳機能についてはまだ不確定なところも多くて、過去には「楽器をやっても認知機能は改善しない」って結果も出てたりはするんですよね。なので「音楽が直に脳機能を改善するか?」っところはまだ謎かなーって感じ。
というか個人的には、「音楽をやったおかげで自己効力感やセルフコントロール能力が高まるのでは?」って可能性の方が高いような気がしております。楽器みたいに不断の努力が必要な作業にはセルフコントロール能力を高める働きがありそうですし、「学校の成績アップに必要なのはIQよりもマジメさだ!」みたいなデータも多いもんですから。
まぁ何が正しいかはよくわかりませんが、いずれにせよ音楽は良いのだろうなーって感じっすね。個人的にも楽器はやってみたいけど時間が……。