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大豆のイソフラボンで頭が良くなる?説をガッツリ調べたメタ分析のお話

 

イソフラボンといえば、大豆などに豊富な天然成分のひとつ。女性ホルモンに似た働きをするもんで、美容にいい!とかコレステロールを下げる!などと言われてるんですが、意外と知られてない仮説として、

 

  • イソフラボンで頭が良くなるんじゃない?

 

みたいなのがあります。というのも、エストロゲンの受容体(エストロゲンがくっつく受け皿みたいな感じ)って、脳の海馬と前頭前野にかなり多く配置されてるんですよ。ご存じのとおり、海馬は記憶形成に、前頭前野は推論能力に重要な役割を果たしてるエリアですね。

 

 

また、イソフラボンには抗炎症&抗酸化効果もあるんで、この機能がミトコンドリアの機能を改善してくれるんじゃない?とも考えられてたりします。ミトコンドリアと脳機能の関係については「メンタルが病んじゃう原因はミトコンドリアだ!説」をご参照いただければと思いますが、要するにイソフラボンのおかげで健康になり、そのせいで低下していた脳機能がもどるのでは?って考え方です。

 

 

というわけで、イソフラボンの脳力アップ作用には見どころがありそうなんですが、近ごろそこらへんをガッツリ調べたデータ(R)が出てて参考になりました。

 

 

こいつは過去のイソフラボン研究から、信頼度が高めな16件のRCTを選んだメタ分析でして、まずざっとデータの内訳を並べておくとこんな感じ。

 

  • 参加者の90%は閉経後の女性が占めていて、残りは男性(8%)と閉経前女性(2%)だった(平均60歳)
  • それぞれの実験の参加者は27〜31人、実験期間は6〜130週
  • イソフラボンの用量は1日60〜160mg

 

その上で、イソフラボンを飲んだら認知機能が上がる?情報処理能力が上がる?注意力やワーキングメモリは向上する?といったあたりをチェックしてくれております。サンプルがかなり中高年の女性に偏ってますけど、これは「イソフラボン研究あるある」なので仕方ないんですよねぇ。

 

 

では、この分析でわかったことを以下に見ていきましょうー。

 

  • イソフラボンで、すごーくちょっとだけ認知が改善するかもしれない
  • 95%CIは、全体的な認知が0.07-0.32で、記憶については0.03-0.26
  • あと、長期にわたってイソフラボンを使っていると、改善の効果は見られなくなる
  • 若年者の方が効果は大きいので、高齢者の認知機能低下のリスクを低下させる可能性は低そう

 

ってことで、統計的には有意な数値が出てるものの、まぁ頭を良くするためにわざわざイソフラボンを飲む価値は低そうっすね。さらに言えばサンプルの偏りも激しいし、全体的にはデータの質も低い(ランダム化のプロセスがちゃんと書いてなかったりする)んで、いまんとこは手を出さないほうが無難でしょうね。

 

 

あと、日本人なら味噌汁や納豆でそれなりにイソフラボンをとってる人も多いし、わざわざサプリを使うまでもなさげ。目立った副作用の報告もないので、「それでもサプリを使ってみたい!」という方がいればあえて止めませんけども。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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