シフトワーカーが病気を回避するにはどうすればいいの?のメタ分析
シフトワークは体に良くない!ってデータは多くて(R)、
- 乳がんと前立腺がんリスクの上昇
- 心臓病のリスク要因の増加
- 事故を起こすリスクの増加
- 病気で退職するリスクの増加
といった傾向が報告されてたりします。その多くは睡眠不足とか体内時計の乱れによるところが大きくて、根本的な対策は難しいなーってのが正直なところなんですよね。私もよく「交代勤務の健康管理はどうすればいいですか?」みたいな質問を受けるんですが、なんとなーくお茶をにごした返事をしておりました。
が、それではいかん!ということで、新たに「シフトワーカーが病気を避ける方法はないのか?」ってのを調べたメタ分析が出てたんで(R)、ちょっと見てみましょう。
この研究は,シフトワーカーの病気リスクを減らすための「薬を使わない方法」について調べたもので、65件の観察研究と臨床試験を対象にしてます。研究のうちわけを紹介すると、
- スケジュール変更を使った研究 が30件(定期的に勤務時間を短くしたり、勤務のタイミングを変えてみる)
- 行動的介入を使った研究 が17件
(睡眠の改善をしたり運動の量を増やす)
- 光のコントロールを使った研究 が14件(明るい光を浴びたり、寝る前にオレンジのメガネを使ったり)
- 補完療法を使った研究 が4件(マッサージとか鍼治療とか)
みたいになってます。全体的にはリラクゼーションや体内時計の調整をして、睡眠の質を改善するタイプのやり方が多めですね。
そのうえで、参加者の健康レベルと睡眠の質などを分析したら、結果はこうなりました。
- スケジュール変更は、血圧や血中脂質への影響はわからないが、睡眠の改善にはおおむね良い結果が得られた(血圧をわずかに改善する可能性はある)
- 認知行動療法や運動量の増加といったテクニックは、BMI、主観的な睡眠時間の改善、HDLコレステロールの改善に有効だった
- 光のコントロールは、各研究で少なくとも1つの睡眠パラメータを改善した
- 鍼治療や仕事の休憩といった補完的なテクニックは、睡眠の質と血圧を改善した
ということで、いずれも劇的な改善は望めないものの、どんな手法でもやらないよりはマシってところですね。特に光のコントロールと行動的介入はそれなりの違いが出てるんで、お試しいただくといいでしょう。
個人的には「やはりシフトワーク対策に決定打はないんだなぁ……」って気分になっちゃいましたが、とにかくできることをすべて試すしかないっすね。ちなみに、上記のメタ分析とはまた別に、シフトワーク対策について調べたレビュー(R)も出てましたんで、合わせて見ておきましょう。
こちらのレビューでは、以下の対策を推奨しておられます。
- 睡眠パターンや問題点を日記に記録すると、睡眠の質を高めるための最適な方法や条件を見つけるのに役立つのでおすすめ(睡眠日記のつけかたは「不老長寿メソッド」などを参照ください)
- 定期的にシフトを組んでいる場合は、帰宅後すぐに寝る、次のシフトの直前に寝ておく、最初の夜勤の前に短時間の睡眠をとるなど、時間をずらして寝るようにする
- 空腹のまま就寝せず、寝る前に軽い食事やスナックを摂る。正脂肪分の多い食事、辛い食事、重い食事はNG
- 軽めの食事や間食を定期的に摂ることで、重い食事を一度に摂るよりも、注意力の低下や眠気を引き起こす可能性が低くなる
- パスタ、米、パン、サラダ、果物、野菜、乳製品など、消化の良い食品を選ぶ
- チョコレートなどの糖分の多い食べ物は、短期的にエネルギーを高めることができるが、その後エネルギーレベルが低下するので避ける
- 果物や野菜は、糖分が比較的ゆっくりとエネルギーに変換され、ビタミン、ミネラル、食物繊維も含まれているので、軽食として良い
- アルコールは入眠を促進するが、早期の覚醒、睡眠の乱れ、睡眠の質の低下につながるのでNG
- 友人や家族の日常生活と異なるシフトで働くと、孤立感でメンタルがやられるため、友人や家族との連絡を絶やさないように努力する
ということで、やっぱり定番の介入をコツコツと積み重ねるしかないってのが、当座の結論ですね。また、過去に当ブログで紹介した話では「夜勤のダメージをやわらげるのは難しいが、この食事法ならある程度はなんとかなるかも!という実験の話」なんてのもありますんで合わせてどうぞ。