【質問】運動とか二日酔いに、スポドリや経口補水液って本当に効くんですか?
こんなご質問をいただきました。
スポドリとか経口補水液みたいな、電解質が入った飲み物ってあるじゃないですか。こういうのって本当に意味があるんでしょうか? 運動によいとか二日酔いに効くとか言われますが。
とのことで、電解質系のドリンクには、どこまで意味があるのってご質問です。電解質ってのは体内でいろんな働きをする物質で、こいつが足りないと生命を維持しにくくなってしまう、重要な成分であります。
というと、オーエスワンとかアクエリアスのような電解質ドリンクを飲むのは良いことのように思えるわけですが、果たしてそれは事実なのかってのが、ご質問のポイントですね。
では、具体的に電解質ドリンクの効果を、簡単にまとめてみましょう。
運動への効果
まずは、運動をする際に電解質を補給する必要があるのかを見てみましょう。これについては、アメリカスポーツ医学会が良いレビュー(R)を書いてくださっているので、ここから重要なポイントをまとめておきます。
- 健康でバランスがとれた食事をしている人の場合、1時間ぐらいの運動であれば、回復のために必要なのは水だけで、電解質を補給するは必要ない。この結論は、水、ココナッツウォーター、スポーツドリンクを比較した研究で明らかになったものである。
- ただし激しい運動を長時間(90分以上)行ったときは、電解質(主にナトリウム)が汗で失われる可能性が高いので、電解質の補給が必要になることがある。長い運動をする場合は、薄着で透水性のある服のように、汗が蒸発しやすい服装をするとよい。そうすれば、発汗量が少なくなり、水分や電解質の損失が少なくなる。
- 運動の直前に大量の水や電解質飲料を飲むと、尿量が増えて電解質が失われる可能性があるので注意。運動の前は、通常の水分補給の状態で運動を開始するのがベストだと言える。
- 65歳以上の人は、喉の渇きに対する反応が鈍く、脱水になりやすいので注意が必要。特に、運動中や運動後の水分補給には注意が必要となる。ただし、腎臓からの余分な水分やナトリウムの排泄が遅いため、水の飲み過ぎ(低ナトリウム血症を引き起こす可能性がある)や塩分の摂り過ぎ(血圧を上昇させる可能性がある)には注意が必要。
二日酔いへの効果
続いて二日酔いの効果について。いまのところ、電解質ドリンクで酒の二日酔いが改善されるという証拠はゼロであります。電解質と二日酔いの研究ってほとんどないもので。
ただし、アルコールと電解質の関係については研究がいくつかありまして、たとえば、
- ビール好きの若い男性を対象にした研究(R)では、酒を飲んでもナトリウムの排泄には影響がなく、電解質の喪失は目立って起きなかった。
- 高齢の男性を調べた研究(R)では、強いアルコール飲料による尿量の増加は短時間であり、電解質への影響は見られなかった。
- 慢性的なアルコール依存症の人を調べた研究では、電解質のロスが確認され、一時的な電解質補給が必要だと報告されている(R)。
みたいな感じです。基本的には、普通に酒を飲んでいるだけでは電解質がガッツリ失われることはなさそうであります。「電解質ドリンクが二日酔い効く!」って考え方は、慢性的なアルコール乱用の研究にもとづいているケースが多いんじゃないでしょうか。もちろん、酒を飲むときは十分な水分補給が必要ですが、わざわざ電解質を補給する必要はないと思っております。
ということで、全体的に見れば、アルコール飲料による電解質への影響は少ないし、よほどハードな運動をしない限りは、電解質の補給は必要なさそうであります。私もめったに90分を超える運動はしないので、飲むとしてもトレイルランニングをするときぐらいかな……。
ちなみに、ここでは風邪のときの電解質補給については触れませんでしたが、下痢が起きているときなどは、大腸で吸収されるはずのナトリウム、塩化物、カリウムが失われちゃうので、経口補水液などが役に立つでしょう。ただし、そこまで汗が多くないときなどは、普通に水分の摂取量を増やすぐらいで良いかなーと思っております。どうぞよしなに。