【質問】副腎疲労を改善するためのいいサプリありますか?
こんなご質問をいただきました。
副腎疲労について、いいサプリありますか? 副腎皮質のサプリがソーン社にあったのですが、これはどう思いますか?
ってことで、副腎疲労によいサプリはあるのか?という疑問ですね。
で、この質問について結論から申し上げますと、
- 副腎疲労によいサプリはない!
みたいになります。その理由を、さらにもう少し詳しく説明すると、
- そもそも副腎疲労が存在しない!
みたいになります。なにせ副腎疲労って現象が医学的に認められていないので、副腎疲労によいサプリが存在するはずもないんですよ。
簡単におさらいしておくと、副腎ってのは腎臓の上にある2つの小さな腺で、コルチゾールとアルドステロンという大事なホルモンを産生しております。コルチゾールは血圧や免疫系を調整してエネルギーを与え、私たちが朝ベッドから起き上がるのを助ける役割も持ってたりします。一方、アルドステロンは血液中の塩分や血圧の調節に役立つホルモンっすね。
副腎疲労ってのは、この器官に問題が出てしまう(と考えられる)症状で、
- ストレスがかかると、副腎からコルチゾールが出る。
- しかし、ストレスに長期間さらされると、コルチゾールを出し過ぎで副腎が消耗する。
- コルチゾールがうまく分泌されなくなる。
- その結果、エネルギー低下、抑うつ、塩分や甘いものへの欲求の増加、めまいなどが起きる!
といった流れで、さまざまな不調を引き起こすと考えられてるんですな。もともとはカイロプラクターのジェームス・ウィルソンさんが1990年代に作ったもので、「なんとなくいつも体調が悪いなー」みたいな人たちの間で大ブレイク。ほどなく「慢性的なストレスによって副腎が燃え尽きた状態」として、日本でも定着し始めた感じですね。ちなみに、ウィルソンさんは、副腎疲労に効くサプリの販売でいまも成功を収めてまして、うまくやったもんですなぁ……って感じがするわけです。
ただし、くり返しになりますが、いまのところ医療の専門家で副腎疲労を認めている人はいないはず。およそ99%の内分泌学者は「副腎疲労が正しいことを示した科学的証拠は存在しない」と考えてまして、「謎の不調はあるかもしれないけど、それは何か別の問題があるんでしょう」ぐらいに考えてるんですよ。
具体的に、いくつかの例を出しておくと、
- 2016年に行われた系統的レビュー(R)では、副腎の機能障害に関する58の先行研究をまとめた結果、「副腎機能障害を疲労の原因と関連づける科学的根拠はない」と結論。たとえば、唾液中のコルチゾールをチェックした調査では、24時間以内に4回ほどコルチゾール値を調べたところ、61.5%の研究において、疲れた患者と健康な患者の間に目立った差はなかった。
また、このレビューでは、何を検査すべきか(血液、尿、唾液)、最適な時間帯、頻度、正常とされる範囲、検査の信頼性などについても疑問を投げかけている。簡単に言うと、そもそも副腎疲労を定義し診断するための正式な基準すら存在しないので、副腎疲労があると言えるはずもない。
- 生理学的にも副腎はめっちゃタフな臓器として知られ、1つの副腎の3分の1ぐらいでも、求められる仕事の大半をこなすことがわかっている(R)。事実、副腎がひとつになっても、問題が起きない人も少なくない。 また、副腎の問題に起因する医学的合併症のほとんどは、実際には過剰産生に起因する。
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14,000人の内分泌専門医を代表する内分泌学会の公共教育部門も、次のような勧告を発表している。「『副腎疲労』は実在する病状ではない。長期にわたる精神的、感情的、肉体的ストレスが副腎を消耗させ、多くの一般的な症状を引き起こすという説を裏付ける科学的事実はない」(R)。
ってことなんで、ここまで言われちゃったら、そりゃあ「副腎疲労のサプリなんぞ飲んでも意味ないよなぁ……」って気になるわけです。
とはいえ、副腎疲労が認められてないと言っても、「副腎疲労の症状」とされるものは実在するのでご注意ください。疲れやすい、体の痛み、頭がぼーっとする、やる気が出ない、神経過敏、睡眠障害、消化器系の問題といった症状は、副腎疲労じゃなくてもいくらでも発生しますんで。
たとえば、貧血、睡眠時無呼吸症候群、自己免疫疾患、感染症、その他のホルモン障害、精神疾患、心臓や肺の問題、腎臓や肝臓の病気など、同じような症状を引き起こす可能性がある病気なんて、死ぬほどありますからね。これに、仕事のストレスや食事の乱れ、スマホの使いすぎといった要因まで加えたら、「副腎疲労の症状」とされるものを引き起こしそうなものは無数に考えられるわけです。
なので、以上のような問題に悩まされるように名ったら、副腎疲労を疑う前に、まずは病院で検査してみることをオススメします。くれぐれもサプリを使わないようにお願いいたします。