【質問】筋トレはスクワットを中心にしたほうがテストステロンが増えまくるってホント?
こんなご質問をいただきました。
スクワットやデッドリフトのように大きな筋肉を鍛えるワークアウトは、テストステロンのレベルを上げてくれて、その結果、筋肉の成長スピードが上がるという話を聞きました。
これは本当ですか? 本当なら、スクワットやデッドリフトを中心にやったほうがよいのでしょうか?
確かに、大きい筋肉を刺激するほどテストステロンが出るって話はありまして、そのおかげで筋肉が増えるって主張も聞いたことがありますね。
で、この話が事実なら素晴らしいことですが、結論から言えば「そんなことはない!」って感じになるでしょうね。筋トレでテストステロンが増えるのは事実ですが、その増加量と期間は、筋肉の成長に影響を与えるにはあまりにも小さくて短いもんですから。
いくつか事例を挙げてみると、まず前提として、「スクワットでテストステロンが増える!」ってのは紛れもない事実であります。1990年代に米国陸軍の研究(R)でも、筋トレ後の男性はテストステロン値が上昇したうえに、成長ホルモンとIGF-1(筋肉の成長に役立つホルモン)も急上昇していたと報告されてますんで。
ただし、ここで問題なのは、テストステロンの増加により筋肉の成長速度にどれほどの違いが出るのか? というところでしょう。その答えを簡単に言うと、「あんま関係ない」ってのが正直なところです。
というのも、筋トレ後にホルモンが一時的に上昇したところで、
って報告が昔からめちゃくちゃあるんですよ。
なかでも有名なのは2011年の研究(R)で、56人の男性が3ヶ月の筋トレを行ったところ、以下のようなことがわかったというんですな。
- 筋トレによるテストステロンの上昇と筋肉量の増加の間には、有意な関連は見つからなかった。
- 筋肉のサイズが最も速く増えた人のホルモン反応は、筋肉があまり増えなかった人と変わらなかった。
ということで、どうやら運動後のテストステロンも安静時のテストステロンの量も、筋肉量の増加にそれほど影響を与えないようなんですな(少なくとも健康な若い男性では)。
それでは、なんで筋トレで筋肉が増えやすい人と増えにくい人がいるのかと言いますと、ある研究(R)によると、
- 数ヶ月の筋トレで最も筋肉がついたのは、テストステロンが多い人ではなくアンドロゲン受容体が多い人だった!
などと報告しております。アンドロゲン受容体ってのは、テストステロンなどのホルモンに反応し、筋肉の増加スピードを高める働きを持っております。結局のところ、大事なのはテストステロンよりも、その受け皿の量ではないのかってことですな。
ちなみに、一部では、上腕二頭筋のような小さな筋肉を大きな筋肉と一緒に鍛えれば、腕がより早く成長するという説もあったりします。小さな筋肉ってのは、単独で鍛えてもホルモンレベルが上昇しないので、たとえば、腕を鍛える前にデッドリフトやスクワットをやってテストステロンを増やすことで、上腕二頭筋や上腕三頭筋の成長が加速するんじゃないか?みたいな考え方です。
が、残念ながら、こちらの考え方も研究で指示されていなかったりします。一例として、2010年の研究(R)では、参加者に15週間の筋トレを指示したんですが、その際に、
- 右の上腕二頭筋だけをトレーニングする
- 左の上腕二頭筋をトレーニングし、その直後に脚のエクササイズを行ってテストステロンを上げる
って感じで、体内のホルモンレベルを操作した上で、筋肉の成長をチェックしたんだそうな。もしテストステロンが重要なら、脚と一緒にトレーニングした腕のほうがより早く成長するはずですからね。
しかし、実際はそうなりませんで、上腕二頭筋の成長はどちらもほぼ同じぐらい。低ホルモン条件では12%、高ホルモン条件では10%だったんだそうな。
研究チームいわく、
今回の実験結果は、筋トレによってホルモンが増えたところで、筋肉の同化には大きな影響はなく、また成長とも関係がないという証拠を提供する。
運動によって増えるホルモンの変化は、筋タンパク質の基礎的なプロセスを反映しておらず、筋肥大の代理マーカーとして使用できない。
とのこと。デッドリフトやスクワットでテストステロンや成長ホルモンが増えるのは間違いないものの、やはり筋肉の成長にはあまり効果がないってことですね。テストステロンのことは気にせず、好きなように筋トレをしていただければ幸いです!