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日常の小さな決断は直感に従ったほうが良い?──日常の意思決定が私たちに与える効果とは

 


誰でも日々の生活で、いろんな決断をしているはず。朝食を何にするか? 何時に出発するか? 夜の予定をどうするか? などなど、小さなことから重要なことまで、毎日のように様々な選択を積み重ねて生きているわけです。

 

当然、ここで「何を選ぶか?」によって人生の満足度は変わるわけですが、新しい研究(R)では、「どう選ぶか?」も日々の気分や幸福度に大きく影響するって結論になってておもしろかったです。

 

どういうことかと言いますと、たいていの人は、決断を下す際に「直感」と「分析」のどちらかのアプローチを選ぶことが多いでしょう。簡単に言いますと、

 

  • 直感的な決断:「なんとなくこれがいい」という感覚に従ったもので、短時間で決められるのが特徴。
  • 分析的な決断:リスクやメリットを慎重に評価し、理性的に選択するアプローチ。

 

みたいな感じです。このような「直感で選ぶか?」「分析して選ぶか?」のどちらを選ぶかによって、日々の満足度がかなり変わるんじゃないかって話であります。

 

ってことで、この研究はポツダム健康医科大学のチームによるもので、256名の男女を集め、普段の生活での意思決定が気分に与える影響を調査したんですよ。研究チームは、参加者に「日々の選択で『直感的に決断する』か『分析的に決断する』のどちらかの方法を選んでみてねー」と指示。その際の気分を、14日間にわたってアプリで報告してもらったんだそうな。

 

ここで記録した日々の決断ってのは、食事、レジャー、友人との関係、買い物など、非常に平凡なものばかり。これらに対して直感または分析的な決断を行い、その前後の気分の変化をチェックしたわけですな。

 

その結果、なにがわかったのかと言いますと、

 

  • どちらの方法で決断をしても、気分は改善される。

 

  • ただし、直感に基づく選択のほうがより、大きなポジティブ効果をもたらす。

 

って感じです。「自分で物事を決める」って行為は、それ自体が日々の気分を改善する働きを持つんだけど、その際は直感で選ぶ方が、じっくり考えて選ぶよりもメリットが大きいみたいっすね。

 

直感が気分を上げる理由はいくつかありまして、だいたいこんな感じになります。

 

  1.  決断による「内的葛藤の解消」:決断を下すって行為は、心の中での迷いや葛藤を解消し、不確実な状況に一定の答えを出すことと同義。「どうしようかな?」と迷ったときに、決断そのものがその迷いを解消し、内的な安定感を与えてくれるため、そのおかげで気分が改善するらしい。「今夜の夕食にパスタかカレー、どちらにするか」みたいな小さい悩みでも、人間はそれなりにストレスを感じてるってことなんでしょうな。


  2.  決断の「速さ」と「簡単さ」:過去の研究では、脳内の処理が簡単で速いときほど気分が向上しやすいことがわかっております。つまり、人間の脳は、複雑な処理を避け、スムーズに決断ができる場面で「気分が良い」と感じる傾向があるわけですな。今回の研究でも、直感に基づく選択は「簡単に決断できる」点が、分析的な選択よりもポジティブに評価されていたってことで、直感的な決断のほうが気持ち的な負担が少なく、自然と気分が上がりやすいんでしょう。


  3.  「自分に合っている」と感じやすい:直感で選んだものは、後で振り返ったときに「やっぱり自分にぴったりだな」と感じやすく、満足度が高まる傾向もあるっぽい。分析的な決断をするには多くの情報が必要なのでめ、自分の好みがブレやすい側面があるんだけど、直感に従った場合は、その瞬間の自分の嗜好や価値観に合った選択をしやすく、結果として「良い選択だった」と思える機会が多くなるわけっすね。

 

直感的な決断ってのは、とにかく簡単だし自分の好みにもピッタリだしで、気分の改善に向いているわけですな。

 

さらに、この研究では、また別に興味深い結果も見つかってまして、

 

  • 選択肢の多さも気分に影響する:たとえば、選択肢が1つしかない場合よりも、2つ以上の選択肢があるほうが気分が向上しやすいらしい。選択肢が複数あると「自分の意志で選んでいる」という感覚が強まり、それが気分の向上に結びついているのかもしれませんな。

 

  • 直感に従った決断は実際に行動に移されやすい:直感的な決断は自分の好みに合っているため、「その決断を実行しやすい」という傾向があるらしい。この「実行率の高さ」は、例えば食事の選択や休日のプランなど、気軽な場面で特に顕著に現れるとのこと。

 

といった知見も参考になります。そう考えると、日々の小さな決断については、できるだけいろんな選択肢を持っておいて、そこから直感で選ぶようにしてみると、毎日の気分が改善しやすくなると言えそうっすね。

 

まぁ、「科学的な適職」にも書いたとおり、直感に頼ると思い込みや偏見が入りやすく、長期的に見て「正しい」判断ができなくなる点はご注意ください。転職とか結婚みたいな重要な判断については、直感よりも分析に頼るのが吉であります。

 

一方で、今回の研究では、日常の小さな選択においては、直感に従って得られる気分の向上が重要なメリットになり得ることが示されてますんで、日常の些細な選択を、自己の気分を調整する「自己調整機能」として使うのは十分ありでしょう。小さな日常の場面では、「ちょっと直感に任せてみようかな」という気楽な選択が、意外にも最適な選択ってことになるんでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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