EQ(感情知性)が高い人はやっぱり勉強でも成功するぞ!というメタ分析の話
「心の知能指数」(EQ)が流行ってからだいぶ経ちますが、この考え方がどれぐらい有用なものなのかについてはまだ諸説あるわけです。たとえば、
みたいな意見もありまして、どこらへんを重視したらいいかってのは難しいところなんですよね。
といったところで、新しいデータ(R)はEQにとって良い結果が出ておりました。
これはシドニー大学などの研究で、チームの問題意識はこんな感じです。
学業を成功させるためには、高い知性と誠実性の高い人格が最も重要な心理的特性であることは有名だ。しかし、私たちの研究では、第3の要素である「EQ」にスポットライトを当てた。「EQ」も学生の成功に役立つ可能性がある。
学業の成功には、頭が良くて勤勉であるだけでは十分とは言えない。学校で成功するためには、自分の感情を理解し、コントロールできなければならないからだ。
ということで、もちろんIQの高さは重要だし、勉強をコツコツと行える性格も大事だけど、同じぐらいメンタルのコントロールが必要なのではないか、と。そりゃあどんなに頭が良くてもストレスにすぐ負けちゃうようじゃ勉強も手につかないでしょうからねぇ。
でもって、この研究では、1998年〜2019年に行われたEQの調査から160件を選び出し、世界の27か国から集めた42,000人超のデータをメタ分析してくれております。サンプルの年齢は小学校から大学校まで幅広く、かなり良い感じの内容になってるんじゃないでしょうか。
ここで言う「EQ」ってのは、おおよそのところ、
- 自分がいまどんな感情を抱いているかに気づくことができる
- ネガティブな感情を自分でコントロールすることができる
- 他者の感情に気づくことができる
って感じでして、感情の認知とコントロールを重視した内容になっております。どっちもストレス対策には必須のスキルっすね。
さて、そこでどんな結果が出たかと言いますと、
- 全体的に、感情知性が高い学生ほど成績が良い!
- 年齢やパーソナリティを調整しても感情知性と成績の関係は一貫していた
だったそうで、やはり研究チームの推測どおり、学業で成功するには頭が良いだけでも勤勉なだけでも十分ではなく、感情の制御が必要になってくるみたいっすね。
研究チームいわく、
EQの高い学生は、不安、退屈、失望など、学業の成績に悪影響をおよぼすネガティブな感情をうまくコントロールできるのだろう。また、EQが高い生徒は、社会的な人間関係の管理もうまく、教師、仲間、家族とより良い関係を築くことができるのかもしれない。いずれも学業の成功にとって重要な要素だ。
とのこと。EQが高いとネガティブな感情のコントロールがうまいだけでなく、周囲との関係性も良いおかげでソーシャルサポートのレベルも高くなるわけっすね。
ちなみに、この研究では、「科学の才能があるのに感情的知性が低い人は学校どうなるか?」の例もあげられていて、このように説明されております。
他の人がいらいらしたり、心配したり、悲しんだりしても、EQが低い人はそこに気づくことができない。この人は、他の人の感情がどのような行動を引き起こすのかを理解できず、自分自身の感情を調節する方法もわからないのだ。
その結果、EQが低い生徒は親友の気分が沈んでいても気づけず、逆に親友はEQが低い生徒の無神経さに腹を立て、当然、英文学の授業でもEQが低い生徒のことを手伝わないだろう。英文学の授業では、作品の中に出てくる登場人物の感情を理解しなければならないため、EQが低い者には苦労が多い。
英文学ができず親友からも嫌われたため、EQが低い生徒は次の授業で数学の問題に集中することができず、最後は得意科目でも苦労することになる。
というわけで、感情知性が低いせいで周囲とうまくいかず、そのせいでいろんな方向に悪影響が出るのではないか?って可能性が指摘されておりました。いかにもありそうっすねぇ……。
まぁ、そうは言っても「ネガティブな感情のコントロール」は身につけられるスキルですし、共感力についてもある程度まで鍛えられるのでは?って感じもしますんで、そこらへんは後天的にトレーニングしていくしかないでしょうなぁ……(フィクションで共感力が発達するかどうかは異論も多いですが)。