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炭水化物を食べるほど早死にする!ってランセット論文はどこまで正しいの?

Lancet

高炭水化物で早死にする? 
炭水化物は体に悪いの?問題に関するご質問をいただきました。

「炭水化物をたくさん食べるほど死亡リスクが高まる」という研究が出ていました(1)。炭水化物を取る人を調べたら、総死亡率が高くなるんだそうです。パレオさんは炭水化物に寛大だったかと思いますが、この研究についてはどう考えられますでしょうか?興味があります!

とのこと。炭水化物が嫌いな人には、かなり有利なデータが出てきたイメージでしょうか。



これぞ糖質が悪の証拠!と言いますが…
ご質問者さんがおっしゃる論文はランセットに掲載されたもので、8月末ぐらいに出たものです。実は私も出版の直後に目を通してまして、糖質制限を推奨する某お医者さんのブログで「これぞ糖質が悪の証拠!」みたいなノリで取り上げられていたのも知っておりました。


では、なぜ当ブログではこの論文をスルーしたかというと、内容がアレだったからです(笑)。具体的に、どのようにアレだったかを以下に説明していきますね。


低炭水化物&高脂肪こそ健康の鍵か?
これは、世界18カ国からおよそ135,000人のデータを集めた研究で、全員の食事と病気の発症率を平均7年半にわたって追跡調査したものです。これらのデータを分析したところ、

  • 野菜、フルーツ、豆類を1日3食分(1日375〜500gぐらい)食べる人は、全死亡率のリスクが低くなる

  • 総摂取カロリーのうち炭水化物が占める割合が増えるほど総死亡リスクが増え、脂質の割合が増えると総死亡リスクは減る

 って結果だったんですよ。つまり、これだけ見ると、低炭水化物&高脂肪こそ健康の鍵だ!と思ってもしかたないわけですな。


データ上のおかしな点
ただ、ここで疑問に思った方もいるんじゃないでしょうか。「あれ?野菜とかフルーツとか豆類って糖質が豊富じゃないの?」という。


当然ながら、野菜といってもホウレン草みたいに低糖質なものばかりじゃありませんで、イモ類のように高糖質なもののデータもふくんでおります。フルーツやに関しては言わずもがなで、バナナやらリンゴやらも入ってるわけですからね。


にも関わらず、野菜やフルーツって分類で見ると総死亡率が下がって、三大栄養素のバランスって方向から見ると総死亡率が上がるってのはどういうことなんだ、と。いかにも観察研究にはありがちな事態になっております。


高炭水化物食なのは貧しい国ばかり
が、ここでさらに細かくデータを見てみると、また別の可能性が浮かび上がってきたりします。というのも高炭水化物食で死亡率が高い人って、ほとんどがジンバブエ、バングラディシュ、パキスタンといった貧しい国の人々ばかりなんですよ。こういった国では、おもに白米や小麦粉類の消費量がやたら高くて、そのぶんだけタンパク質と脂質の量はかなり低めだったりします。


つまり、この研究ではカロリーの質って観点はまったく無視していて、栄養が豊富なサツマイモだろうが、ほぼ糖質メインの小麦粉だろうが、同じ糖質として扱ってるんですよ。その点で、データの結果に食い違いがでるんじゃないの?ってのが1点め。


というと、「いや、この研究はちゃんと影響を与えそうな要素は調整されている」といった反論もありましょう。確かにここでは国ごとの所得水準や教育レベルなどはコントロールしたうえで分析してるんですけど、ひとつ「近代医療へのアクセス」って要素は触れられてないんですよねぇ。


貧しい国は栄養不足で早死にしやすい、という当たり前の結論
つまり何が言いたいかというと、

  • この論文でいう「高炭水化物で死亡リスク増!」って、要は「栄養状態が悪いと早死にするよ!」と同じじゃない?(実際、炭水化物の割合が多い人たちは、そもそも総カロリー摂取量が少ない傾向がある)
  • ついでに貧しい国は医療へのアクセスが悪いから総死亡率が上がってるんじゃない?
  • 「高脂肪食は体にいい!」ってのは、つまり高タンパク&高脂肪食を食えるような国は豊かだから総死亡率が下がってるだけでは?(高脂肪食の国は例外なくタンパク質の摂取量も多い)

みたいなことです。というわけで、この研究から何がわかるかと言いますと、

  • 貧しい国は食料が少ないうえにほとんど栄養が摂れてないため、裕福な国より死亡率が高い

ってことです。「普通の結論じゃないか!」と思われるかもですが、こういった常識をちゃんと確認してくのも大事ですからねぇ。


そんなわけで、個人的にはこのデータから「糖質は悪!脂肪は善!」みたいな結論を引き出すのはヤバいよなーと思っております。ご参考になれば幸いです。

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