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睡眠お役立ちデータいろいろ:ヨガ系の瞑想、認知機能と睡眠、GABAって効くの?

 

「過去に類似の話を紹介したけど、さらに追試で効果が確認されたので無視するのももったいないケース」をまとめて取り上げてみる」シリーズです。今回は「睡眠の改善に役立ちそうなデータ」を3つほど、ざっくりとまとめてお送りしまーす。

 

 

瞑想で医療関係者の睡眠が改善したよ!みたいな話

瞑想でお医者さんや看護師さんの睡眠が改善したよ!って報告(R)が出ておりました。医療に関係する人は一般に睡眠不足が多いので、昔から「なんとかせねば!」とは言われてるんですよね。

 

 

で、こいつは8週間のRCTでして、

 

  1. 同じ病院で働く小児科医、栄養士、看護師64名を、「8週間のヨガ系の瞑想」または「何もしないグループに無作為に割り付ける

  2. ポリソムノグラフィー(PSG)を使って、研究の前後で客観的な睡眠の質を評価。主観的な睡眠の質はPSQIとESSで評価

 

みたいな内容になってます。ヨガ系の瞑想では特定の呼吸法をしつつ意識を集中する手法を使い、1回30分のセッションを週に2回ずつ行なったとのこと。週2でいいなら、忙しい人でも実践できそうっすね。

 

 

すると、実験の終了時には、

 

  • 瞑想グループは、心拍数の減少と睡眠開始後の覚醒時間の分数の減少が認められた(要するに寝つきがよくなった)
  • ついでに、主観的な睡眠の質もアップし、ベッドに入ってから眠りにつくまでの時間も短縮された

 

とのことでして、「睡眠の改善に十分使えるのでは?」と思わせる結果っすね。個人的には瞑想の時は呼吸をいじらないようにしてるんですけど、たまには呼吸法も取り入れてみるか……。

 

 

 

認知の衰えによる睡眠不足には何が効くの?という系統的レビューの話

認知機能が衰えると、睡眠不足になりやすいのは有名な話。これを放っておくと、脳に悪いタンパク質がさらに溜まってしまい、アルツハイマーや認知障害がいよいよ悪くなったりするんですよね。

 

 

ってことで新たな系統的レビュー(R)では、軽度のアルツハイマーおよび軽度認知障害(MCI)の人は、「どんな対策をとれば睡眠が改善しやすいのか?」を調べてくれておりました。具体的には、睡眠改善に関する18の研究をまとめていて、1,056人(平均73.5歳)のデータを概観しております。

 

 

で、どんな報告が出てたかと思いますと、

 

  • 認知行動療法(CBT)と、実行のスケジュールが決められた運動プログラムは睡眠スコアを改善する
  • TMS治療は、昼寝中に皮質の徐脈振動と紡錘体の働きを改善したとの報告がある(つまり、理論的には記憶形成とシナプス可塑性が改善する)。ただし、睡眠時間などには影響を与えなかった
  • 2つの小規模な研究で、メラトニンにより夜間の覚醒と寝つきの良さが改善したと報告されている
  • CPAP(無呼吸症候群の治療に使うやつ)は深い睡眠をうながし、夜間の覚醒を減少させる
  • 医薬品の中では、スボルレキサントは総睡眠時間と睡眠効率を増加させ、覚醒後睡眠導入時間を減少させた。ガランタミン、リバスチグミン、テトラヒドロアミノアクリジンは影響を与えなかった

 

って感じです。メラトニンや認知行動療法はこれまでも何度か取り上げてきましたが、TMS治療も睡眠改善に役立つかもしれないんですねぇ。

 

 

もちろん軽度ADとMCIの人しか対象にしてないので、果たして健康的な人だとどうかはわからんですが、こうして見ると「睡眠に効くテクニック」ってのはあんま変わらなそうっすな。

 

 

 

 

GABAで睡眠は改善するか?のメタ分析

ストレスに効く!と言われて久しい「GABA」ですが、果たしてその実力はいかほどのものかを示した系統的レビュー(R)が出ておりました。

 

 

ざっとおさらいすると、GABA(ガンマ-アミノ酪酸)は中枢神経系の機能に重要な役割を果たす非タンパク性のアミノ酸の一種。体内のGABAのレベルが下がると睡眠障害や慢性的なストレスが悪化する傾向は、過去にも何度か報告されてたりするんですよ。

 

 

ってことでこの論文では、ストレス(n=10)および睡眠(n=6)の問題に対して、

 

  • 天然GABA(食品のなかに含まれるGABA)
  • 生合成GABA(発酵とかで人工的に作ったGABA)

 

が効くかどうかについて、14のRCTおよび準実験的研究をまとめた内容になっております。

 

 

で、結果をざっくり並べてみると、こんな感じです。

 

  • GABAはほとんどの研究でストレスに関する生理学的マーカーを改善したが、主観的なストレスには影響を与えなかった(つまり、体内ではストレスの悪影響は改善してるんだけど、自分では「特にストレスが楽になった気はしないなー」って現象が起きる)。ちなみに、ストレスに関する10の研究のうちGABAの長期投与を行なったのは2つだけで、残りの8つのは単回投与

 

  • 睡眠に関しては、6つの研究すべてでGABAの反復投与(1~8週間)を使ってて、そのうち3つが「GABAで主観的な睡眠スコアが改善した」と報告している

 

なんか全体的にモヤモヤする結果ですけど、個人的な感想としては、

 

  • GABAのストレス改善効果については、小から中等度のエビデンスはある
  • GABAの睡眠改善効果についてはエビデンスはかなり低め

 

ぐらいのとこっすね。ほとんどの試験は小規模で質も低く、研究間のデータのバラつきも大きいんで、いまんとこストレスや睡眠のためにGABAのサプリを買うにはいたらないっすねー。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。