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今週半ばの小ネタ:最強の勉強法とは?、10秒の休憩でスキルが身に付く、カフェインと問題解決力

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。   

  

 

 

「自分で問題を作る vs. 他人が作った問題集」勝つのはどっちだ?

勉強の効率を上げるにはクイズ化が大事!」ってのはよく聞くところ。勉強の際にただテキストを復習するのではなく、覚えたいことをクイズにして「これはなんだったかな?」と思い出すステップをは入れた方が効率がいいって話ですね。

 

 

ですが、まだよくわかってなかったのが、

 

  1. 自分で質問を作る(例えば「第一次大戦はサラエボ事件が原因で起きた」って文章から「第一次大戦の原因は?」みたいな質問を作る)
  2. 既存のテストを使う(本屋で手に入るような問題集を使ったりとか)

 

という2つのパターンを比べたときに、どっちの方が有効なのか?って問題です。パッと見だと「自分で質問を作る」方が認知への負荷が高いぶんだけ良さそうな気もしますが、果たしてどうなのか、と。

 

 

ってことで新しい研究(R)は、この問題に取り組んでいて有用でありました。

 

 

これはカッセル大学などの調査で、82人の学生に発達心理学の講義を受けさせたんですが、その際に全体を3つのグループに分けてます。

 

  1. 復習グループ=講義のスライドを復習して暗記する
  2. 質問グループ=スライドごとに研究者が作った質問が与えられる
  3. クイズ化グループ=各スライドの内容にもとづいて、自分でテスト問題を作る

 

で、1週間後に全員に抜き打ちテストをしたところ、こんな結果になりました。

 

  • 復習グループよりも、質問とクイズ化グループは平均で11パーセントポイントほど成績が良かった
  • 質問とクイズ化を比べた場合、両グループに有意差はなかった

 

ってことで、この結果をみる限りは、わざわざ質問を作る作業をしなくても、普通に問題集を解いてれば十分みたい。結局のところ、クイズでもっとも重要なのは「これはなんだ?」と思い出すプロセスで、問題を作るステップは記憶に影響しないのかもですな。

 

 

 

「10秒の休憩」が学習効率を激しく上げる?

効率の良い学習のために休憩が必要なのは常識で、ゆっくり休む時間を作らないとうまく記憶が定着しなくなっちゃうんですよね。

 

 

では、具体的に「学習のためにどれぐらい休めばいいのか?」ってのが気になるとこですが、NIHなどが行った実験(R)では、「10秒の休憩でもかなり大事なんじゃない?」って結論になってておもしろいです。

 

 

これは27人の男女を対象にした実験で、全員に「いつもと違ったタイピングをしてくださいねー」と頼んだらしい。その際に、

 

  1. タスクを練習する
  2. 10秒の休憩をはさむ

 

っていう一定のルーチンを35回ほど繰り返してもらいつつ、作業中の脳波を計測したんだそうな。

 

 

すると、ここでちょっと興味深い変化が確認されまして、

 

  • 被験者の脳波がタイピング中よりも休憩中に大きく変化していた!
  • 休憩中の脳波は、記憶がされている時に特有の脳波だった!
  • どうもタイピングスキルの向上は休憩中に起きてるっぽい!

 

みたいな結果が出たんですよ。なんでも10秒の休憩中には脳の右半球あたりにベータ波が発生しまして、これがタイピングスキルの向上に役立ってる可能性が高いみたい。

 

 

って、もちろん、これはあくまで「タイピング」という運動スキルにまつわる研究なんで、果たして受験勉強などの学習に役立つかは不明であります。そこらへんはご注意いただきたいところですが、少なくともスポーツや楽器のスキルを学ぶときには役に立ちそうな内容じゃないでしょうか。

 

 

例えばピアノの学習だったら、

 

  1. ワンフレーズを弾いてみる
  2. 10秒だけひたすらボーッと休む

 

といった繰り返しでスキルが定着しやすくなる可能性は大いにありましょう。これは自分でも試してみよう……。

 

 

 

カフェインで問題解決力が上がる!

カフェインで集中力が上がることは「ヤバい集中力」にも書いたところですが、新たに「カフェインで問題解決力が上がる!」ってデータ(R)が出ておりました。

 

 

これはアーカンソー大学などの研究で、80人の男女にカフェイン錠剤またはプラセボの薬のどちらかを与えたうえで、

 

  • 発想力がどれだけあるか?
  • 問題を解決する力がどれだけあるか?

 

といったポイントをチェックしたんだそうな。そこでどんなことがわかったかと言いますと、

 

  • カフェインを飲んでも良いアイデアを出せるようにはならなかった
  • ただし、カフェインを飲んだグループは問題解決力が向上した(d= 0.56)

 

とのことで、カフェインは斬新な発想の呼び水にはならないものの、ある程度の正解がある問題については解決力を高めてくれるとの結論であります。d=0.56はまぁまぁの数字で、実生活でも試すべきレベルだと申せましょう。

 

 

ちなみに、この研究だと、問題解決力がアップするカフェインの量は、

 

  • 1回200mgでOK!

 

だったそうです。つまりコーヒー一杯を飲めばメリットは得られるってことですな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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