30年の追跡で判明した「健康的な老化」を叶える「最強の食事パターン」とは?
「長生きしたい!」と思っている方は多いと思いますが、実際のところ、ただ年を重ねるだけでは意味がないと感じる人も少なくないはず。ただ年を取っただけで「自分の足で歩けて、自分の頭で考えて、自分の口で食べられる」って機能が低下したら切ないですからねぇ。なので、いわゆる“健康的な老化(Healthy Aging)”こそが、私たちが本当に目指すべきゴールなのだと言えるわけですな。
では、いったい何をすれば「健康的に年を取る」ことができるのか?ってことで、この問いにヒントをくれる良い研究(R)が出ていたので、中身をがっつりチェックしておきましょう。
105,000人を最長30年間追跡したビッグデータの話
この研究は、アメリカの2大コホート研究(ナース・ヘルススタディとヘルス・プロフェッショナル・フォローアップスタディ)のメタ分析で、対象者数は10万5,015人と、かなり大規模なものになっております。参加者は女性看護師と男性医療従事者で、平均して30年という超長期にわたって「何をどれだけ食べてきたか」「健康状態はどうか」などを細かく記録した、有名なデータセットなんですな。
その結果をもとに、ここでは食事パターンを以下の8つに分類した上で、「健康的な老化」との関係を分析しております。
分析された8つの食事パターン
- AHEI(オルタナティブ健康食指標):トランス脂肪や砂糖が少なく、果物・野菜・全粒穀物が豊富な食事
- aMED(地中海食):魚、オリーブオイル、ワインが多めで、肉は控えめ
- DASH(高血圧予防ダイエット):ナトリウム(塩分)制限が特徴
- MIND(神経変性予防ダイエット):地中海食+DASHに、ベリーや葉野菜を強調
- hPDI(健康的植物性食品インデックス):植物ベースの食品中心
- PHDI(地球にやさしいダイエット):環境負荷が低い食品を優先
- rEDIP(逆・炎症誘導パターン):炎症を引き起こしにくい食事
- rEDIH(逆・高インスリン誘導パターン):インスリン分泌を刺激しにくい食品にフォーカス
それぞれの食事にどんな食品がふくまれているかと言いますと、ざっくり以下の表のようになります。
- 🟩 緑(Positive):摂取量が多いと「健康的老化」の確率が高まる
- 🟥 赤(Negative):摂取量が多いと「健康的老化」の確率が下がる
- ⬜ グレー(Neutral):中程度の摂取が最適、または中立
食品カテゴリ | AHEI | aMED | DASH | MIND | hPDI | PHDI | rEDIP | rEDIH |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
果物 | ||||||||
ベリー | ||||||||
トマト | ||||||||
葉物野菜 | ||||||||
他の野菜 | ||||||||
全粒穀物 | ||||||||
精製穀物 | ||||||||
ナッツ | ||||||||
豆類 | ||||||||
赤身・加工肉 | ||||||||
鶏肉 | ||||||||
卵 | ||||||||
魚介類 | ||||||||
スイーツ・デザート | ||||||||
フライドポテト | ||||||||
スナック菓子 | ||||||||
ピザ | ||||||||
バター | ||||||||
マーガリン | ||||||||
クリームスープ | ||||||||
オリーブオイル | ||||||||
清涼飲料・果汁 | ||||||||
ワイン | ||||||||
コーヒー | ||||||||
お茶 | ||||||||
高脂肪乳製品 | ||||||||
オメガ3脂肪酸 | ||||||||
多価不飽和脂肪酸 | ||||||||
トランス脂肪 | ||||||||
ナトリウム(塩分) |
「ちゃんと食べてる人」は、歳を取っても元気だった
そして、上記の食事パターンを実践しているレベルと「健康的な老化」の関連を見たところ、結果はこんな感じになりました。
- AHEI(+86%)
- rEDIH(+80%)
- aMED(+70%)
- DASH(+69%)
- PHDI(+68%)
- MIND(+60%)
- rEDIP(+58%)
- hPDI(+45%)
と、すべての食事パターンで「健康的な老化」の確率が有意に上昇してたんだそうな。特にトップのAHEI(オルタナティブ健康食指標)にいたっては、健康老化の確率が約1.86倍ってことなんで地味にすごいっすね。
