キャリアチェンジを成功させる質問術とストレス管理法『ジョブ・セラピー』から学ぶ面接テクニック
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『ジョブ・セラピー(Job Therapy)』って本を読みました。
著者のテッサ・ウエスト博士はニューヨーク大学の社会心理学教授で、対人コミュニケーションの専門家。私もいくつかの論文で名前をお見かけしたことがありまして、かねてより「えらいもんですなぁ……」みたいな印象を持っていた先生ですね。
で、本書は、主に転職したい人に向けて、「キャリアの変更をうまく進めるためにはどうすればいいか?」ってポイントをまとめてくれております。ウエスト先生自身が行った研究も大量に紹介されていて、学ぶところが多い
では、いつもどおり本書で勉強になったところをまとめてみましょうー。
- キャリアを変えようとするとき、私たちの多くはまず、都会に引っ越したり、ハイブリッドな勤務体系に変えたり、給料が下がる可能性に悩んだりなど、自分が直面するであろう大きな変化に取り組む。このような大局的な問題に焦点を当てながら、最善の決断をしようと最善を尽くす。
もちろん、こうした決断は重要であり、特に転職が間近に迫っているときはなおさらではある。しかし、この視点は、「過去のキャリアとの決別」にまつわる感情的な経験をスルーしている。この視点を見逃すことで、私たちはしばしば間違った方法で過去の仕事を去ることになる。
- ウエスト博士の研究では、私たちが自分の仕事に抱く感情は、恋愛によく似ていることがわかっている。
例えば、多くの人は、今のパートナーや仕事の関係が終わりに近づくにつれ、相手への気持ちや仕事へのコミットメントや少しずつ冷めていき、やがて完全に気持ちがなくなるだろうと予想する。しかし、実際には、私たちのほとんどは徐々にパートナーや仕事への愛を失うのではなく、むしろ終わりが近づくにつれてアンビバレンスな感情を体験する。
具体的には、別れを考えている相手への好意が深まり、同時に心の底から嫌な気持ちになる。仕事では、ある瞬間は上司が好きになったのに、次の瞬間は嫌いになったりする。このようなアンビバレントな感情は、恋愛や仕事との関係を解消するための重要なプロセスのひとつだと言える。
このような相反する感情を受け入れ、それが別れのプロセスの重要な一部であることを理解しなければ、別れた後もダラダラとネガティブな想いを引きずることになってしまう。
- 職を変える際には、誰もが面接をくぐり抜ける必要がある。この時、たいていの人は、面接官の顔色をうかがうあまり、踏み込んだ質問をしようとはしない。その結果、自分の長所だけを笑顔でアピールすることを選んでしまう。
しかし、ウエスト博士の見解では、このような態度はNG。実際には、面接官には厳しい質問をしたほうがよい。たとえば、その組織の欠点は何か、過去にどこで失敗した可能性があるのかといったことである。
このような質問は、相手を怒らせてしまわないかが心配になるものだが、現実には「この人は会社についてよく調べようとしている」との印象を与えることが多い。
- そのため、もしあなたが転職を考えている場合は、さらに以下のような質問をすることを考慮したほうがよい。
・「その会社は、どのようにして必要なスキルを学べるようにしているのか?」
・(昇進を目指している場合)「今の仕事で身につけたスキルや人脈を、次の役職でも活かせるものか?」
・(昇進の話があまりにもうますぎると感じたら)「その仕事を引き受ける人がいないために、会社が準備が十分でないのに、私にその役割を任せようとしている可能性はありませんか?」
このような厳しい質問は、実際には相手に不快感を与えるわけではないし、尊大なように思われることも少ない。
これと同じように、自分自身の欠点を認めることまで含めて、あくまで現実的な会話を続けることが、雇用者に好まれる戦略だと言える。
逆に、もしこのような質問を投げたあとで、面接官によって回答がまちまちだったり、面接官によって矛盾する答えが返ってきたり、イライラした様子を示した場合、たいていその会社は赤信号である可能性が高い。
- 実際に転職先で働きはじめた場合、最も重要なのは「小さなストレッサーのモニタリング」である。ウエスト博士は、何十年にもわたって、ストレスが人の働き方に与える影響について研究してきた。その結果、
1.日常的に発生する低レベルのストレッサー(同僚との小さな意見の不一致、突然の依頼や業務の中断など)を見過ごしていると、やがてチリツモで仕事人生を不幸にする大きな原因になる。
2.しかし、自分自身の小さなストレッサーが何なのか、あまりよくわかっていない人が多い。
という事実がわかってきた。
- ウエスト博士の研究では、被験者たちに「その日に予想される最大のストレッサーは何だと思うか?」と尋ね、朝にその予想を書きだしてもらった。その上で、仕事のあとに自分の予想が当たったかどうかを確かめてもらったところ、正解率は約50%だった。
この研究からわかるのは、以下のようなことである。
・1日の中で発生するだろうストレッサーを予期していた場合、私たちは、そのストレッサーにストレスを感じないで済む傾向がある。事実、多くの被験者は、予期したストレッサーに対策を講じていたため、実際に予想したほどはストレスを感じずに済んでいた。たとえば、大きなスピーチを予想した人は、何度もスピーチの練習をした。
・しかし、ストレッサーに悩まされた残りの50%の人は、予期せぬさまざまなストレス要因に悩んだことを報告した。最も一般的なものは、長すぎる通勤時間、いきなり発生した会議、急な仕事の締め切りなどであった。
ところが、不思議なことに、ウエスト博士が「このような予期せぬストレッサーに過去に遭遇したことがあるか?」と尋ねたところ、「定期的にある」と答えたのは34%ぐらいだった。
つまり、たいていの人は、以前に遭遇した小さなストレッサーを、簡単に忘れてしまう傾向がある。実際には、私たちは定期的に小さなストレッサーに悩まされ続けているのだが、1日を振り返ってみない限り、そのことをストレスとして認識せずに忘れてしまう。
- そのため、仕事の幸福度を高めるには、自分の日々なににストレスを感じているのかを知っておく必要がある。この知識を得るには、自分自身のデータを収集し、日々ストレステストを実施するのがベストである。
なかでも、新たなキャリアを築くときには、新たな会社でネットワークを作るときは、自分のストレスの誘因に遭遇する頻度を聞いてみるとよい。ストレスのきっかけは人それぞれなので、自分がどのようなストレッサーに反応しやすく、そのストレッサーにどれくらいの頻度で遭遇するかを知っておくとよい。