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「腸をいたわればメンタルも改善するの?」問題に関する大規模レビューが出てましたよ

 

最高の体調」でも「」で1章分を書いたぐらい、個人的にお腹の調子は大事だと思ってるわけです。くわしくは「『リーキーガット』について知っておきたい知識をすべてまとめてみたぞ」あたりをご参照いただければと思いますが、とりあえず「腸を壊すとあらゆる病気の原因になるよー」ってとこは押さえといていただければと。

 

 

で、さらに近ごろよく言われるのが「腸が悪いとメンタルも悪くなるのでは?」って話です。腸と脳はつながってるので、お腹が悪けりゃ頭にも影響は出るだろう、という。

 

 

この説については一定のデータがありまして、どうも壊れた腸のせいで炎症が起きて脳まで巻き添えを食っちゃうのが原因と言われてます。なんせ人間の腸は外敵から身を守るバリアなんで、ここが突破されたら全身に悪影響が行きわたるのはよくわかる話です。

 

 

となれば、「腸をいたわればメンタルも改善するでしょ?」と思うのが当然の話で、新たにそこらへんをガッツリ調べてくれた論文(R)が出ておりました。

 

 

これは上海交通大学の研究で、過去に出た3334件の「腸とメンタル」研究から質が高めな21件を抜き出してまとめた系統的レビューです。データごとに介入法が違うんでメタ分析などはやってないんですけど、全体的な傾向を見るには十分な役に立つ内容でしょう。

 

 

データの内訳がどのようなものだったかと言うと、

 

  • 総サンプル数は1,503人
  • 21件のうち14件はプロバイオティクスを使ってメンタルが改善するかを調べている(IBSの患者さんに乳酸菌を使った事例が多いL. rhamnosusとかL.acidophilusとか)
  • 残りはFODMAP食を使ったりオリゴ糖を使ったりと、食事によって腸内環境を改善している

 

みたいになってます。それで、どんな傾向が確認されたかと言いますと、

 

  • プロバイオティクスを使った実験では、36%が「不安の改善が見られた」と報告している
  • 食事法による実験では、86%に不安改善の効果が見られた

 

ってことで全体的に見れば「やはり腸内環境の改善はメンタルに効く!」と言って良さそうです。

 

 

ちなみに、データでは明らかに食事のほうがプロバイオティクスを上回ってますが、これについて研究チームはこう言っておられます。

 

腸内細菌が成長するためのエネルギーソースは主に食事だ。(中略)食事を通して腸内細菌を改善すれば、エネルギー供給のバランスへ直に影響を与えるため、腸内フローラの発達に大きな影響をあたえる。

 

ってことで、食事のインパクトの大きさが強調されておりました。戦場に新たな戦力を投入するよりも、まずは現場で飢えた兵士を食わせてやれ!ってことですな。

 

 

また、この論文で「おっ!」と思ったのは、健康体の人にプロバイオティクスを使った場合でも、約67%に不安の改善効果が確認されてるとこですね。このタイプの研究って、何らかの病気に悩む人だけを対象にするケースが多いので、健康体にもメリットがあるってのはうれしい話なんですよ。

 

 

そんなわけで、やはりメンタル改善のためにも腸内フローラをいたわっておくのが吉ですね。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。