健康食品「ウコン」(ターメリック)には薬効はない?は本当か問題
ウコンのサプリは金のムダ?
ウコンに関するご質問をいただきました。
「健康食品「ウコン」(ターメリック)には薬効はないことが判明」という記事が出てました。クルクミンのサプリとかは意味がないのでしょうか?
とのこと。記事によりますと、
クルクミンに含まれる物質について「不安定かつ科学的に反応性が高く、体内に吸収できない化合物であるため、(薬剤の開発に役立つ)可能性は極めて少ない」とする結論を導き出しています。
って感じ。なかなかバッサリ切ってますねー。
このネタ元はミネソタ大学のレビュー論文(1)で、過去に出た164件の研究をまとめた内容になっております(メタ分析はしてない)。というわけで、さっそく元の話を読んでみました。
で、この論文が主に言っているのは、
- クルクミンには、まともなランダム化比較試験(RCT)が存在していない
- ウコンの成分であるクルクミンは、とってもモロくて体に吸収されにくい
の2点ですね。ひとつずつ見ていきましょうー。
1.クルクミンにはまともな実験が存在してない問題
まず「まともなRCTが無いじゃないか!」ってとこから。
ここで注意したいのが、この論文は「ガチの病気に対してクルクミンが効くか?」しか問題にしてないってとこでしょうね。具体的には、皮膚障害、癌、アルツハイマーなどに対する臨床試験の質を議論してるんですな。この点で、論文が主張する「まともなデータが無いぞ!」って批判は間違っておりません。
が、普通のウコンユーザーが気になるのは、「二日酔いに効くの?」とか「アンチエイジングに役立つの?」ぐらいのもんでしょう。このあたりが、研究者と一般人の興味の差になってるかと思います。
ところが、もっと敷居を下げてみると、 実はクルクミンの健康効果をチェックしたまともな試験はいろいろ行われているんですよ。たとえば、
- 117人の男女を対象にしたプラセボ対照二重盲検比較試験。1日1gのクルクミノイドを飲んでもらったところ、体内の炎症レべルの低下が確認された(2015年,1)
- 8件のランダム化比較試験を精査したメタ分析。クルクミンのサプリで炎症の低下が確認された(TNF-α)(2016年,2)
みたいな感じ。要するに、癌や認知症に効くかどうかまではわからないけど、体内の炎症を鎮める働きはあるんじゃないの?ってことです。
実際、今回の論文でも、
ウコンの抽出物が、人間の健康に役立つ可能性を否定するものではない。
と書いてありまして、クルクミンのメリットまでは否定してなかったりしますしね。
2.クルクミンはモロくて体に吸収されないじゃないか!問題
クルクミンが体に吸収されにくい物質なのは有名な話で、当ブログでも以前に「ウコンの力は本当に効くのか?」にも少し書いたとおり。大昔から言われてきた難点であります。
ただし、近年ではこの問題をクリアしようって研究も盛んでして、
- ピペリンとクルクミンを一緒にとる
- 水に溶けやすいクルクミンの開発
- ナノ化したクルクミン(セラクルミン)
あたりが有名なところです。なかでも手軽でよさげなのがピペリンと混ぜる方法で、先にあげた2015年論文(1)でも、この手法で成果を出しております。1998年の実験(3)だと、ピペリンとセットにした場合のクルクミンの吸収率は20倍だとか。
が、 今回のイリノイ大学論文では、このあたりの手法には触れられておらず、基本的にはクルクミンだけの効果しかチェックしてないんですね。まぁクルクミンの安定化にまで話を広げると、28ページの論文には収まらないでしょうから仕方ないですが。
まとめ
というわけで、今回のレビュー論文が主張しているのは、
クルクミンを薬に応用しようとしている人は、もっと有効なデザインの実験をしてね!
ってことです。実に穏当で普通の結論ですね。
まぁ個人的には「ウコンの力」とかは無意味だと思いますが、ちゃんと吸収率アップの処理をしているサプリであれば、クルクミンがアンチエイジングに役立つ可能性は高いのではないかと。