このブログを検索

電子レンジで微生物が?発がん性物質が?問題 リターンズ

 
 

その昔、「電子レンジは体にいいのか悪いのか問題」みたいな話を書いたことがありました。簡単に言えば、

 

  • 電磁波の問題は全く気にしなくてOK!
  • 栄養素が壊れるんじゃないか問題も気にしなくてOK!

 

といった内容でして、目立ったデメリットってないよなーみたいな話です。

 

 

ただし、あのエントリで触れなかったポイントもいくつかありまして、

 

  • 電子レンジって熱の加わり方がバラバラだから、悪い微生物が繁殖しやすくなるのでは?
  • 電子レンジで料理するとアクリルアミドができてしまうのでは?

 

みたいなこともたまに言われるんですよ。そこで今回は、前回のエントリのフォローアップ版として、そのあたりの問題について見てみましょう。

 

 

レンジは微生物が繁殖しやすいのでは?問題

まず、「レンジで微生物が繁殖する?」問題ですが、これは食品を温めた際に熱が加わりにくい部分ができてしまい、そのせいで病原菌が繁殖するんじゃないかって考え方です。

 

 

これについては、過去にカリフォルニアの公衆衛生局が試験(R)を行ったことがありまして、ミートローフにさまざまな病原菌(大腸菌とかウエルシュ菌とか)を練り込んだうえで、電子レンジ、普通のオーブン、スロークッカーという3つの器具で調理したあとの効果を比べてくれてます。従来の調理器具と比べて、代表的な病原菌の繁殖レベルに違いがあるかどうかを見たわけですね。

 

 

その結果は明白で、「細菌を殺す能力は、どの方法でも大きな違いはなし!」だったそうな。電子レンジに加熱のばらつきがあるのは間違いないんだけど、どの方法でも同じぐらい病原菌は減ったらしい。この結果は以降も何度か再現されてまして、まぁ問題ないと考えていいんじゃないでしょうか。

 

 

 

レンジで発癌物質が増えやすくなる?問題

でもって、もうひとつが「レンジでアクリルアミドができるのでは?」問題です。アクリルアミドは発癌性や神経毒性が噂される有機化合物で、こちらはわりと最近になって出てきた心配ポイントかと思います。

 

 

このポイントについては、2020年にヴァルミア・. マズールィ大学の先生方がレビュー(R)をしてくれていて、過去に行われた電子レンジとアクリルアミド生成に関する文献をまとめてくれてます。くわしくは本論をお読みいただければと思いますが、注目すべきポイントとしては、

 

  • 電子レンジを使って、220度ぐらいの高温で焼き物や揚げ物をすると、従来の調理法に比べてアクリルアミドの発生量は多くなる

 

といった感じです。電子レンジを高温調理に使った場合は、どうしてもアクリルアミドの量は増えやすくなっちゃうみたいなんすよね(このブログではそもそも高温調理は推奨してないですけど)。

 

 

ただし、低出力のマイクロ波で短時間だけ加熱する場合(つまり、弁当や惣菜の温め直しとか)は、他の調理・加熱方法に比べてアクリルアミドが過剰に発生する可能性は低いんで、 普通に使うだけならビビる必要はないと言えましょう。

 

 

その他、最近の知見とか

ちなみに、前回の話を書いて以降、「電子レンジで食品の栄養は減るのか?」ってポイントについて追試がいくつか出てますんで、合わせて見ておきましょう。

 

 

具体的には、コナグラ・フーズ が2020年に出したデータ(R)がありまして、この研究では、市販の冷凍ミックスミールを電子レンジで加熱した場合と、従来のオーブンで加熱した場合の栄養レベルの違いを比べてます。試験食には、パスタ、白身の鶏肉、ブロッコリー、ニンジンと赤ピーマンのミックス、アルフレッドソースが入っていたそうな。

 

 

でもって、こちらも調査結果を端的にまとめておくと、こんな感じです。

 

  • 電子レンジでも従来の方法で再加熱した場合でも、ビタミンA、葉酸は同じように減った

  • ビタミンCは電子レンジで加熱した方がより多く保持された(が、さほど騒ぐほどの違いでもない)

  • ナトリウム、カリウム、チアミン、リボフラビン、および総栄養素の含有量についても、大きな違いは見られなかった

  • マクロ栄養素の含有量にも加熱法による違いは見られなかった

 

ってことで、電子レンジを使っても他の方法より栄養が減りやすいわけではなく、どころかビタミンCのように熱に弱い栄養素は保たれやすくなるみたいっすね。この結果は過去の報告でも一貫してまして、「やっぱレンジって優秀な調理器具だよなー」って気になりますね。

 

 

まとめれば、「やはりレンジにはなんの問題もない!」ってことでして、従来の結論とは変わらないっすね。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM