ケンブリッジ大学の専門家「正しい子育ては狩猟採集民に学べ!」
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「子育ては狩猟採集民に学べ!」みたいな総説(R)を、ケンブリッジ大学などの先生方がまとめてくれていたので、簡単にポイントを押さえておきましょう。
著者のニック・チャウドハリー博士は、ケンブリッジの進化人類学者で、この文献のポイントをまとめると、
- 狩猟採集民に近い子育て法を取り入れれば、メンタルが健やかな子供が育つのでは?
みたいになります。博士はコンゴのバヤカ族の暮らしを調査しつつ、「狩猟採集民の子育てって、先進国の子育てとだいぶ違うよねー」ってところを指摘。狩猟採集民の生活様式に学ぶことで、子どものメンタルヘルスが改善されるんじゃないかと指摘してるんですね。いわば「パレオな子育て」ですな。
もちろん、狩猟採集民の環境は先進国とだいぶ違うんで、「彼らの子育てを理想化すべきではない」と博士も強調しておられるんですけど、ここから得られる知見は参考になるんじゃないでしょうか。
では、以下に個人的に勉強になったポイントのまとめです。
狩猟採集民は、身体接触がめっちゃ多いぞ!
- 狩猟採集社会では、乳幼児との身体的接触の量がはるかに多い。例えば、ボツワナのサン人として生まれた生後10〜20週の乳児は、日照時間の約90%は誰かと身体的に接触している。
- また、大半の狩猟採集社会では、幼児が泣き声を挙げればほぼ100%の確率で抱っこ、声かけ、授乳が行われるし、叱ることはほとんどない。
狩猟採集民は、養育者の数がめっちゃ多いぞ!
- 狩猟採集社会では、アロペアレンティングが普通。これは、両親以外の祖父母や友人が子どもの世話をするシステムで、そのおかげできめ細かな保育が可能になっている。狩猟採集民の研究では、アロペアレンティングが人間の適応の中核であることが強調されており、多くの狩猟採集社会では、両親が子どもの世話をする割合はほぼ50%しかない。例えば、コンゴ民主共和国のエフェ族は、生後18週までに1日に平均で14人が世話をする。
- 狩猟採集社会の共同生活では、乳幼児に対する養育者の割合が非常に高く、10:1を超えることもある。これは先進国の核家族による子育てとはかなり対照的。狩猟採集民の乳幼児は、ほぼ一日中、数メートル以内に必ず介護者がいる。これによって狩猟採集民の乳幼児たちは、安心感や認知機能を発達させることができる。
- 博士いわく「現在の先進国では、親が社会的なネットワークから受ける育児支援の量は、原始時代よりもはるかに少ない。他の介護者がいれば、核家族内のストレスによる悪影響や、母親のうつ病のリスクを軽減することができ、それが子どものウェルビーイングや認知発達に影響を与える。このような違いは進化的なミスマッチを生み出し、養育者と子どもの双方に害を及ぼす可能性がある」とのこと。
狩猟採集民は、遊びと学びが表裏一体
- 狩猟採集社会では、先進国よりも、子どもが乳幼児の世話をするケースが多い。これは年長の子どもだけでなく、4歳からある程度まで乳幼児の世話をしはじめる。
- 博士いわく「先進国では、子どもたちは学校教育で忙しく、幼児を世話するの能力を身につける機会が少ない。しかし、少なくとも、年上の兄弟が親をサポートする役割をより大きく果たし、それが彼ら自身の社会的発達を高めるかもしれない」とのこと。
- 狩猟採集社会では、指導的な教育はまれであり、幼児は主に観察と模倣によっていろいろなことを学んでいく。狩猟採集民の子どもたちは、2歳頃から、さまざまな年齢層(2~16歳)が集まったグループで一日の大半を遊んで過ごす。そこでは、年長者との遊びを通じて、互いに学び合い、スキルや知識を共同で獲得していくのが普通である。狩猟採集社会では、学びと遊びは表裏一体だと言える。
- 博士いわく「教室での学校教育は、人類の進化の歴史で見られる学習様式としばしば対立する。狩猟採集社会で暮らす子どもたちは、先進国の子どもたちとは全く異なる環境・状況に置かれている」とのこと。
- もちろん、狩猟採集社会を生き抜くスキルと先進国社会を生き抜くスキルは大きく異なり、後者を学ぶためには教室での授業が必要なのは間違いない。しかし、子どもたちは生まれつき学習に関する適応力を持っているため、この能力を、現代の学校教育に活用できる。具体的には、ピアラーニングやアクティブラーニングの考え方が重要で、これらの手法により、モチベーションやパフォーマンスが向上し、ストレスが軽減されることも過去の研究で示されている。