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サウナの最適な使い方を調べてやったぞ!というレビュー論文の話

 


サウナブームもすっかり定着した感がありますが、残念ながらまだそこまで研究例が少ないのが悲しいところ。そもそもサウナが世界に広まったのが比較的最近だし、心臓病やがんといった他のテーマよりも優先順位が低いんで、どうしても研究が進みづらいんですよね。

 

といった状況で、近ごろ、おもしろ健康系YouTube(R)を運営しているロンダ・パトリック先生が「サウナってどれぐらい体に良いのかを調べたぞ!」ってレビュー(R)を発表してくれていて役に立ちました。

 

この調査は、これまで行われたサウナ研究の知見をピックアップしたもので、具体的に「他の健康法と比べてどこまで効果がある?」みたいなことは言えないんですけど、現状の研究レベルを知るためには非常に有用でしょう。

 

ってことで、この総説の知見に、パトリック先生の対談動画(R)の知見も組みあわせてみると、ポイントは以下のようになります。

 

  • 定期的にサウナを使うことで、早期死亡のリスクが減り、心臓血管と脳の健康を増進し、炎症を抑え、筋肉の回復を促進し、加齢とともに自然に起こるサルコペニア(筋肉の分解)を抑えることができる……かもしれない。

 

 

  • サウナの健康メリットを得るためには、サウナの使用時間と頻度が重要である。「サウナは運動の前と後のどちらに入るべきか?」という問題があるが、これは目的次第で、だいたい以下のように考えられる。


    ワークアウトの前にサウナを使うと、血流と体温を上昇させてウォームアップすることができる。 しかし、当たり前だが、通常のウォームアップにはかなわないので、サウナを使うよりは、運動前に筋肉をフルに使って活性化させるほうが重要。

    また、運動前にサウナに長時間入りすぎると、パフォーマンスが落ちる可能性がある。そのため、激しいワークアウトの前にエネルギーを使いすぎないように、ワークアウト前のサウナは5分までにしておいたほうがよい……かも。


    一方で、サウナに5分入るだけでは、その効果を十分に引き出せず、最も大きな効果が得られる時間は20分から30分の間かもしれない。そのため、サウナは運動後にしたほうがいい可能性がある。

 

 

  • サウナの最適な温度、湿度、持続時などはハッキリしないが、心臓と脳の健康について調べた研究データをベースにすれば、だいたい以下のようなガイドラインが使えるかもしれない。

    ・温度:80度から90度の間。

    ・持続時間: 20~30分の間。

    ・湿度: 10~20パーセントの間。

    サウナの時間は5分から30分が一般的だが、サウナを安全に利用できる時間は、運動の前か後か、運動の強さ、サウナへの慣れ具合によって異なる。普通にトレーニングをした後は20分から30分くらいが最適だろうが、ワークアウトをしないときは、もっと長くサウナにいても問題ない。

    いずれにせよ、最初は我慢できる程度の短いセッションから始め、時間が経つにつれて徐々に時間を長くしていくのが良い。また、サウナを出るタイミングは、本当に不快に感じ始めたらで構わない。

     

 

  • サウナを使うことで、持久力が上がることを示すデータがいくつかある。これは、サウナによって有酸素運動と似たような身体の変化が起き、心拍数と体温が上がった後で血圧が下がり、これが持久力アップにつながるのかもしれない。

 

 

  • サウナを繰り返し使うと、ヒートショックプロテインを介して、身体のストレス反応が最適化される。ヒートショックプロテインは、細胞内のタンパク質を保護し、加齢に伴って体内に動脈や脳にプラークが作られるのを防ぐのに役立つ可能性もある。

    サウナはヒートショックプロテインをベースライン以上に活性化し、これが一度活性化すると、同じ状態が48時間は続く。 さらに、ヒートショックプロテインは筋肉を分解から守ってくれるため、サルコペニアの人や、体が不自由で筋肉量を維持するために必要なトレーニングができない人にも良いだろう。

 

 

  • サウナの頻度は、高ければ高いほど効果を得られやすいと思われる。ある研究によると、週に2~3回サウナを利用する人は、週に1回しか利用しない人に比べて心臓突然死で死亡する可能性が22%低く、週に4~7回利用する人は63%低かった。

    さらに別の研究では、週に2~3回サウナに入る人は、週に1回しか利用しない人に比べて認知症やアルツハイマー病になる可能性が20%低く、4~7回利用する人は60~66%低かった。

 

 

ってことで、全体的にまだサウナ研究が進んでいないのは間違いないんですが、適切な温度、湿度、持続時間、そして頻度を守ることで、いろんなメリットが期待できそうであります。なんにしても、やりすぎないレベルの使用を心がけていただければ、アンチエイジングの良い武器になってくれるんじゃないかとー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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