大きな目標や希望を持つ人ほど中年になって幸福度が下がるかも!という観察研究の話
「中年の危機って本当にあるの?」って問題は昔からあって、
ってなデータがあったかと思えば、
みたいな話があって、結局、私ぐらいの世代は幸福度が高いのか低いのかがよくわからなかったんですな。
が、カナダで行われた質がいい調査では、「中年の危機ってやっぱなくないか?」みたいな結論になってておもしろいです。
これはアルバータ大学の研究(R)で、18-43歳と23-37歳の男女と言う2つのグループを追いかけた観察研究になっております。総勢1500人が対象で、それぞれ25年と14年にわたって幸福度を調査し、年齢ごとにどんな変化が起きたかをみたんですな。
実は、ここまで直接に幸福度の変化をチェックした調査って珍しくて、「中年の危機」について調べたもののなかでは信頼度が高めなんですよ。これは気になりますねぇ。
で、そこでどんな傾向が確認されたかと言いますと、
- たいていの人は18歳のときより40代前半のほうが幸福度は高い
- 人間の幸福度は18歳から上昇しはじめ、30歳になるまでどんどん上がり続ける
- 結婚した人はたいてい幸福度が上がり、健康レベルも高くなる。逆に、幸福度と健康の悪化ともっとも相関していたのは「失業」だった
だったそうで、みごとに「中年の危機」とは違う結果になってたりします。個人的な実感としても18歳のころよりは確実に現在のほうが幸福なんで、この結果には思わず共感しちゃうわけです。
もちろん、この研究では、結果に影響しそうな要素は調整されてまして、
- 性別
- 教育レベル
- 学歴
- 自尊心レベル
などを取り除いても、やっぱり「中年のほうが幸福」って傾向が出たらしい。40代の私にはなかなかうれしい結果っすね。
こうなると、なんで「中年の危機」にかんする研究には食い違いがあるの?ってところが気になるわけですが、「自己愛過剰社会」で有名なジーン・トウェンギ博士は、2015年に行った研究(R)で次のように言っておられます。
アメリカの文化は、「大きな目標を持て!」や「夢を終え!」といったテーマをかつてなくもてはやすようになっている。こういったテーマは、若いころには気分を良くしてくれるだろう。
しかし、歳をとれば誰でも夢や目標を達成できそうもないことに気づき、結果として幸福度は下がってしまう。大昔には、人生に高い目標をほめそやすような文化はそこまで存在しなかった。
ってことで、本来は中年でもなんの問題もないはずなのに、大きな目標をもてはやす文化のせいでメンタルが悪化しちゃうんじゃないか、と。
これは過去にも似たような話が出てまして、
- デカい目標を抱いている人ほど短命
- 目標が高い人ほど幸福度は下がる
みたいな傾向が認められてたりするんですよねぇ。また、ドイツの研究でも、「希望がない人のほうが人生の満足度が高かった」なんて結果が出てたりとか。
まぁ言われてみれば、狩猟採集の時代に「将来はビッグな人間になるぞ!」とか思った人はいなかったでしょうから、そもそも人類は「高い目標」とか「大きな希望」みたいな概念に適応してないのかもですなー。
が、そうはいっても、なんの目標や希望がない人生もまた味気ないところではありますんで、
- 大きな目標を考える
- 目標までのプロセスを超細切れにする
- 細切れの目標を、1日単位で達成できるレベルまで落とし込む
- 大きな目標を忘れる
ぐらいにして、淡々と暮らしていくのが良さそうな気がしますねぇ。どうぞよしなに。