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今週の小ネタ:「たった15分のストレス」で腸が死ぬ、たった3分の「呼吸法」でメンタル復活、「ごめんなさい」を“ちょっと長く”言う


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

「たった15分のストレス」で腸が死ぬかも

「ストレスが腸に悪い」なんて話は昔からよく聞きますが、“ほんの一瞬のストレス”でさえ、腸と脳の守りを弱めてしまうかも?みたいな研究(R)が出ておりました。マウスを使った実験なので、ヒトにも同じような現象が起きるかは謎ですが、ある程度の参考にはなりましょう。

 

この実験がどういうものだったかと言いますと、

 

  1. 普通のマウス
  2. 無菌マウス(腸内細菌なし)
  3. 腸内細菌をあとから移植したマウス

 

って3グループのマウスを用意し、それぞれに15分間の拘束ストレスを与えた上で、腸内の変化を調べたんだそうな。

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • ストレスを受けたマウスは、酪酸と酢酸のレベルが急激に減少。しかも、その変化はストレス後45分以内という速さで現れた。

 

  • これに加えて、ストレスを受けたマウスは、食物繊維や糖を分解したときに生じる“善玉”の微生物代謝産物も減っていたそうで、「腸内細菌が健康成分を生み出すライン自体が一気に落ち込む」という、いわば工場ストップ状態になった。

 

って感じだったそうで。どうやら思ったよりも速いスピードで、腸内細菌にはダメージが出るんじゃないかって話になっております。怖いですねぇ。

 

で、ここでもうひとつ大事なのが、腸や脳を外敵から守る「バリア機能」であります。研究チームは、腸・脳の細胞バリアのモデル(バリア細胞をプレート上で育てたもの)を使って、この機能の守りを固くするにはどうすればいいのかもチェックしてまして、

 

  • 酪酸や酢酸をあらかじめ加えておくと、腸のバリアの破壊が明らかに抑えられた
  • 特定の濃度の酢酸は逆にバリアを弱めることもあった(このへんは要注意)

 

みたいな結果になってます。要するに、腸と脳のガードを固めておくためには、腸内細菌が生み出す“善玉産物”を増やすのが有効なのに、ストレスでこの善玉成分が減っちゃうってことです。

 

なぜそんなにストレスのせいで急激に短鎖脂肪酸が減るのか?ってのが気になるところですが、これについては、

 

  1. ストレスで食物繊維や糖の分解が滞る
  2. 腸内細菌の活動が“省エネモード”や別方向に切り替わる
  3. 腸の細胞側が善玉成分を“過剰吸収”してしまう

 

みたいなメカニズムが考えられておりました。腸内の微生物工場全体が、ストレスによって「緊急事態」に切り替わるようなイメージっすね。これが「たった15分のストレス」で起きてしまうんだから、なかなかすごいもんですな。

 

研究チームは「慢性的なストレスでこの変化が繰り返されると、腸や脳のバリア機能はもっと大きく損なわれるかもしれない」と言ってますんで、くれぐれもご注意くださいませ。

 

 

 

たった3分の「呼吸法」で感情コントロール力が一気に上がる

「呼吸はメンタルのコントロールに効く!」って話をずっと書いてますけど、新しい研究(R)もまた、3分の「ボックスブリージングでネガティブ感情が激減だ!」って結論になってて良かったです。

 

「ボックスブリージング」も、このブログではおなじみのテクニックでして、

 

  1. 4秒吸う
  2. 3秒止める
  3. 4秒吐く
  4. 3秒止める

 

という流れを、たった3分間繰り返すだけの呼吸法です。シンプルでよいですよね。

 

実験では、この呼吸法をやった直後に、不快な写真(事故や暴力など)を参加者に見せたところ、

 

  • 感情のネガティブ度が明らかに下がった
  • イライラや不安感も低減
  • さらに「自分の感情をコントロールできている感覚(自己効力感)」もアップ

 

