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今週半ばの小ネタ:記憶力が上がるメンタリティ? 脳の衰えを防ぐフルーツがある? 好きな人を前にすると視線が変わる?

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

記憶力を上げたきゃ人生の目的意識を持つといいかもだぞ

フロリダ州立大学などの研究(R)が、「記憶力をあげたきゃ目的意識を持つのだ!」などと報告しておられました。

 

 

これは約800名のアメリカ人男女を対象にしたテストで、2020年1月から2月にかけて行われたもの。

 

  1. みんなに「人生に目的意識を持ってますかー?」と尋ねる

  2. 認知処理のスピードを測定するテストをやってもらう

  3. 数ヶ月後に、コロナのパンデミックに関する記憶を説明してもら、みんなの自伝的な記憶力を測定

 

って手順を使って、目的意識と記憶力の質との関係性をチェックしたんだそうな。なんでこういった試験をしたのかと言いますと、

 

 

個人の記憶は、私たちが目標を設定したり、感情をコントロールしたり、他人と親密な関係を築いたりするのに役立つ。と同時に、目的意識が高い人は、単語のリストを覚えるなど、客観的な記憶テストでも良い結果を出すことがわかっている。

 

そこで私たちは、目的意識が重要な個人的経験の記憶の質とも関連しているかどうかに興味を持った。個人的な記憶の質が、目的意識によるメンタルや健康のメリットに関係しているかもしれないからだ。

 

 

とのこと。もともと目的意識が高い人は心と体も健全なことが多いんだけど、これは記憶力の質が高いからではないか?と研究チームは考えたわけですね。

 

 

で、テストの結果はチームの予想どおりで、

 

  • 人生の目的意識が強い参加者は、目的意識が低い参加者に比べて、記憶を思い出す確率が高く、記憶の内容にもまとまりがあり、記憶のイメージも鮮明なケースが多かった

  • 目的意識の高い参加者は、過去の記憶の感覚的なディテールを多く報告し、一人称視点で記憶を語ることが多く、肯定的な感情を多くより多く報告。否定的な感情の報告は少なかった

 

  • 抑鬱症状は、記憶のディテールを鮮明に思い出す能力にほとんど影響しない(つまり、人生の目的がある人ほど記憶力がいいのは、目的意識が高い人に抑鬱症状が少ないからではないからだと思われる)

 

だったそうな。ここらへんの結果を見てると、「やっぱヒトの幸福に記憶力って大事なんだなー」って印象が強くなるわけです。まぁ過去の記憶が明確でないと自分の人生を豊かに振り返れないし、他人とのコミュニケーションもうまくいかないでしょうからね。

 

 

ってことで、記憶力を衰えないためにも人生の目的意識を強くしたほうがいいかもよ?ってお話でした。個人的には人生の目的がまったくない人間なので、どうしたもんかなーとか思いますが。

 

 

 

このフルーツで脳の衰えが防げる……かも………

「フィセチンで脳の衰えを予防できるかもよー」みたいなデータ(R)が出ておりました。フィセチンはイチゴやリンゴにふくまれる天然化合物で、昔から酸化ダメージを防ぐパワーが強いと言われて、すでにいくつかサプリも出てますね。タマネギ、キュウリ、柿など、他の多くの植物にもふくまれてる定番のフラボノイドっすね。

 

 

しかし、研究チームいわく、

 

企業はフィセチンをさまざまな健康食品に配合しているが、この成分の本格的な試験は十分に行われていない。

 

とのこと。このラボが行った過去の研究では、フィセチンが歳を取って記憶が衰える現象を軽くするんじゃないかなーぐらいの結果は出てるんですけど、まだまだちゃんとした結論は出せない段階なんだ、と。

 

 

ってことで研究チームは、アルツハイマー病にかかりやすいように遺伝子組み換えされたマウスを用意し、みんなにフィセチンが入った餌を7ヶ月間ほど与えて、普通の食事をしたグループと比較したんだそうな。すると、その結果は顕著で、10ヵ月後のテストでは、フィセチンを与えられたマウスたちは、歳を取っても脳の衰えがほとんど見られなかったらしい。

 

 

あくまでマウス実験につき「みんなでフィセチンサプリを飲もう!」ってわけじゃないものの、チームはこんなふうにコメントしておられます。

 

もちろんマウスは人間ではない。しかし十分な類似性はあるため、フィセチンは、孤発性AD(加齢で発症するアルツハイマー)の治療だけでなく、一般的な加齢にともなう認知機能への悪影響を軽らす可能性があると考える。

 

まぁ現時点では「ちょっとフィセチンに注目しとくかー」ってぐらいの態度で臨むのが良さそうですが、とりあえずリンゴやタマネギをさらに消費するモチベーションにはなりますね。

 

 

 

好意を持った相手には、私たちの視線が変わるのではないか説

『この人と付き合いたい!』と思った人間は、視線の動きが変わるかもしれないよー」みたいな話(R)が出ておりました。

 

 

こちらはウェルズリー大学などの研究で、105人のヘテロな男女を集めて、みんなに見知らぬ人の写真を見てもらい、同時に全員の目の動きを追跡したんだそうな。さらに、その際にみんなに「この人と付き合いたいですか?それとも友達ぐらいでいい?」と尋ねたところ、

 

  • 男女ともに、「付き合いたい!」と思った人の頭や胸をより多く見がち
  • 「友人になりたいなー」と考えているときには、相手の足や脚をより多く見がち
  • 足、腰、お尻、胸などの体の中心への視線が多い人は、恋愛と友情の両方に関心がありがち

 

という傾向があったそうな。本人が思う交際の可能性によって、相手のどこに視線をやるかが変わるのではないか、と。

 

 

研究チームいわく、

 

人間は、自分の人生において他人に何を求めているかによって、他者の情報を異なる方法でスキャンするのかもしれない。

 

とのこと。ここらへんは文化差がありそうなんで、日本人にそのまま当てはまらなそうな気もしますけど、おもしろいもんですな。

 

 

もっとも、この結果をもとに「この人は自分に気がある!」といった判断を行うのは割と難しそうでして、というのも、

 

  • 一般に女性は相手の頭部をより多く見る傾向が多い

  • 男性の場合は胸と腰-ヒップの部分を最もよく見る傾向が多い

 

って男女差も報告されてるんですよね。ここらへんを合わせて考えますと、「そもそも相手は普段から他人のどこに目をやりがちなのか?そして、その相手をどのようにジャッジしてるか?」って情報を集めないことには、どうにもならなそうな気はいたします。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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