今週半ばの小ネタ:自尊心が低い問題の解決策、映画「ジョーカー」と偏見
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
自尊心が低い人は友人の質を高めよう!みたいな研究の話
「内気で自尊心が低い人は、とりあえず親友か恋人を持て!」ってなデータ(R)が出ておりました。
これはアリゾナ州立大学の調査で、519人の大学生を集めて、
- どんな人間関係を持っているか?
- 自尊心のレベルはどれぐらいか?
- 他人との交流は好きか?
みたいなポイントを調べて、すべてのデータをまとめてみたら、こんなことがわかりました。
- もっとも自尊心の低下を引き起こしやすいのは、「恥ずかしさの感情」と「人間関係の回避」の2つだった
- ただし、友人や恋人と質の高い関係を持っていれば、内気による自尊心の低下は防げる
- が、人間関係について回避的な人(そもそも他人との交流を好まない人)は、質の高い人間関係による良い影響が得られにくかった
友人の重要性については「最高の体調」でもめちゃくちゃ強調しましたけど、どうやら内気さにともなう心理的ダメージのバッファにもなってくれるみたいっすね。これはよくわかるなぁ。
研究チームいわく、
親友や恋人と質の高い関係を築いている人は、質の低い関係を築いている人に比べて、自尊心が高い傾向がある。しかし、この傾向は回避的な人には当てはまらないようだ。
とのこと。回避的な人にはやや厳しい結論ながら、自尊心の低さにお悩みの方は心がけけておきたいポイントですねー。
映画「ジョーカー」で精神病への偏見が増すかも?
2019年公開の 「ジョーカー」はホアキンさんの演技が最高な作品でしたが、「この映画を見ると精神病への偏見が増すかもしれないから注意してね!」と注意喚起するデータ(R)が出ておりました。
研究チームの問題意識がどんなモンだったかというと、
ニュースの記事であれフィクションの描写であれ、ほとんどの人はメディアを通して精神病について学ぶ。しかし、一方でこれらの描写の多くは有害なようにも思える。その点で、映画「ジョーカー」 はフィクショナルな描写の影響を調べる絶好のサンプルだった。
とのこと。メディアにおける精神病の描写は極端なので、受け手の理解によくない影響を与えるのではないか、と。
ってことでチームは164人の男女を集めた上で、
- 「ターミネーター:ニュー・フェイト」を見る
- 「ジョーカー」を見る
のどちらかに無作為に割り当て、その前後でみんなが精神疾患を持つ人々に偏見を持っていないかどうかをチェックしたそうな。具体的には、参加者に「精神疾患の人のそばにいると不安になる」や「精神病患者の行動は予測不可能である」みたいな発言にどれぐらい賛成するかを調べたらしい。
で、結論はこんな感じです。
- 年齢、性別、精神疾患の病歴などを調整しても、 「ジョーカー」 を見た人は精神疾患を持つ人への偏見が増加していた
やっぱチームの予想どおり、フィクションの極端な描写は偏見を助長する側面があるかもしれないわけっすね。この影響が長期にわたって続くかはわからんですし、だからと言って 「ジョーカー」みたいな映画が悪いとも思わんのですが、このタイプの作品に触れたあとは「もしかして偏見が埋め込まれたかも?」と意識しとくと良さそうではありますね。