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目の前の楽しみをうまく味わえない!問題に悩む人に役立つ「HEAL」のフレームワーク

 

せっかく楽しみにしてたイベントなのに、他のことが頭に浮かんで楽しめない!みたいなことは誰にでもありましょう。これは私自身もよくあることで、楽しみだった映画を見はじめたのに、とどこおってる原稿のことで脳がいっぱいになっちゃって、内容が頭に入ってこなくなったりとか。

 

 

いったんこのモードに入ると、どんなに楽しいことでも深く入り込めずに、喜びが減少しちゃうのは間違いないところ。そのままだと人生の楽しみを味わえないままになりかねないわけです。

 

 

というわけで、このような「楽しみをうまく味わえない問題」の対策に取り組んだナイス論文(R)が出てたので、ポイントを見ておきましょう。

 

これはカリフォルニア大学バークレー校の研究で、主筆のリック・ハンソン先生は「幸せになれる脳をつくる 「ポジティブ」を取り込む4ステップの習慣」などで有名な博士です。ポジティブサイコロジーの分野でいろんな業績をものしてる先生っすね。

 

 

で、この試験は「幸せになれる脳をつくる」でハンソンさんが提唱した「HEAL」ってフレームワークの実効性を確かめたものです。これは、ポジティブな経験を最大まで味わうために開発されたトレーニング法で、このフレームワークに従って訓練することで、誰でも人生を楽しめるようになり、最終的には脳の構造まで変えられるというんですな。私のように不安がちな人には非常に参考になるフレームワークだと言えましょう。

 

 

 

実験は46人の成人(平均年齢55歳、84%が女性)を対象にしたもので、2ヶ月間に渡ってHEALのトレーニングを行うように指示。そのうえでコースの効果を事前と事後で評価してもらったんだそうな(対照群は作っております)。

 

 

そこでどんな違いが見られたのかと言いますと、

 

  • 「体験を味わうスキル」「セルフコンパッション」「感情コントロール」の3つの能力があがり、「喜び」と「満足感」の尺度に大きな改善が見られた

 

  • 標準的なうつ病の指標が低くなり、およそ30%の改善が見られた(健康的な成人を対象にしてるので、この改善はなかなかすばらしい)

 

みたいになります。全体的に楽しみをうまく味わえる能力が高まり、さらにメンタルも大きく改善したわけっすね。そう考えると、私のように楽しみから気がそれがちな人間は、思わぬとこでメンタルを残ってるんでしょうなぁ……。

 

 

では、ハンソン先生が考案したHEALモデルがどんなもんかを、ざっくり説明しときましょう。

 

 

ステップ1:楽しい体験をする(Have the enjoyable experience)

まずは何らかの楽しい体験をします。楽しみにしてた漫画や映画を見るとか、あるいは仲の良い友人と遊んでいるところを思いが射たりとか、その体験をイメージするだけでも構いません。

 

 

ステップ2:経験を豊かにする(Enrich the experience)

続いて、以下の小さなコツを導入して、ステップ1の楽しい体験をさらにじっくり味わいましょう。

 

  • ポジティブな体験だけに10~20秒ほどとどまり続け、その体験が意識のメインになるようにできるだけ注意する(映画だったら映画だけに意識を向ける)
  • その体験から得られる感情にひたすら注意を向ける(楽しい映画なら楽しさの感覚を味わう)
  • その経験の複数の側面に注目する。その経験の意味、感情、感じ方、どんな行動をしているか、など
  • その体験について他に抱いている感情はないかを掘り下げるみる。それによって、体験への関わりが深くなる

 

 

ステップ3:経験を吸収する(Absorb the experience)

続いて、以下の小さなコツを導入して、ステップ2の体験を内面に吸収します。

 

  • その体験が自分の一部のように感じられるように意識する(客観的な視点ではなく、一人称の視点で体験を味わう)。よくわからないときは、その体験が脳の神経ネットワークに刻み込まれるようなイメージを思い浮かべるだけでもOK
  • その体験が自分の一部になったことで、体の感覚や感情がどう変わったかに目を向ける
  • その体験が自分にもたらす報酬の価値に意識を向ける(映画で笑うことで自律神経が整うなーとか)

 

 

ステップ4: ポジティブとネガティブをリンクさせる(Link positive and negative)

最後に、その体験のなかで自分が感じているネガティブなものを意識しながらも、あえてポジティブな感情や体験に意識を向けます。私の例でいえば、「まだ原稿が残ってるなー」って不安が続いていることに気づきつつ、同時に映画の楽しさも味わう感じですね。

 

このステップを意識的に行うことで、最終的にポジティブな体験のほうが強調され、やがてネガティブなものが消えやすくなる。

 

 

ということで、なんか抽象的な印象もありますが、すごーく雑にまとめてしまえば、

 

  • 楽しいことに意識的に注意を向け、意識的に味わい、意識的に自分の内面に取り込む!

 

っていう、体験を楽しむのが上手い人なら自然にできていることを、あらためて一定の手順にまとめただけなんで、その点さえ押さえておけば大きく外すこともないんじゃないでしょうか。

 

 

実際にやってみると、最初は「なんのこっちゃ?」と思うでしょうが、なんどもやるうちに「こういうことかー」と思う瞬間が出てくるはずであります。とにかく脳が慣れるまで練習するのが大事。

 

 

私が使う場合は、HEALのフレームワークをチェックリストみたいに使おうと思ってまして、たとえば、

 

  • いま「経験を豊かにする」のとこで意識が脱線してるから、もどさないと……
  • いまステップ3で意識が止まっちゃってるな……

 

って感じでセルフモニタリングの材料にしようかと。みなさまも各自カスタマイズしてお使いください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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