ほんの少しの酒でもガンになる確率は上がるかもしれんぞ!という日本で行われた観察研究の話
「酒は百薬の長」と言われたのは昔の話で、近ごろは「1杯でも悪影響がある」なんてデータが増えてきたのはご存じのとおり。まだ決着はついてない話ではあるものの、どうも以前に言われてたよりも酒に健康効果がないのは間違いないかなーと。
まぁ上にリンクしたデータについては「1杯の酒でも健康にダメージは出そうだけど、そこまですごい数値が出てるわけでもない」って感じなので、「酒は悪!必ずやめるべし!」とまでは言わないものの、1回の酒席で2杯以上を飲むのはやっぱ推奨できない感じ。
でもって、新しいデータ(R)もまた酒飲みには不利な内容でして、結論から言っちゃえば「軽い酒でも発癌リスクは上がるかもだ!」みたいな内容になってます。こんなデータをクリスマスイブにアップするのもアレですが(笑)
これは日本で行われた研究で、2005年 〜 2016年にかけて33の病院で集めたデータセットを使っております。具体的には、
- 癌の治療を受けている患者さん63,232人の酒量を調べる
- コントロール群として、別に63,232人を集めて同じように酒量を調べる
みたいになってます。ここでの”酒量”ってのは、
- 1ユニット=エタノール23g
って感じで統一されてまして、ビールならだいたい500ml、ワインや日本酒なら180ml、ウイスキーなら60mlが1ユニットになります。
その上ですべてのデータをひっくるめたところ、こんな結果になりました。
- 完全に酒を飲まない人の発癌リスクがもっとも低かった
- 酒量と発癌リスクにはかなりリニアーな相関がある(つまり、飲めば飲むほど発癌リスクは上がる)
- 1日に1ユニットの酒を飲み続けると10年の時点で発癌率は5%上がり、1日の酒量が2ユニットになるとリスクも倍になる
- 1日に2杯またはそれ以下の飲酒でも、酒を飲む期間の長さに関係なくがんのリスクは高くなる
というわけで、どうもかなり軽い酒でも発癌率は上がっちゃうらしく、この傾向は性別や職種などに関わらず確認されたとのこと。また、このリスクの上昇は、結腸直腸癌、胃癌、乳癌、前立腺癌、食道癌などのリスク増加が大きいっぽい。いずれもアルコールの影響がデカいエリアっすね。
ちなみに、何でアルコールで発癌リスクが上がるの?ってとこについては、以下のような流れが推定されております。
- アルコールの分解によって代謝物が生成される
- 代謝物の影響で、他の化学物質や栄養素を処理する身体の能力が影響をうける
- 癌のリスクが高まる!
というわけで、アルコール処理後の残りカスのせいで人体の解毒システムがうまく働かなくなるんじゃないか、と。
研究チームいわく、
軽度から中等度のアルコール摂取は、複数の経路を通じてがんリスクに影響を及ぼす可能性がある。
たとえば、アルコールは性ホルモンの濃度を上昇させ、これが乳癌リスク増加の一因となる。また、エタノールの代謝物であるアセトアルデヒドは、国際がん研究機関によりグループ1の発がん物質に分類されている。アセトアルデヒドは細胞の増殖を促進し、DNA損傷を誘発するからだ。
とのこと。とにかくアルコールはいろんな方向から発癌リスクを高めていくらしい。怖いすなぁ。
日本における主な死因は癌だ。全体的な癌発生率への悪影響を考えると、アルコールによる癌リスクの教育をさらに奨励すべきだろう。
そんなわけで、あくまで観察研究ではありますが、サンプルも日本人を採用してますし、こりゃあ意識しておいたほうがよさそう。タバコや揚げた肉ほどではないにせよ、酒も注意してお飲みくださいませ(というかゼロにするに越したことはないですが)。