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勉強の効率をめっちゃ加速するには“物語”を使うのがベストじゃないの?みたいな研究の話


 こないだ出た「新R25チャンネルの動画」では、「年を取っても成果を出すには好奇心が大事!」みたいな話をしたわけです。好奇心がないと、どうしても勉強が嫌々になっちゃうし、日々のトレーニングも苦痛になっちゃうし、新しい可能性に一歩踏み出そうともしないでしょうからね。

 

というわけで、新しい研究(R)も「好奇心の重要性」にまつわるものでして、まずは結論から申し上げますと、

 

  • 好奇心によって子どもの勉強がめっちゃはかどる!

 

みたいになります。子どもにガンガン勉強してもらうためには、好奇心を刺激するのがベストだって話ですな。あくまで子どもを対象にした調査ではありますが、成人にも十分に使えるような知見が出ているのではないかと。

 

この研究は、アメリカの子ども138人と、トルコの子ども88人を対象にしたもの(みんな3歳から6歳ぐらい)。まずは全ての子どもに対して、2パターンの物語を語りかけたんだそうな。

 

  1. 昔ながらの教育法にもとづいたバージョン:このバージョンでは、スキューバ・サムという名の主人公が、宝探しをするストーリーが語られた。この時、サムの行動は外部から厳密に管理されており、どの地図やヒントを使って、どの島を探索すべきか、すべて明確な指示に従って行動した。また、物語の途中で実験者が子供に質問を投げかけたが、これも制限された選択肢から答える形になっていた(例:「サムの双眼鏡が見える?」)。


  2. 好奇心を促進するようにデザインされたバージョン:このバージョンでは、スキューバ・サムという名の主人公が、宝探しをするストーリーが展開された。ただし、上のパターンとは異なり、サムは常に新しい島を自分の決めで探索し、状況に応じて柔軟に対応する内容になっていた。また、このパターンのサムは、時間制限を意識し、すべての島を訪れるために時間配分にも注意を払っている。さらに、このバージョンでは、子供が自発的に考え、自由な答えを引き出すような質問が投げかけられたり(例:「サムがこの島が宝島かどうか確かめるために何をすべきだと思う?」)。

 

というわけで、「主人公が規則でガッチガチに縛られているストーリー」と「主人公が不確実な状況を自由に探索できるストーリー」の両方を読ませて、子どもたちの態度にどんな違いが出るのかを調べたわけです。ちなみに、アメリカとトルコから参加者を集めたのは、文化の違いによる影響をできるだけ取り除くためだそうな。

 

でもって、上の物語を聞いた後、さらに子供たちにバーチャル水族館のゲームでプレイするように指示。このゲームは、「限られた時間の中で5つの水槽から海の生き物を見つけよう!」という内容だったらしい。当然、生き物が隠れている場所は異なるので、すべての水槽を戦略的に探索する必要があったとのこと。

 

すると、事前にどちらのストーリーを聞いたかによって、子どもたちの行動は大きく異なりまして、

 

  • 好奇心をかき立てるようなストーリーを聞いた子供たちは、もう一方のグループの子供たちよりも、効率的にゲームに取り組む傾向があった。具体的には、好奇心グループの子供たちは、すべての水槽を短時間で探索したり、生き物が少ない水槽を早く切り上げたりと、探索の柔軟性がめちゃくちゃ強くなった。

 

みたいな結果だったそうな。こうして見ると、“物語”ってのは、子供たちの好奇心を刺激して、戦略的な行動をブーストさせるのに有望な方法なんでしょうな。

 

物語が有効な理由はいくつかありますが、このデータを見た限りでは、

 

  • 物語は没入感が強いので、話をより深く聞き、ちゃんと記憶できるようになる。

 

  • 物語を読むほうが、その中で説明されている戦略を、どのような場面で使えば良いのかを理解しやすくなる。

 

ってポイントが大きそうであります。物語は人間の脳にとって優しい構造をしているので、そのおかげで教訓を理解しやすい上に頭に残りやすく、現実に適用するのも上手くなるわけですね。

 

まぁ、この研究は、物語を使って好奇心をかき立てる方法までは教えてくれないんですが、今回の結果を実際に活かすためには、以下のような特徴を持ったストーリーに、日ごろから触れてみると良いかもしれません。

 

  1. 好奇心をかき立てるテーマを扱っている:主人公が、不確実性や新しい状況に柔軟に対応する様子を描いているものほどよい。主人公が未知の場所を探索したり、新しい情報に基づいて行動を変える姿に接することで、こちらの好奇心もかき立てられる。


  2. オープンエンドの質問を発しやすいもの:物語を読む間、自由な発想を促す質問が浮かびやすいものほどよい。例えば、「主人公は次に何をすべきか?」や「自分ならどうする?」といったオープンエンドの質問が自然と浮かぶ作品が望ましいと思われる。


  3. 時間やリソースが限定されたもの:物語の中で、主人公が時間の制約や限られたリソースの中で最善の選択をする状況が描かれたものほどよい。これにより、読み手は物語を通じて戦略的に行動するマインドを刺激され、現実でも効率的かつ柔軟に問題を解決する力が育つっぽい。


  4. 文化的に共感できる要素を取り入れる:物語の中に、読み手が所属する文化やコンテクストが含まれたものほどよい。異なる文化や価値観に触れつつ、主人公が共通する問題を解決する姿に接することで、より現実の問題に適用しやすい物語になる。

 

簡単に言えば、不確実性の高い問題に対して、主人公が自分なりの工夫をして乗り越えていくような作品が望ましいって感じですね。ぱっと思いついたとこだと、「火星の人」とか「マスターキートン」あたりが頭に浮かびましたが、このような要素を持った作品は多いでしょうから、自分が好きなエンタメをお使いいただければ良いのではないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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