酒でエクササイズの効果を無駄にしないための適切なアルコール摂取量
こないだ「酒で健康にはなれない!」って研究を紹介したところ、「酒はエクササイズの効果にも悪影響がありますか?」といったご質問がありましたんで、軽くまとめておきましょう。
酒とエクササイズの問題については、2014年にかなり良い論文(1)が出ております。これはパレルモ大学の研究で、過去に行われたアルコールに関する137件の実験を精査したんですね。つまり、科学的な証拠としてはかなり高め。
では、ざっくりと結論を並べていきましょう。
1.酒で筋肉の増加率は20%下がる
酒が筋肉量のアップにダメージをあたえるのは間違いなし。多くの研究では、酒を飲むとタンパク質再合成のレートが20%も下がり、しかもその悪影響は48時間にわたって続くそうな。
タンパク質再合成は、体が筋肉を増やすときに使うメカニズムのこと。こいつのレートが下がっちゃうと、せっかくのトレーニングが無駄になっちゃう可能性は大であります。
このほか、酒が筋肉にあたえる悪影響としては、
- mTORの働きがにぶる:mTORはタンパク質の再合成にもっとも重要な働きをする要素。アルコールが働きをジャマする作用がありまして、結果として筋肉の成長もにぶっちゃう。
- グリコーゲンの再合成が減る:グリコーゲンは筋肉の成長に必須のエネルギー。特に筋肉をデカくしたい時によく使われるので、こいつの量が少ないとトレーニングが満足にできなくなります。
- IGF-1が減る:IGF-1は筋肉の成長に欠かせないホルモン。実験では、アルコールのせいでIGF-1の働きを30〜60%も減っちゃったとか。
といったところ。とにかく、いろんな方向からアルコールは筋肉の成長にダメージを与えるみたい。
2.酒は筋力にも悪影響が出がち
筋肉が生み出す力は、主に脳と脊髄の神経によってコントロールされております。つまり筋力をアップさせるには、適切な量の水分と電解質が必須。
ところが酒を飲むと、
- 筋肉の脱水が進む
- アルコールの代謝で筋肉の収縮に必要な栄養が使われちゃう
といった現象が起きまして、やはり筋力への害は大きめ。具体的なデータを見てみると、だいたい体重1kgあたり1gのアルコールを飲むと、その後、最大60時間にわたって筋力が22%ほど低下するとか。なかなかの数値ですねぇ。
3.具体的にどこまで飲むとエクササイズの効果は帳消しになるのか?
そんなわけで、基本的にエクササイズと酒の相性が良くないのは間違いなさそう。では、具体的にどこまで飲んだらヤバいんでしょうか?
パレルモ大の論文によれば、ある実験では参加者を以下の2グループにわけたんだそうな。
- エクササイズをした後、体重1kgあたり0.5gのアルコールを飲む
- エクササイズをした後、体重1kgあたり1gのアルコールを飲む
すると、1gグループは上記のような悪影響が出まくったのに、0.5gグループには目立った変化はなかったとのこと。とりあえずこのラインを守っておけば、楽しく酒が飲めそうであります。
まとめ
たいていの酒は1杯で12〜14gのアルコールが入ってますんで、例えば体重が60kgの人だと、およそ4杯を超えたあたりからダメージが出てくる計算。もっとガタイがいい人なら6杯目あたりでしょうか。
体重1kgあたり0.5gのラインを守るなら、だいたい1日に2杯までならOKってイメージですね。最終的には、一般的な飲酒量のガイドラインと同じになりましたな。
酒好きな方は、自分の体重をベースに適切な飲酒量を出してみると吉。わたしは酒に飲まれがちなタイプなんで、今後も断酒を続けるつもりですが(笑)