睡眠を1日4.5時間まで減らして1年で博士号を取った男の話
QUARTZに載ってた「多相性睡眠」に挑んだ男性の手記(R)がおもしろかったのでメモ。著者のアクシャット・ラースさんは、オックスフォードで化学の博士号を取った後でブルームバーグの記者になった人らしい。
多相性睡眠ってのは、一晩のあいだに6〜9時間まとめて眠るんじゃなくて、1日24時間のあいだに短い睡眠を分割して取り、トータルで1日2〜4時間の睡眠量を目指す睡眠法であります。ご存じのように、一般的な睡眠には大きく3つのステージがありまして、
- 第1段階:シータ波で構成された軽い眠り
- 第2段階:デルタ波を特徴とする深い眠りの
- 最後の段階:夢が発生するREM睡眠
みたいになってます。普通の睡眠ではこの3つの段階が90〜200分の周期で繰り返されるんですが、1日の睡眠を分割すると、より効率よく各ステージに入り込むことができ、そのおかげでトータルの睡眠時間が短くなるのでは?と考えられてるんですよ。
ラースさんが多相性睡眠にチャレンジしたのは2009年のこと。具体的にどんな手法を使ったのかと言いますと、
- 日中は、1回20分の睡眠を6時間ごと3回とる
- 夜は3.5時間だけ眠る
みたいな感じだったそうな。多相性睡眠の世界で「エブリマン」と呼ばれるテクニックですね。
でもって、最初の3週間こそ問題があったものの、以降は新しいスケジュールに慣れはじめ、以下の変化が起きたらしい。
- 1年にわたって多相性睡眠を続けても目立った問題が起きず、そのまま博士号を取得できた
- 日中の20分の昼寝に慣れた後は、それぞれすっきりとした頭で目覚めることができた。そのおかげで、1日に4回もクリアな頭で行動できた
- 昼寝のうち少なくとも1〜2回は夢を見たため、短い昼寝でもレム睡眠に入れたのだと思われる。また、その夢は明晰夢であるケースが多かった
- いったん慣れたあとは、以前と同じ人付き合いを続けるのだけが大変だった
んー、これが可能なら確かにすばらしいっすね。よく寝た後の感覚を1日4回も味わえるってのはうらやましい話です。
もっとも、その後でラースさんは多相性睡眠への情熱を失い、もとの睡眠パターンに復帰。いまは「大きくて明確なプロジェクトが出てきたら、また多相性睡眠をやるかもなぁ……」ぐらいのモチベーションらしい。
というわけで、非常に気になる体験談なわけですが、
- 「多相性睡眠に効果があった!」と主張しているデータが、クラウディオ・スタンピ博士が1992年に発表した「Why We Nap」ぐらいしか見当たらない
- 多相性睡眠については、「最悪の気分になった!」って体験談(R)も多い
ってあたりがネックになってて、個人的には実験に二の足をふんでおります。また、ラースさんは、「人間は睡眠中に脳の老廃物を除去している」って最近の研究(R)を引き合いに、「多相性睡眠は脳の老廃物除去システムに影響を与えるかも?」と言ってまして、確かにそこらへんも気になるところであります。
ちなみに、その他のデータを見てみると、「睡眠不足のトラック運転手は自然と多相性睡眠になる」みたいな報告(R)も出てるんで、もしかしたら極端な睡眠不足を補うテクニックとしてはありなのかもですが、ずっと続けるべきなのかと言われれば謎ですね。誰か試してみてレポートして欲しいところです。私としては、さすがに3週間も睡眠不足に悩むのはつらいので、よほどのヒマができたら試してみるかもしれませんが……。