人生の質改善に欠かせない能力「心理的柔軟性」をチェックする10問
ACTのような最近の心理療法では、「心理的柔軟性」って考え方を重要視してるわけです。これがどのような定義なのかと言いますと、
- 意識的な人間として、今この瞬間に完全につながり、状況に応じて、選択した価値観のために行動を変えたり、続けたりすること。
みたいになります。わけが分かりませんね。これをもう少し簡単な言葉で言いますと、
- 一時の思考や感情にとらわれずに、長期的な価値観や目標に基づいて行動できる能力
みたいになります。セルフコントロールにも近い考え方ですけど、こちらでは「環境の変化に適応できる能力」や「価値観に沿った行動をとる能力」などにウェイトが置かれてますね。
なぜ心理的柔軟性が重要なのかと言いますと、私たちの「思考」や「感情」ってのは、長期的な価値を示す指標としては信頼できないからです。「思考」や「感情」は、目の前の変化に応じて無意識のうちに発生するものなので、「腹が減った→食べる」「あいつは嫌なヤツだ!→怒り狂う」みたいに脊髄反射で行動しがちなんですよ。
まあ、それでうまく行くこともあるんだけど、たいていの場合は、単純な思考と感情をベースに行動しちゃうと、長期的に見て人生のクオリティが落ちたり、なんだかずっと元気がなくなったりといった状態になりがち。逆に心理的柔軟性が高いと、
- つらい感情に強くなる:心理的柔軟性が高い人は、不安な考えや苦痛の感情をジャッジせずに受け入れられるので、不安を引き起こすような状況でも、より冷静な対応ができるようになる。
- 挫折に強くなる:心理的柔軟性が高い人は、ストレスの管理がうまいので、失業や病気などのキツいトラブルにも前向きな姿勢を保ち、さっと次の職を探したり、闘病に挑めるようになる。
- 充実感が増える:心理的柔軟性を身につけた人は、人生の意味を作りあげ、目的意識を見出すのも上手。それによって、どんな感情にもオープンな方法で対応し、自分の行動を自分の価値観と一致させるのもうまい。
みたいな状態になることが分かってたりします。これはぜひ身につけたい能力ですなぁ。
では、具体的に心理的柔軟性をどう計測するのかってことで、一番よく使われているのが「AAQ2(Acceptance and Action Questionnaire:受容と行動に関する質問票)」ってやつです(R)。昔から心理的柔軟性のチェックに使われてきたテストで、こいつのスコアが低い人は、以下の状態になりやすいことがわかっているんですよ。
- 不安がめっちゃ高くなる
- 落ち込みがやたら激しくなる
- いろんな病気にかかりやすくなる
- 仕事をやり遂げる能力が低くなる
- 新しいことを学習する能力が低くなる
- 薬物を乱用しやすくなる
- 生活の質が低くなる
- うつ病にしやすくなる
- 感情を失ったような状態になりやすい
つまり、人間に起きるほぼすべてのメンタルの問題が起きるわけですね。
AAQ2は10の項目でできてまして、以下の文章に当てはまるかどうかを考えて、7点満点でお答えください。「これは完全に当てはまる!自分のことだ!」と思うなら7点で、「まったく当てはまらない!」と思うなら1点です。
1 .嫌なことを思い出しても問題はない。
2 .自分の苦しい経験や記憶は、私が大切にしたい生活を送るのを困難にする。
3 .自分の感情に怖れを感じる。
4 .自分の悩みや感情をコントロールできないのではないかと心配になる。
5 .自分の苦しい経験のせいで、充実した生活を送るのが難しい。
6 .私は自分の人生をコントロールできている。
7 .感情のせいで、私の人生における問題が起きている。
8 .たいていの人は、私よりもうまく人生をやっているように思える。
9 .心配が、私の成功を妨げになっている。
10 .私が望む人生をおくる上で、自分の思考や感情が障害になることはない。
で、すべての採点が終わったら、項目2・3・4・5・7・8・9につけた点数を反転させてください(7点→1点、6点→2点、5点→3点、3点→5点、2点→6点、1点→7点)。でもって、すべての合計を10で割って平均点を出してください。「この点数より高ければ心理的柔軟性がある!」みたいに言える基準はないんだけど、だいたい4点を超えていたら、それなりに心理的柔軟性が高いんじゃないかと判断できるんじゃないでしょうか。