今週の小ネタ:なぜ幸福を追い求めると逆に不幸になっちゃうんだろう?ベータアラニン+重曹でパフォーマンスアップ?人気があるレビューの特徴とは?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
なぜ幸福を追い求めると逆に不幸になっちゃうんだろう?
「幸福を追い求めると逆に不幸になる!」ってのは、今の心理学では割と確立された知見で、「幸福なんて忘れろ!」と主張する専門家もいるほど。幸福を意識しすぎると、今の自分の不幸さに目が行ってしまうので、そのぶんだけ幸福感が下がっちゃうわけですな。
新しい研究(R)も、この心理をチェックしたもので、1,815人の男女を対象に3つの実験を行い、「なぜ幸福を追い求めると逆に不幸になっちゃうんだろう?」ってポイントを調べてくれております。ざっくりどんな試験かと言いますと、
- 研究1aと1b:アンケート用紙を使って、みんなの幸福に関する態度をチェック。その結果として、「幸福を熱望する人」がいる一方で「幸福に重きを置かない人」もおり、「今の自分が幸福かどうかを気にする人」がいる一方で「今の自分が幸福かどうかを気にする人」もいることがわかった。
- 研究2:幸福へのこだわりが幸福感に与える影響を分析。みんなの幸福への態度と日々の幸福感の関係を調べてみたところ、やはり幸福への関心が強い人ほどネガティブなメタ感情が引き起こされ、それが幸福感の低下につながっていた。
- 研究3:日記調査を使用して、日々のポジティブな出来事でどれぐらいネガティブな感情を経験したかをチェックしたところ、「幸福に感心がある人ほど不幸になる」という現象は、肯定的な出来事にも否定的な感情を抱いてしまうのが原因だった。
みたいになります。全体としては、自分の幸福度を気にする人は、人生の満足度が低く、よりネガティブになり、抑うつ症状が増加する傾向があったそうで、ここらへんは過去の類似研究と同じ結論ですね。簡単に言えば、幸福を観察するという行為そのものが、幸福を消滅させるのだ!って話でして、量子物理学の観察者効果みたいですな。
そのメカニズムは、ざっくりこんな感じになります。
- 現在の幸福の状態を、理想の幸福の状態と比較する。
- そのせいで、「今の自分がどのような感情を持っているのか?」から、「自分のポジティブな感情のレベルはどれぐらいか?」に焦点が移る。
- 「自分の理想ほど幸福を感じていない!」って気持ちが強くなる。
って流れで幸福度の低下が起きるので、研究チームは、「想像上の幸福状態と比較することなく、自分が感じていることを額面通りに受け止める方がよい」と結論づけておられます。理想の幸福は忘れて目の前に集中せよ!って話で、これはいろんなことに当てはまりそうな考え方ですなぁ……。
ベータアラニン+重曹でパフォーマンスアップ?
ベータアラニンと重炭酸ナトリウム(重曹)と言えば、どちらも運動のパフォーマンスアップへの効果がそれなりに認められている成分。筋肉痛が減ったり、運動の疲労感が減ったりと、いろんな効果が得られるみたいなんですな。
それならば、2つの成分を同時に使ったら凄いことになるのではないか?ってことで、新しいメタ分析(R)では、両者を併用したらどうなるかを深掘りしてくれていてためになりました。このポイントを調べたメタ分析は初なんで、ありがたいことですねぇ。
ここでは10件の研究をまとめてまして、参加者の総計は243人。評価されたエクササイズは、自転車が5件、水泳4件、ランニング2件、ローイングが1件で、ベータアラニン+重曹の組み合わせでパフォーマンスが上がるかを調べてくれております。
では、細かいことは省いて、大事な結論だけピックアップしておきましょうー。
- ベータアラニンと重曹を併用した試験では、プラセボよりも有意に優れていたとの結果を報告しており、メタ解析の結果も有意だった。
3つの条件(ベータアラニンだけ飲む、重曹だけ飲む、両者を併用する)をまとめたメタ分析でも、プラセボよりも良い効果が認められた。
ということで、どうやらベータアラニン+重曹の組み合わせは、どちらかを単独で摂取するよりも運動パフォーマンスを上げてくれるらしい。まー、個人的には、重曹は胃腸のトラブルが心配なので、もっと安全な形態のサプリが出てくれないと使う気にならないんですけど、運動ガチ勢の方は試してみるのも良いかもしれません。
ちなみに、研究チームは、これらのサプリの飲み方を以下のように提案しておられます。
- ベータアラニン=1日6.4gを4週間以上は続して摂取する。その際は、3~4時間の間隔を空けて。1回1.6gを4回摂取するとよい。
- 重曹=運動を始める1~3時間前に体重1kgあたり0.3gを飲む。副作用を減らすために、できればカプセルタイプの重曹サプリを飲むのが望ましい。
気になる方はお試しあれー。
人気があるレビューの特徴とは?
「人気があるレビューの特徴とは?」みたいな研究(R)が出ておりました。レストランや商品レビューの中には、閲覧者からの支持を集めるものとそうでないものがありますが、果たしてその違いはどこから出るのか?みたいな問題ですな。
で、この研究では、Yelpのレビューサイトに16年間にわたって投稿されたレストランのレビュー約700万件を調査。すべての内容をAIで分析して、以下のような知見を提示してくれております。
- 全体として、写真付きのレビューは写真なしのレビューよりも多くの「役に立った」票を獲得した。
- 写真とレビュー内容が一致している場合、そのレビューはより多くの「役に立った」票を得やすい。
- 見づらいフォントを使ってレビューを読みにくくすると、レビューの有用性に対するレビューの内容と写真の内容の類似性の影響が消滅した。
ということで、ここからわかることを一言で要約すると「脳に優しいレビューほど人気になりやすい」ってことになるでしょう。写真があればレビューをひとめで理解しやすくなるし、写真とテキストの内容の一致度が高ければさらにわかりやすくなるし……って感じで、「脳が情報を処理しやすいかどうか?」ってのが、レビューの人気を高めるための大きなポイントだと考えられるわけです。
ってことは、この文献を日常に活かしたいときは、以下のような教訓を得られるかもしれません。
- 何かを説明する場面(プレゼンテーション、ブログ記事、教材作成など)では、テキストだけでなく関連する写真や視覚情報を組み合わせる。その際は、複雑な情報はできるだけシンプルなインフォグラフィックにまとめる。
- 画面や資料に適度な余白を設けることで、情報を詰め込みすぎずに視覚的な負担を軽減する。
- 抽象的な概念を伝える際には、具体的な事例やストーリーを使う。その際は感情的な要素を加えて、情報を記憶に残りやすくする。
- 背景と文字のコントラストを強調し、読みやすさを確保することで、視覚的に情報を処理しやすくする。
こうして見ると、わかりやすいプレゼンでは普通に意識されていることばかりですが、「情報発信で人気になりたいときは、脳への優しさを心がけるぞ!」と心がけておくだけでも、表現の方法がいろいろと変わりそうで良いのではないでしょうか。