一方で、当たり前ですが、超加工食品(スナック、清涼飲料水、レトルトなど)を多くとっていた人は、32%も健康的な老化の確率がダウンしてまして、やはり“加工度”の高さは敵ってことになるんでしょうな。
さらに、「どの食品を食べるとより健康的に老けられるのか?」って問題については、以下の表を参照してくださいませ。まあ、割と常識的な内容になってますが、普段の食事を組み立てる際の参考にはなるんじゃないでしょうか。
食品カテゴリ | 健康的老化との関連 | 方向性 |
---|---|---|
全粒穀物 | + 最も強い正の関連 | ↑(良い) |
フルーツ | + 強い正の関連 | ↑ |
ナッツ | + 強い正の関連 | ↑ |
多価不飽和脂肪酸 | + 正の関連 | ↑ |
植物油 | + 正の関連 | ↑ |
魚介類 | + 正の関連 | ↑ |
葉物野菜 | + 正の関連 | ↑ |
オリーブオイル | + 正の関連 | ↑ |
コーヒー | + 正の関連 | ↑ |
全体的な果物と野菜 | + 正の関連 | ↑ |
ベリー | + 正の関連 | ↑ |
緑茶・紅茶 | + 正の関連 | ↑ |
ワイン | + 中程度の正の関連 | ↑ |
豆類 | + 中程度の正の関連 | ↑ |
オメガ3系脂肪酸 | + 中程度の正の関連 | ↑ |
食物繊維 | + 中程度の正の関連 | ↑ |
低脂肪乳製品 | + やや正の関連 | ↑ |
高脂肪乳製品 | ± 中立または軽度 | ↔ |
トランス脂肪酸 | − 最も強い負の関連 | ↓(悪い) |
赤身肉・加工肉 | − 強い負の関連 | ↓ |
フライドポテト | − 強い負の関連 | ↓ |
バター | − 強い負の関連 | ↓ |
マーガリン | − 強い負の関連 | ↓ |
クリームスープ | − 強い負の関連 | ↓ |
清涼飲料水 | − 負の関連 | ↓ |
菓子・デザート | − 負の関連 | ↓ |
ピザ | − 負の関連 | ↓ |
スナック菓子 | − 負の関連 | ↓ |
ファストフード | − 負の関連 | ↓ |
精製穀物 | − 負の関連 | ↓ |
赤身肉単体 | − やや負の関連 | ↓ |
卵 | − やや負の関連 | ↓ |
動物性脂肪 | − やや負の関連 | ↓ |
砂糖・加糖果汁 | − やや負の関連 | ↓ |
ナトリウム(塩分) | − やや負の関連 | ↓ |
「どんなものを食べるか」が寿命よりも生活の質を左右する
個人的にこの研究が面白かったのは、「単なる寿命」ではなく「老後の生活の質」にフォーカスしているところです。つまり、「どうすればピンピンコロリで人生を終えられるか?」って視点で問題の答えをチェックしたわけですね。しかも、研究では「慢性疾患の有無」「認知機能」「身体機能」「精神状態」など、かなり多角的に老化の質を評価しているので、信頼度も高めだと思っております。
じゃあ、具体的に「何を食べればいいの?」ってことですが、健康的に老けるための食事の共通点をざっくり整理すると、以下のようになります。
- 体に良いとされた食材
- 果物(特にベリー類)
- 野菜(葉物野菜が特に良し)
- 全粒穀物(オートミール、玄米など)
- ナッツ類(アーモンド、クルミなど)
- オリーブオイルなどの不飽和脂肪
- レンズ豆やひよこ豆などの豆類
- 魚(特に青魚)
- 体に悪いとされた食材
- 加工肉(ソーセージ、ベーコンなど)
- 赤身肉(特に多量摂取はNG)
- トランス脂肪(マーガリン、加工菓子など)
- 飽和脂肪(バター、ラードなど)
- 精製された穀物(白米、白パン)
- 清涼飲料水、甘いジュース
- フライドポテト、スナック菓子
要は、「昔ながらの和食にナッツとオリーブオイルを足したような食生活」が健康老化には最強ってことになるでしょうな(もちろん、日本人の食事に適しているのかはよくわからんですが)。
このような結果が出るのも当然で、だいたい以下のようなメカニズムが働くからです。
- 炎症と酸化ストレスの抑制: ポリフェノールや食物繊維が、体の老化を加速する炎症と酸化ストレスを軽減。
- 代謝の改善: 植物性食品は血糖コントロールや脂質代謝を改善し、糖尿病や動脈硬化のリスクを下げてくれる。
- 体重管理: 低カロリー密度で満腹感が得られるため、自然と体重が安定しやすい。
つまり、「植物を中心にちゃんと食べるだけ」で、老化のスピードをゆっくりにできるって話っすね。「ファスティングがどう」「ケトジェニックがどう」と、いろんな食事法がもてはやされますが、最終的に重要なのは「長期的に続けられて、ちゃんと栄養が取れること」でありましょう。そして、それがかなうのは、やっぱり“地味で普通に健康的な食生活”なんでしょうな。どうぞよしなに。