このブログを検索

話題の「グーグルの検索が死んでるぞ!」報告を読んでみた話


 

グーグルの検索が死んでるぞ!」って報告(R)を読んだので、感想をメモっておきます。

 

これはライプツィヒ大学などの研究チームが行った調査で、グーグル、Bing、DuckDuckGoという3つの検索エンジンのパフォーマンスを、1年にわたって実証分析したものです。

具体的には、7,392の商品レビューのクエリと、それに対応する検索結果をだだーっとチェックしてまして、だいたいこんな結論を出してます。

 

  1. 検索エンジンはアフィカスだらけ:グーグルは、SEOスパムのフィルタリング、特に製品レビュー検索結果のフィルタリングがダメダメになっている。検索結果には、情報が薄いアフィリエイトスパムがめっちゃ偏って表示される。

  2. グーグルが死んだ原因はアフィリエイトの普及:検索結果の上位に表示されるサイトの大半は、アフィリエイト系のマーケティング戦略を利用している。

  3. Amazonアソシエイトめちゃ強い:スパムサイトの大半はAmazonアソシエイトを使っており、わりとAmazon一強な感じ。

  4. アフィリンクが多いサイトほど質が低い:アフィリエイトリンクの多さと、サイトの品質には逆相関がある。要するに商品を売る気満々のサイトほど、テキストの複雑さが低く、コンテンツの質が低いことを示している。

  5. AIも質の悪化に一役買っている:上位にランクインしているページのテキストは、いずれも複雑さと質が低下しており、AIによって生成されたコンテンツである可能性が高い。

  6. スパムの対応速すぎ問題:検索エンジンも調整を行っているが、なにせSEOスパムの対応が早すぎて、バンドエイドを貼るレベルの対策もできていない。

  7. グーグルの対策ほぼ無駄問題:検索エンジンのアップデートは、コンテンツのランキングに一時的に影響を与えるが、検索品質が改善するのは一瞬だけで、効果が維持される期間はどんどん短くなっている。

 

ってことで、とにかく現在はAIなどのせいでアフィスパムの精度が上がりすぎて、まともなサイトと区別しづらくなっているらしい。もちろん、これは「商品レビューサイト」しか調べてないんですけど、最近も、メンズ・ジャーナルとかが、AIで生成したテストステロンに関するヤバい記事(R)を掲載して問題になったりしてるんで、どのコンテンツでも似たような状況になってるのかもですな。

でもって、この調査では、「どのようなSEO戦術を使っているサイトが上位にランクされるのか?」も調べてくれてまして、だいたいこんな結果を出してます。

 

  1. キーワードの最適化:ランキング上位のページは、見出しやタイトルにキーワードを戦略的に使用している。キーワードの最適化を入念に行うことで、検索ランキングを大きく改善できる。

  2. コンテンツの構造:ランキングの高いページは、多くの場合、見出しが適切に使用され、URLパスが短く、より構造化されていた。

  3. テキストの複雑さ:上位にランクインしているページは、テキストの複雑さが低い傾向にあった。つまり、読みやすくて簡単なものほど上位に来る。

  4. 頻繁なコンテンツの更新:最新のSEOトレンドに合わせてコンテンツを継続的に更新するサイトは、ランキングが維持・向上する。

 

まー、いずれも当たり前すぎる知見でして、よくあるSEOのアドバイスは、やっぱり学術的に見ても正しいんだなーって感じですね。ただし、これらの対策は、AIなどで容易に再現できるので、検索結果がどんどん汚れていくわけっすね。

 

もちろん、この研究にはいろいろと限界もありまして、

 

  • 最新のSEO戦術は考慮されていない:SEOは進化のスピードが速いので、ここで研SEO最適化の指標に使われた内容は、時代遅れになっているかもしれない。また、SEOの指標は他にもあるだろうから、限定的なポイントしか捉えきれなかった可能性がある。

 

  • 検索ワードが正しいのか問題:あくまで製品レビューのクエリに焦点を当てた調査だし、研究チームが使った検索ワードが、ユーザーが入力する可能性のある全てのクエリを代表しているかは謎。なので、この調査の結果が、全ての検索シナリオに当てはまるとは言えない。

 

といったあたりは結果をブレさせる要因になってるはず。その点で、グーグルが反論できそうなポイントも山のように存在する感じっすね。

 

で、ここで気になるのは「じゃあ我々はどうすればいいのか?」ってとこですが、残念ながら、研究チームは「うーん、すべてイタチごっこだから難しいよねぇ……」としか言ってくれておりません。さらにAIが発達したら、この問題はより顕著になるだろうから、途方に暮れる一方でしょうね。

 

これを読んだ私の感想としては、

 

  • AIのせいで逆に良い情報に行き着く時間が増えるのめんどいなぁ……。

 

  • 今後は、さらに「誰がその文章を書いたのか?」が重要になるから、匿名記事とかの信頼性は下がるんだろうなぁ。

 

  • いまでも有料の情報に金を払いまくってるけど、さらに有料課金する必要が出てきそうだなぁ……。

 

ぐらいのもんでして、さらに課金の重要性が高まりそうな気はしております。かつてよく言われた「検索エンジンの発達で万人が必要な情報を手に入れられる世の中になるのだ!」って話はなんだったのかって感じですが。

 


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM