牛肉や豚肉は鶏肉よりも心疾患リスクを高めるって本当なの?を確かめた実験の話
「肉は良いのか悪いのか?」って議論は昔からありまして、いくつかの観察研究(R.R)を見てますと、
- レッドミート(牛肉とかラム肉とか)は体に悪い!特に心疾患リスクをあげる!
- しかしホワイトミート(鳥肉とか)にはなんの問題もない!
みたいな傾向が出てたりします。なんでレッドとホワイトで健康度に違いが出るのかはまだ謎なんですが、よく言われるのは、
- レッドミートって飽和脂肪酸が多いからじゃないの?
って話ですね。飽和脂肪酸がLDLコレステロールを増やして、そのせいで心疾患になるのではないか、と。
まぁ過去には「牛肉で心疾患リスクはほぼ上がらない」ってメタ分析もありまして、個人的に上記の説には乗りきれてないんですけど、確かに「肉の種類や飽和脂肪酸の量によってどこまで健康レベルに違いが出るか?」ってポイントを調べたデータが少ないのも間違いないところです。
果たして、牛肉と鳥肉の違いは飽和脂肪酸によるものなのか?ってところで、新しい研究(R)はそこらへんを細かく調べてくれておりました。
これは113人の健康な男女を対象にした実験で、そのうち半分が標準体重、残り半分は肥満ぎみな人を集めたらしい。具体的にどんなデザインの実験だったかと言いますと、全員に対して6パターンの食事をランダムに割り振っています。
- 飽和脂肪酸たっぷりのレッドミートを食べる(おもに牛肉)
- 飽和脂肪酸が少ないレッドミートを食べる
- 飽和脂肪酸たっぷりのホワイトミートを食べる(おもに鳥肉)
- 飽和脂肪酸が少ないホワイトミートを食べる
- 肉は食べないが飽和脂肪酸はたっぷりとる(おもにチーズ)
- 肉を食べず飽和脂肪酸も取らない(おもにシリアルばかり食べる)
それぞれの食事に割り振られた期間は4週間で、2〜7週間のウォッシュアウトを作った上で、また別の食事法を実践してもらったそうな。肉の種類は牛肉、豚肉、鶏肉などで、総摂取カロリーのうち脂質が占める割合は31-35%。加工肉や魚介類などは使われておりません。
でもって、期間中のLDLコレステロールやアポリポタンパクB(心疾患リスクの指標)などをチェックしたところ、以下のような結果になりました。
- レッドミートとホワイトミートでは心疾患リスクの変化に差はなかった!
- が、「肉あり」と「肉なし」を比べた場合は、肉なしな食事の方が心疾患リスクは改善していた!(LDLが-12%でアポBが-10%)
- さらに、「高脂肪」と「低脂肪」を比べた場合は、低脂肪の方が心疾患リスクが改善していた!(LDLが-14%でアポBが-11%)
ってことで、レッドとホワイトでは特に心疾患のリスクは変わらないものの、やはり全体的に見れば飽和脂肪がない方が良いとの結果ですね。
ただ、これで「レッドミートはダメだ!」って話になるかと言えばそんなことはなくて、
- レッドミートとホワイトミートでも心疾患リスクが改善していた!
ってな結果も出てるんですよ。具体的には、どちらもLDLが-7%、アポBが-5~6%の改善を見せてまして、飽和脂肪酸は悪くないどころか体にいいんじゃね?って気もするわけです(ただしここらへんは有意差があるかどうかが書かれてないのがチト微妙ですが)。
この変化がなんで起きたかは不明ながら、個人的には「加工肉を減らしたおかげで結果的に健康な食事になったからでは?」と考えております。「悪いのは肉じゃない!加工肉なのだ!」ってのは割と現代の趨勢ですからね。
ということで全体的に見れば、
- 普通に健康なライフスタイルを送っていれば、レッドミートだろうがホワイトミートだろうが別に心疾患リスクは変わらない
- ただ、すでに心疾患リスクが高い人は、飽和脂肪酸をひかえた方が確実っぽい
ぐらいの結論に落ち着きそうな気がしております。どうぞよしなにー。