40代前半から50代の半ばまでは人生の暗黒期?
2013年に出た大規模な「幸福度調査」(1)を読んでたら、「40才からの15年は人生の暗黒期!」って結論が出てておもしろい。
40代前半から50代の半ばまでが人生の暗黒期
これは2万3,000人のドイツ人を対象に行ったもので、年齢層は17才〜85才まで。全員の幸福度を調べて統計処理をしたところ、
- 23才までは幸福度が上がり続ける
- 23才を過ぎると幸福度が下がり始める
- 55才で幸福度が底を打つ
- 55才から再び幸福度が上がり始める
- 69才で人生の幸福度がマックスになる
ってパターンが見られたそうな。だいたい40代前半から50代の半ばまでが人生の暗黒期ってわけですね。40才を目前にひかえたわたしには、実にツラいデータです。
この傾向は、2010年に行われたギャロップ社の調査(2)にも出ていて、こちらのデータだと、
- 人生の幸福度は23才でいったんピークを向かえる
- 23才から人生の幸福度は下がっていく
- 50才で人生の幸福度は底を打つ
- そこから85才まで幸福度は上がり続ける
って感じになっております。多少の差はあれど、おおよそのパターンはそっくりですね。
もちろん、これは欧米のデータなんですが、エコノミスト誌によれば、世界中でほぼ同じような傾向が見られるんだそうで(3)、日本でも似たようなもんかも。
人生に大きな目標を抱かない人のほうが幸福で寿命も長い
で、なんで中年期に幸福度が下がっちゃうかというと、
- この年代は人生への希望や野心が大きいから
- そのせいで、現在の自分を受け入れられないから
の2点が大きいみたい。「希望や野心が幸福のさまたげになる」って説は昔からありまして、2012年の研究(2)でも「人生に大きな目標を抱かない人のほうが幸福で寿命も長い」ってデータが出てたりとか。
研究者によれば、
当たり前の話だが、野心はわたしたちの目標や願望のレベルを上げる。その結果、ゴールが高くなればなるほど、つねに自分を負け犬をみなすことになってしまう。これは「シジフォスの岩」のようなものだ。渇きは決して癒されることがない。
とのこと。希望や野心は、お金や名誉をもたらすかもしれないけど、決して幸福度には結びつかないんだ、と。要するに、40を過ぎた働き盛りのオッサンは、ギラギラしすぎて逆に不幸になりやすいって話ですね。
年を取って人生への希望が薄れると幸福度が増す
が、2013年のデータ(3)を見ますと、この傾向は年齢とともに減少していきまして、どんどん幸福度が増していく模様。研究者いわく、
年をとるにつれ、わたしたちは「何かになりたい」という感覚に集中しなくなり、自分を受け入れるチャンスを増やしていく。シンプルに、自分自身にリラックスできるようになるのだ。そのおかげで、周囲の環境はよりなじみ深く感じられ、受容の精神によって不安は消えていく。
とのこと。年をとると下手に人生に希望を持たなくなるんで、そのせいで逆にストレスから解放され、日常のささいなことが楽しくなってくるんだ、と。よろしいですなぁ。
こんなデータを見ると、わたしのようなアラフォーは「あと15年は暗黒時代か…」とか思っちゃうわけですが、いっぽうでは「『中年の危機』は都市伝説」でもご紹介したとおり、
- 中年期は心理的な機能がピークになる
- 人生でもっとも活気にあふれた時期でもある
といったメリットがあるのも間違いないところではあります。つまり、中年になってもデカい目標や野心さえ持たなければ、この時期のポテンシャルを活かしたまま安定した幸福をキープできるわけですな。ネガティブなんだかポジティブなんだかよくわからない結論ですが(笑)
このあたりは以前に紹介した「心理学的に正しい『最高の選択をする方法』は『最高の選択肢』を探すのを止めること」って話にも近いところでして、かつてタモリさんが語った、
「目標なんて、もっちゃいけません。目標を持つと、達成できないとイヤだし、達成するためにやりたいことを我慢するなんてバカみたいでしょう」
なんて発言も、実に科学的に正しい態度だと申せましょう。もちろん、完全に希望や野心を捨て去るのは難しいですけど、少なくとも高望みは捨てていきたいところ。