良いアイデアが40%も生まれやすくなる「インセンティブ式発想法」とは?
こないだ「良いアイデアが欲しいなら歩こう!それもなるべく外で!」みたいな話を紹介しましたが、今度は「創造性が40%も高まる方法が見つかったぞ!」みたいなデータ(R)が出てきましたんで、軽くまとめときます。
これはイリノイ大学などの実験で、まずは研究チームの問題意識を見てみましょう。
心理学者の多くは、「インセンティブでは創造性は高まらない」との考え方を支持する。外的な報酬により、内的なモチベーションが下がってしまうからだ。
ごほうびでモチベーションが下がる!ってのは有名な話で、たとえば自発的に勉強してた子供にお金をあげると急に何もしなくなっちゃうのが典型例。それまでは「勉強おもしろい!」って動機で動いてたのが、お金目当てで学習するようになったからですね。
この現象は何度も追試で確認されてるんで、まずは揺らぎようがない話なんですが、この研究チームは、
確かに、インセンティブは直接的には創造性アップに結びつかないかもしれないが、クリエイティブのプロセスへ間接的に関わることで、結果的には成果を高める可能性がある。
と考えたんですな。「ごほうびあげるから良いアイデアを考えてねー」と言ってもムダですが、違う使い方をすれば十分に創造性アップに役立つのではないか、と。
そんなわけで、ここでは2段階の実験が行われてまして、まずは被験者を2つのグループに分けております。
- 「リバス・パズル」のアイデアを出せば出すほどお金を上げるよ!と伝える
- 25ドルあげるから好きなだけ「リバス・パズル」アイデアを出してね!と伝える
インセンティブを青天井にした場合と固定給にした場合で、どのような違いが出るかをみたわけですねー。
「リバス・パズル」ってのは文字やイラストを使ったクイズのことで、日本で言う「ナゾトレ」みたいなもんです(もうちょい簡単だけど)。そのお題を被験者に考えさせたわけでして、こりゃあなかなか大変ですな。
さて、このファーストステップの結果がどうだったかと言いますと、
- アイデア量に応じてお金を受け取ったグループは、25ドルだけもらったグループより2倍のアイデアを出した
- しかし、アイデアの質で見た場合は両グループに差はなかった(第三者がアイデアのおもしろさを判定した)
だったそうな。確かにインセンティブはモチベーションを上げたけど、アイデアの質が高まったわけじゃなかったみたいっすね。
この結果だけを見ると、「やっぱ”ごほうび”のあげすぎは無意味だ!」みたいな結論になりそうですが、まだ実験は終わっておりません。ここで研究チームは違うステップを加えたんですよ。
- 最初のアイデア出しから10日後に再び被験者を呼ぶ
- 前回と同じように「リバス・パズル」のアイデアを出してもらう
って感じで同じ作業をもう一度やってもらったところ、今度は結果に差が出まして、
- アイデア量に応じてお金を受け取ったグループは、25ドルだけもらったグループより40%ほど質が高いパズルを思いついた!
だったらしい。休止期間をはさんだ場合は、いったん大量のアイデアを出したグループのほうが成績が良くなったわけですな。
研究チームいわく、
質の良いアイデアを生むには、休みを入れていったん自分から離れる時間が必要だ。
そもそも、クリエイティビティに必要なのは「試すこと」だ。いろいろと試してみて、ものごとがうまくいかないイライラを体験する必要がある。その後、リラックスして脳を休めると、突然よい考えが浮かんでくる。
とのこと。良いアイデアを生み出すには「孵化期間」が必要ってのはよく聞く話ですが、その前段階として「大量にヒドいアイデアを出しまくってイライラする」って体験も欠かせないわけですな。これは意外と見過ごされがちな視点ではないかと。
そんなわけで、この研究を現実に活かすのであれば、
- 「たくさんアイデアを出せば出すほど、後で好きな漫画を読めるぞ!」と事前にルールを決めてモチベーションをあげる
- とにかくアイデアを出しまくったら、まったく関係ないことをする
みたいなステップを意識していく感じになるでしょうね。これは試してみよう。