「筋肉を意識しながら筋トレしよう!」ってアドバイスは採用すべきかどうか?問題
トレーニングの世界では「筋肉を意識しながら筋トレしよう!」ってアドバイスをよく聞くわけです。たとえば、
- ベンチプレスをするときは大胸筋の動きに集中する
- スクワットのときは大腿四頭筋の動きに集中する
みたいなことですね。実際、過去のデータでも「筋肉に意識を向けたほうが刺激が大きくなる!」みたいな傾向はいくつか確認されてまして、筋トレ界では「マインドマッスルコネクション」などと呼ばれております。
で、この手法が実際に使えるのかどうかはまだよくわからんのですが、近ごろ出た論文(R)は「マインドマッスルコネクション」の使い方についておもしろい知見を提供してくれてました。
これはグリフィス大学の研究で、過去の「マインドマッスルコネクション」論文から質が高めな16件を使った系統的レビューになってます。現時点で最良のデータをまとめたら、「マインドマッスルコネクション」についてどんなことが言えそうかを確かめてくれたわけですね。
オープンアクセスなので詳しくは原文をお読みいただければと思いますが、本論の要点をざっくりまとめるとこんな感じです。
- 筋トレ中に筋肉に意識を向けると、そのぶんだけパフォーマンスが落ちるんじゃない?
筋トレ中に筋肉を意識すると刺激度が上がるかもだけど、そのせいでエクササイズの効率が下がるんじゃないかって指摘ですね。
どういうことかと言いますと、だいたいこんな流れです。
- 筋肉を意識すると確かに刺激は大きくなる
- しかしこの事実は、裏を返せば「同じウェイトを上げ下げするために、より多くの労力が必要となる」
- そのぶんだけパフォーマンスは低下する!
うーん、確かにこれも一理はありますね。刺激が強いってことはそれだけ作業効率が悪いとも言えますから。
事実、先行研究をチェックしてみると、
- 筋肉よりも外部要因を意識したほうが効率よくトレーニングできて精神的にもラク!
って傾向が確認されてたりします。外部要因ってのは「バーベルの動き」とか「ちゃんと肩甲骨が寄ってるかな?」みたいなポイントのとこです。筋肉からは意識を離して、もっとフォームなどに気を配ったほうが、最終的にはより重いウェイトを長くあつかえるはずだ、と。
前にも書いたとおり、筋トレの効果ってのは全体のボリュームにかなり依存しますんで、たとえば1回の筋トレあたりの回数を稼いでボリュームを増やしたいときなんかは、マインドマッスルコネクションは使わない方がいいんでしょうな。
研究チームいわく、
外部のものごとに意識を集中すると、脳の自動コントロールシステムが働き出し、意識的に筋肉を動かそうとした際に発生する注意の負荷と力学上の非効率が取り除かれる。
筋肉の効率を最大化したいなら、注意力の焦点は外部に向けた方がいい。
とのこと。筋肉に意識を向けると、これまでの筋トレで自動化したフォームなどが崩れちゃって、そのぶんだけ効率を低下させるんだってことですね。プロアスリートほど自分の体を意識すると効率が悪くなるのに似てますな。
もちろん、今回のデータだけだと「マインドマッスルコネクションは意味なし!」みたいな結論は出せないのですが、とりあえずプロビルダーでもない限りはそこまでこだわらなくて良さそうな気がしてきました。