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「1日10分で幸福度が上がる」科学が証明したシンプル習慣とは?【17,000人が実践】

 

1日10分でメンタルが改善するぞ!」って研究(R)がおもしろかったんで、内容をチェックしておくと役に立ちそうであります。

 

これは世界の169カ国から17,598人もの超大規模サンプルを分析したもので、まずは研究のデザインを簡単に見てみましょう。

 

  • 対象者:18歳以上の一般人(17,598人、169カ国)
  • 内容:1日1つずつ、1週間で計7つの「喜びのマイクロ行動(micro-acts of joy)」を実践してもらう(各行動は5〜10分)
  • 測定項目
    • 感情的ウェルビーイング(人生満足度、幸福感、人生の意義)
    • ポジティブ感情(喜び、驚き、希望など)
    • 幸福に対する自己効力感(幸福は自分でつくれるという感覚)
    • ストレス、自己評価による健康状態、睡眠の質

 

「喜びのマイクロ行動」ってのは、5〜10分以内で済むポジティブな行動の総称で、参加者には以下の7つのパターンの行動から好きなものを選ぶように指示されたんだそうな。

 

  1. 他人の喜びを祝う:誰かに「最近うれしかったこと」「達成できたこと」を話してもらい、一緒に共感・祝福する。
  2. 視点を変える:最近の嫌な出来事を思い出し、それによって得られたポジティブな結果を3つ書き出す。
  3. 親切をする:その日会う5人に、何か1つでも気遣いや善意を示す方法を考える。
  4. 価値観を意識する:自分の大切にしている価値観を選び、それが日常生活でどう現れているかを書き出す。
  5. 感謝リストを作る:日々の中で「ありがたい」と感じた人や物事を8つ挙げる。
  6. 畏敬の念を味わう:雄大な自然や芸術などの映像を見て、それについて感じたことを記録する。
  7. 善意の源になる:自分が世界にどう貢献できるかについて考える。

 

いずれもポジティブ心理学の基本みたいな介入で、すぐにできるものばかりなのが非常に良いですね。特に「他人の喜びを一緒に祝う」とか「感謝リスト」あたりは幸福度を上げやすいとされてまして、いかにも良さそうな感じがしますなぁ。

 

では、結果を見てみましょう。上のデータを分析したところ、以下のような傾向が見られました(Cohen's dz)。

 

  • 感情的ウェルビーイング 0.48
  • ポジティブ感情 0.45
  • 幸福の自己効力感 0.44
  • ストレス低下 -0.35
  • 健康の自己評価 0.07
  • 睡眠の質 0.15

 

ご覧の通り、全体的な幸福感やポジティブ感情が中程度〜大きめぐらいの効果量で増加してまして、「これは使えるなー」って印象があるわけです。さらに、データでは「喜びのマイクロ行動」によってストレスの軽減や健康・睡眠の質の改善といった効果も確認されてまして、これもうれしい効果っすね。

 

ここで注目すべきは、上記の効果が、たった1日10分を7日という超簡単な介入で得られたってところでしょう。従来のウェルビーイング系のプログラムだと、たとえば12週間・30時間以上かけるようなものが普通だったんで、それなら「喜びのマイクロ行動」から手をつけるほうが良さそうな気がするわけです。

 

で、この研究でもうひとつ面白かったのが、「誰が一番効果を得たか?」の分析であります。その結果をざっくりまとめると、

 

  • 「社会的に恵まれていない人ほど、幸福感の上昇幅が大きかった」

 

って感じでして、これもなかなか示唆的でありました。もうちょい詳しく言うと、

 

  • 教育レベルが低い(高卒以下)の人は、大学院卒よりも幸福度の上昇幅が大きい
  • 経済的ストレスが強い人は、ストレス軽減効果が大きい
  • 主観的な社会的地位が低い人も、幸福感・睡眠の質ともに大きく改善した

 

みたいになります。おそらくこれは、もともとのベースライン(初期の幸福感や健康状態)が低かったぶん、変化の幅も大きくなったってことなんでしょうなぁ。言い換えれば、本当に必要としている人にほど効果があったってことなんで、これもまた非常に価値のある発見じゃないかと。

 

もちろん、この研究は1週間しかやってないんで、効果が持続するかどうかはまだよくわかっておりません。そこらへんは要注意ですが、1週間の体験が「新しい習慣のきっかけ」になる可能性はあるんで、やはり注目すべき研究だと申せましょう。

 

ということで、この研究をもう一度整理しておくと、

 

  • 誰でも・いつでもできる「超シンプルな行動」を、たった1日10分×7日間実践するだけでも、幸福感やポジティブ感情は明らかに向上する

  • ついでに、ストレス、睡眠の質、健康感といった健康関連の指標も改善する
  • 介入の効果は、経済的・社会的に恵まれない人ほど効果が大きかった

 

みたいになります。「ストレスを減らしたい!」と思ったときに、「とりあえず3日間だけ、感謝リストを作ってみる」「誰かの喜びに本気で耳を傾けてみる」みたいに、上記の「喜びのマイクロ行動」の7つのカテゴリに沿ったアクションをこなしてみると、良いかもしれませんな。 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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