若いころの失敗が10年後の成功をもたらすかもだぞ!という観察研究のお話
「若い頃の失敗は買ってでもしろ」などと申しますが、このアドバイスを裏づけるようなデータ(R)が出ておりました。
これはノースウエスタン大学などの研究で、「早期のキャリアにおける失敗が、長期的な成功に影響するのかを調べたよ!」って内容になってます。これがどんな調査だったかと言いますと、
- 1990年から2005年にかけて、アメリカ国立衛生研究所に申し込まれた「助成金」のデータを集める
- データを「助成金をかろうじてゲットした研究者」と「助成金ゲットにギリギリのところで失敗した研究者」にわける
- すべての研究者のその後10年間の働きをチェックして、助成金ゲットの成功が、研究人生にどう影響したかを調べる
みたいな感じ。研究者にとって助成金が手に入るかどうかは死活問題だったりするわけで、支給を却下されればそりゃあ落ち込むわけです。この失敗が、果たしてどのような影響をもたらすのか?ってところを調べてみたわけですね。おもしろい調査ですなぁ。
で、チームは「助成金ゲットに失敗した研究者」たちのデータを集めまくりまして、たとえば、
- 論文を発表した量
- その論文がほかの研究者から引用された量(いちおう、引用数が多ければその論文は「影響力が大きい」とみなせる)
といったポイントをチェックしてます。助成金の失敗により、果たしてその後の生産性に違いが出るのか?ってことですな。
その結果がどうだったかと言いますと、
- 助成金ゲットに失敗した研究者は、助成金をゲットした研究者よりも「影響力の高い論文」を生み出す確率が6.1%も高かった
だったそうです。「やはり失敗は成功の母ではないのか?」と思わせるに十分な結果ですねー。
研究チームいわく、
もちろん、「早い段階で失敗した人は離職率が上がるだけではないか?」との考え方もあるだろう。しかしデータを見ると、失敗に負けずに研究を続けた人たちは、平均して、長期的にずっと良い成績を収める傾向があった。
つまり、失敗は私たちのキャリアを殺す要因ではなく、実際には強くしてくれる可能性が高いことを示唆している。 歴史的に見ても、多くの人は成功のメリットを強調しがちだが、失敗が与える影響をよくできているとは言い難い。
とのこと。どういうことかと言いますと、
- 失敗が成功を導くのではなくて、「失敗した研究者はやる気を失って職を離れるので、結果として優秀な研究者が生き残っただけでは?」という仮説も考えられる
- が、データを見ると、確かに助成金の失敗で離職した研究者もいるんだけど、それだけでは6.1%という数字を説明するのは難しい
みたいなことです。現状では、やっぱ失敗が成功を導く可能性が高いのではないか、と。
となると、なんで失敗が成功に役立つのか?ってとこが気になるわけですけど、正直なところ、今回のデータから結論を出すのは無理な話であります。いちおうの推測としては、
- 失敗により「これはもっと努力が必要なサインなのだ!」という気持ちが芽生えるから?
- 逆に早期に成功すると、人生をなめてしまうようになるから?
といったあたりが考えられますけど、まぁいろいろと複合的な要因が多そうなんで、原因をひとつに特定するのは無理かも。
ちなみに、研究チームは「だからといって意図的に失敗しようとは思わないでね!」と釘を指してますので、そこらへんはご注意ください。今回のデータは、あくまで実際に失敗が起きたときのモチベーションアップ用に使うのが正解でありましょう。どうぞよしなに。