といった、良い効果がめっちゃ認められたんだそうな。なんでも、ボックスブリージングのような「ゆっくりとした呼吸」は、副交感神経(リラックス担当)を活性化してくれるので、自律神経のバランスを一気に整えてくれる効果があるんだそうな。これは手軽でよいですなぁ。

 

さらに、今回の実験がユニークだったのは、単に「気持ちが落ち着いたか?」だけでなく、「自分の感情をコントロールするテクニック(認知リフレーミング)」をどれだけ上手に使えるかまで調べていた点です。具体的には、

 

  1. 感情を「強める」指示:自分や大切な人が被害に遭ったと想像するなどして、感情をあえて増幅する

  2. 感情を「抑える」指示:これはフェイクだと考えたり、何か無関係なことを考えたりして、感情を弱める

  3. 「そのまま感じる」指示:何もせず、自然に受け取る

 

という3パターンを、ボックスブリージングをした直後と、何もしなかった場合で比べてるんですよ。その結果、

 

  • 呼吸をしてからだと、どの指示も「うまくできた」と感じやすくなった
  • 特に「感情を抑える」の自己評価が大きく向上していた

 

という現象が見られたんだそうな。要するに、ボックスブリージングによって、感情のコントロールがさらに上手く働くようになったってことですな。呼吸法を先にやっておくことで不安や恐れが和らぎ、どんな人でも「しっかり自分の気持ちと向き合う」力が引き出されるってことらしい。

 

たった3分の「ボックスブリージング」で、脳と体を“感情に強いモード”へリセットできるんなら、やらない手はないでしょう。気分が落ち込んだ時や、ちょっとしたイライラが止まらない時は、とりあえず試してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

「ごめんなさい」を“ちょっと長く”言うだけで、相手の心に響きやすくなる

「謝るときは、ちょっと長い単語を使え!」という面白い研究(R)が出ておりました。

 

この研究は、SNS上で実際に使われた50件の謝罪文(有名人と一般人半々)をピックアップし、それらと謝罪以外の投稿を比較したもの。これでどんな結果が出たかと言いますと、

 

  • 謝罪文のほうが「1単語あたり平均1文字だけ長い」

 

って感じだったんだそうな。また、謝罪の文章そのものも、非謝罪の投稿より“全体的に長くなる”傾向があったそうで、とにかく謝罪は長いほうがよいらしい。

 

「そんな微妙な長さの違いで謝罪の効果が変わるの?」と思うかもしれませんが、研究チームいわく、ここには“努力のシグナル”が隠れているんだそうな。要するに、長い単語や言い回しを使うには、ちょっとした知的労力や手間がかかるから、そのぶんだけ相手が「こいつはがんばった!」と思ってくれるってことですな。

 

さらに、別の実験では、イギリス在住の49人を対象に、同じ意味の謝罪文を「短くて一般的な単語」「短いけど珍しい単語」「長くて珍しい単語」の3パターンで読んでもらい、「どれが一番“謝ってる”感じがするか?」を評価してもらってます。こちらも結果は明快で、

 

  • “長い単語”を使った謝罪のほうが、「ちゃんと謝ってる」と思われやすい

 

って感じだったというんですな。なお、この結果では、単語の「珍しさ(普段使わない単語かどうか)」は、ほとんど謝罪の効果に影響がなかったそうで、とにかく「言葉の長さ」がポイントだったらしい。たとえば、英語で「I’m sorry」よりも「I’m enormously sorry」や「I’m deeply apologetic」と言ったほうが、謝罪の気持ちがグッと伝わるんだそうで、面白いもんですな。

 

これを日本語に応用するのであれば、ただ「すみません」だけではなく、「本当に申し訳ありませんでした」や「心よりお詫び申し上げます」といった“長め”の表現にすると、相手に伝わる誠意がワンランク上がるのかもしれませんなぁ。というわけで、皆さんが今度うっかりやらかしてしまったときは、「謝罪の言葉をちょっと長めにする」ってのを意識してみると良いかもしれませんな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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