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記憶の専門家「勉強しても覚えられない?それならFOURのガイドラインを使いなさい!」


私たちはなぜ忘れてしまうのか、そしてどうすればもっと記憶できるのか?」ってタイトルの本(R)を読みました。著者のアンドリュー・E・バドソン博士は存じ上げなかったんですが、ボストンカレッジ神経科学科の学科長さんだそうです。

 

 

で、本書はタイトルどおり「なんで大事なことを忘れちゃうのかねぇ……。もっと覚えておく方法はないのかねぇ……」って問題をまとめたもので、神経科学からの視点が提示されてておもしろかったです。

 

 

そこで、本書から個人的に参考になったポイントをまとめると、以下のようになります。

 

  • 記憶が脳に刻み込まれるには、3つの段階を経る必要がある。

    まず必要なのは「エンコード」で、人生の体験から得た内容を、脳が記憶できるような形式に変換するプロセスを意味する。次に、その情報を脳を蓄積する「保存」プロセス、その情報をより長い時間アクセスできるようにする「取り出し」プロセスが続く。

    記憶を呼び起こすという行為は、これら3段階のプロセスを再び繰り返すことになるため、神経科学者の一部は、記憶のことを「サイクル」と呼んでいる。

 

 

  • もの忘れや記憶違いなどは、この「サイクル」の、どの段階でも生じる可能性がある。

    たとえば、新たな仕事相手の名前を覚える際に、もし正しい名前を認識して一時的にアクセスすることができても、それを適切に保存することができなかったら、次にその人に会ったときにはその名前を取り出せないか、間違った名前で呼び始めてしまうことになる。

    同じように、必要なときに名前を思い出せず、あとでその名前を思い出すのも、「サイクル」のどこかで問題が起きたのだと考えられる。

 

 

  • ただし、もの忘れは、必ずしも悪いことばかりではない。あらゆる体験を覚えることができたら、脳内で情報の取捨選択ができず、私たちはいつまでも決断できなくなってしまう。

    過去の記憶は、基本的に未来を想像して計画するために備わった機能であり、平凡な体験はすべて忘れ、良かった体験だけを覚えておけば、ものごとの優先順位をつけやすくなる。そのため、もの忘れも進化的に重要な機能だと言える。

 

 

  • 大事なことを忘れないようにするためには、バドソン博士が考案した「FOUR」のガイドラインに従うと良い。これは、記憶に必要なステップの頭文字を取ったもので、だいたい以下のような意味になる。


    F(Focus):マルチタスクにならずに、ひたすら覚えたいことに意識を集中させる。


    O(Organize):情報を整理する。たとえば、いま自分が試験の勉強をしているなら、まずは覚えたいことをノートを論理的に整理し、それまでは暗記しようとしないほうがよい。「買い物リスト」を覚えたいときも同様で、「カテゴリー別にわける」といったように、自分にとって意味のある方法で整理するところからはじめる。

    人間の脳は、整理された内容の「かたまり」を保持するようにできており、整理された情報であればあるほど、より多くの情報を「かたまえり」に収めることができ、そのおかげでより多くの情報を保持できる。

    ちなみに、専門家が自分の専門分野については多くのことを記憶できるのは、彼らが情報を整理する方法を学んでおり、そのせいで脳に放り込める「かたまり」の量が多いからである。


    U(Understand):情報を理解する。たとえば、相手の名前を正しく聞いたかどうか確認する、上司からのミーティングの依頼が自分にとって納得のいくものであることを確認するなど、情報の内容をしっかりと確認し、ちゃんと「これは理解できた」と言えてから、はじめて暗記に取り組むとよい。


    R(Relate):情報を自分がすでに知っているものと関連づける。読んだ本に書かれていたテクニックは、すぐに自分の仕事に使えないか? 新しく知り合った人の名前が、有名な芸能人と一部が重なっていないか? などと、自分がすでに持っている情報との関連を考えておく。



    これら4つの要素を確実に守ることで、人間の脳あ、短期的な情報のエンコードと、長期的なアクセスのための情報の保存の両方ができるようになる。

 

 

  • 多くの人が、保存した情報を脳から取り出せなくなってしまうときは、その背景に不安や焦りの感情があることが多い。そのため、脳内の情報を取り出したいときは、とにかくリラックスを最優先したほうがよい。

    そのためには深呼吸をするのも効果的だが、場合によっては目標をリフレーミングするのもよい。たとえば、同僚の名前が思い出せなくて困ったときは、焦らずに「いまは目の前の同僚と面白い会話をするほうに集中しよう」といったように、目標を再設定してみるやり方である。

 

 

  • また、脳に保存された情報を取り出せなくなったときは、検索する情報に関連する情報を考えてみるのも有効である。

    たとえば同僚の名前を忘れたときは、その同僚と最後に会ったときのことを考えてみる、または勉強の内容を思い出したいときは、試験のためにその内容を勉強していたときのことを、できるだけくわしく思い出してみる。

    特定の記憶を呼び戻すには、その情報を、脳がエンコードしたときに戻すのがよい。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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