太った人が肉や乳製品を減らしてもコレステロールが改善しづらい問題
「悪玉コレステロールを下げたい……」ってときによく言われるのが、
- 牛肉とか乳製品を減らして飽和脂肪酸を取らないようにしましょうねー
- 代わりに魚をいっぱい食べて不飽和脂肪酸を増やしましょうねー
みたいな話です。いわゆる「魚を食べて血液サラサラ〜」みたいなやつですね。
この考え方は多くの実験で支持されるところなんですが(R)、まだよくわかってないのが「太ってる人には意味がないかも?」って論点であります。牛肉の脂より魚の脂がいいのは間違いないものの、BMIが高めの人だと効果が出にくいのでは?って考え方が昔からあるんですよ。
ってことで新しいデータ(R)は、「太ってる人のコレステロール問題」を調べてくれてて有用でした。
これはオスロ大学病院の実験で、83人の健康な男女を対象にしたもの(年齢は21〜71歳)。BMIは普通レベル(25より下)か肥満レベル(30〜45)までの人を選んだそうな。また、参加者に心疾患や糖尿病の履歴はなかったとのことです。
実験では、BMIによって全体を3つのグループにわけてまして、
- BMIが普通レベルで、普段より飽和脂肪酸を増やした食事をする
- BMIが肥満レベルで、普段より飽和脂肪酸を増やした食事をする
- BMIが普通レベルで、普段より不飽和脂肪酸を増やした食事をする
- BMIが肥満レベルで、普段より不飽和脂肪酸を増やした食事をする
って感じの食事を6週間ほど続けてもらったみたい。もちろん、どのグループも摂取カロリーや三大栄養素のバランスは同じにそろえております。
また、それぞれのグループが摂取した食事は以下のようになってます。
- 飽和脂肪酸グループ
- バター
- 全乳
- 牛肉などの脂身
- 全粒粉のパン
- フルーツと野菜
- 不飽和脂肪酸
- 植物性の油(アマニ油とか)
- 低脂肪乳
- 脂身が少ない肉
- 全粒粉のパン
- フルーツと野菜
いっぽうで全体的に加工肉や精製穀物(普通のパンとかパスタとか)は食べないように指導されてまして、なかなかクリーンな食事内容になってますね。
さて、それで6週間後にどんな結果が出たかと言いますと、
- 不飽和脂肪酸グループは、飽和脂肪酸グループよりもあきらかにLDLコレステロールが改善していた(-7.2% vs. +7.3%)。
- トータルコレステロールも改善していた (-7% vs. +5.1%)
- HDLコレステロールも不飽和脂肪酸の勝利だった(-3.3% vs.+2.98%)
という結果でして、ここらへんは従来のデータでも確認されてきたポイントなんですが、新しく確認された知見としましては、
- 太ってる人はコレステロールの改善効果が超悪くなる!
って傾向も確認されております。どれぐらい改善のレベルが低くなるかというと、
- 総コレステロールの改善度が2分の1ぐらいになる
- 悪玉コレステロールの改善度が3分の1ぐらいになる
って感じでして、「こりゃあずいぶん違いが出たもんですなー」という印象ですね。
でもって、過去のメタ分析(R)をベースに今回の数値を解釈すると、
- BMIが普通レベルの人は、食事からとる飽和脂肪酸の5%を不飽和脂肪酸に変えるごとに、心疾患の発症率が10%減る
- ただしBMIが肥満レベルだと、不飽和脂肪酸のメリットはあんま得られなそう
って感じになりまして、「太った人のコレステロール改善はダイエットが優先!」って結論に落ち着きそうっすね。どうぞよしなに。